パンプディングとチハのおやつ
その日も由楽のチートで建てられた朝倉王国の建物達は、春だと言うのにまだまだ肌寒い冷たい風が吹くなか、輝く太陽の光でキラキラと七色に輝いていた。
そんな中、昨日の夜から少し体調を崩しているチハの為に由楽と雅楽の2人は3時のおやつ用にアルモノを作ってあげていた。
「チハ 大丈夫かなぁ?一応、チートを使って治療したけど心配だよ。」
「由楽 そんなに心配しなくても大丈夫だよ。さっきチハの部屋を見に行ったらお昼ご飯のお粥もペロリと食べてたし、天花と2人で何の歌か解らないけど熱唱しながら踊ってたよ。
それより、パンプディングそろそろいいんじゃない?」
「あっ!そうだね。…どれどれ、ヤッター♪綺麗なキツネ色の焼き色に焼けてるよ。」
とフライパンで焼いていたパンプディングの焼き色を確認した由楽は、美味しそうなキツネ色の焼き色がついたパンプディングを見てホッとしながら、隣で紅茶の準備を始めた雅楽と3時のおやつで使うカップやお皿やフォーク等を準備する。
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「ヤッター!おやつ♪おやつ♪」
「おやつの時間だっち。今日のおやつは、何だっちか?」
と由楽と雅楽が呼ぶ前にパンプディングが焼ける甘い匂いや紅茶の匂いにつられて、天花とチハの甘い物好きな2人がやって来る。
天花とチハに気付いた由楽は、チハの額に手をあてながら熱がぶり返してないかなどを心配しながら
「チハ 体調大丈夫?熱ぽくない?」
「大丈夫だっち!」
「そう。なら、良いんだけど。少しでも体調がおかしいと思ったら、直ぐに僕か雅楽に言うんだよ。季節の変わり目は、体調を崩しやすいからね。もちろん天花もだよ。いい!2人とも」
「そうだよ。天花もチハも痛くて苦しい思いしたくないでしょう?」
と由楽と雅楽の2人は天花やチハに達に話ながら、2人の前に淹れたての香り豊かな紅茶や切り分けてあげたパンプディングを置いてあげる。
「は~い!」
「解っただっち!」
と元気の良い返事をしながら天花とチハは、さっそく3時のおやつのパンプディングを食べ始める。
「うわー!柔らかくて、中に入ってるレーズンやバターの風味がして美味しいね♪」
「ほんのり暖かくて、美味しいだっち!これは、何て言うお菓子だっちか?」
「このお菓子はね、『パンプディング』と言う焼き菓子なんだよ。」
「パンプディングだっちか?」
「うん。パンプディング。と言っても、かなりシンプルなレシピになるんだけどね。
僕が昔まだ小学生を卒業するまでは、よく熱をだしたり体調を崩したりして、学校にも満足に通えない体もまわりの同級生よりもひとまわり小さい、とにかく体も弱くて食も細い手間のかかる病弱な子供だったんだ。
そんな僕を心配した母親が、僕が食べやすいようにどこの家庭の冷蔵庫にありそうな材料を使って。家にある食パンや母が好きな干しレーズン、牛乳、卵、砂糖を混ぜ合わせた卵液、バターを使って、フライパンでパンプディングを作っては、おやつに食べさせてくれていたんだよ。
僕の時代の山奥の田舎の村には、ケーキ屋さんなんてオシャレなお店は無かったから、甘くて美味しいパンプディングが当時の僕にはゴチソウでね。当時、子供用のお茶碗に軽くつがれたご飯さえ食べきれなかったんだけど、母親が切り分けてくれたパンプディングなら1切れペロリと食べれたんだ。
卵と牛乳と砂糖を混ぜ合わせた卵液を吸って柔らかくなった一口大にちぎってある食パンとアクセントの干しレーズン、バターの風味が合わさり、フライパンで焼かれた
あったたかなパンプディングが当時の僕の弱っているお腹に優しくて、食べていくうちに体をじんわりと温めてくれてね。当時の僕には、直ぐにでも元気になれる魔法のおやつに思えてたんだ。
それに今思うと、あのパンプディングには小さな体の僕の為に栄養ある卵や牛乳
それに ご飯の変わりのお腹にたまる食パンを使ったりしてくれていて、僕の体を心配してくれた母親の愛情がつまったパンプディングだったから、シンプルなレシピだったんだけど、あんなに美味しくて、体調も直ぐに良くなっていたんじゃないかと思うんだ。
だから、今日のおやつは体調を崩したチハの為に僕と雅楽の愛情がこもったパンプディングにしたんだよ。」
由楽が自分の昔話を交えて今日のおやつのパンプディングの話をすると、話を聞いていたチハや天花が嬉しそうにニコニコと微笑みながら
「そうだっただっちね。だから、今日のおやつは いつもより何十倍も美味しく感じるだっちね!」
「良かったね チハ!このパンプディング食べたから、直ぐに元気100倍のチハの復活だね♪」
「うんだっち!由楽も雅楽も天花もありがとうだっち!」
と心配をかけた3人にお礼を言いながら、またモリモリと残りのパンプディングを美味しそうに食べ始めたチハと天花、由楽、雅楽の4人の何気ない1日の3時のおやつタイムは、こうして過ぎていくのであった。