4章【それが愛の形ならば( )】
はぁい、一話はこれで終了です★←
後味悪くても気にしないでねっ。
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おかーさんが、新しいおとーさんを見つけてきたみたいだった。
かみの毛をはでな金色にそめて、耳にいくつもピアスをつけていたけど、顔だちはととのっていて、つり目がちな瞳が日本人ばなれしたグレーの若々しいおじさん。
それで、わたしは何回かこのおうちにおじゃましていた。
おかーさんとおじさんが話をしている間、わたしは2階のへやで男の子と一緒に遊んでいた。
おじさんのむすこで、名前は…なんだっけ?わすれちゃった。すごくきれいでかわいい名前だった。
顔もすっごくきれいで、女の子みたいだった。長いまつ毛とか、うすいくちびるとか、すずやかな目とか。
そういえば、おじさんは、けっこんしてないの?っておかーさんにたずねたら、だんまりだまった。
りこんしたのか、死んだのか?正直どっちでもいいんだけど、わたしがきょうみを示さなかったら、おかーさんががっかりしちゃうからって思って聞いたのに、うらめに出たのかもしれない。
わたしは、男の子と一緒にトランプとか、人生ゲームをして遊ぶ。今日もいつもと一緒。
人生ゲームで人生のきびしさを学習して、わたしが勝って、何か言おうとした時。
「…母の足音がする」
男の子が年不相応な呼び名でおじさんのおよめさんらしき人物の存在をこうていした。
「お母さん?」「…うん」
それって、ヤバいんじゃないの?だって、だとしたらおじさんはりこんしてなくて、つまりふりん!?
ドラマとかで時々みる、さんかくかんけい?
「あの、みおく」「しっ!」
名前が口からついで出た。なのに、その白い指でくちびるをふさがれたせいで、またわすれちゃった。
かわいらしい顔がしんけんなおももちになって、わたしはどきどき。自然と、だまりこくった。
こつこつこつこつ
みだれのない、きそくてきな足音が耳をかすめる。
だんだん、近づいてくる。
がちゃ こつこつことこととすとす
ぶきみなほどみだれない音が、このお家に入ってきた。
「…うぅ」きょうふのあまり、声がもれる。
「…おかーさんとかおじさんは…気付いてるの?」
「……んん」静かに首を横にふって答える。
それって、それって、ガチでヤバくない?
だってだってだって…
「っ!?み、水沙…」
おじさんの声がこまくに届く。
「おい、水沙!水沙!」
足音が遠くなる。家から出た?
何だかよくわからないけど、あんどしてため息をつこうとし「 」
ひめい。にぶく重い大きな音が、なにかをなぐっている。
「…どうなってるの…?」「チッ…武器の出番だ…」「っえ」「静かに」
やがて、音がやんで、足音が2階に上ってくる。
わたしにこのじょうきょうをはあくできる力なんて持ってないけど、身の危険がせまっているのはわかった。
「…きみは…こわくないの?」ふいに浮かんだぎもんをたずねる。「シッ」答えはない。
やがて、音がとびらごしに聞こえてきた。
「――――――!!!!!!!!!!!!」「大丈夫」おおいかぶさってきて、だかれる。
戸がひらく。
母親とは思えない若々しさをたたえた女性が手にしていたのはバット。
静かにふり上げられて……
あれ?これって、何の記憶?
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眠ってる間に、記憶回想が7回ほど繰り返された。
それで、目が覚めたら見知らぬ壁がそっけなく白さをアピールしていた。
ついでに、保健室よりはるかに強い消毒の匂いがする。
最初、発作の延長線だと思ったのを否定するのに数十分を要した。
「で、ここ何処?」
何日も使っていなかった喉が発した声が紡ぎだす言葉は、意味不明というか馬鹿過ぎて、視界に入らない人物を唖然とさせた。
「…何処ですか?」
もしかして目上の人かなーと思いながら敬語に直す。
「…病院です」
うおお、答えた。
「ちなみにあなたは誰ですか」
「看護師です」
重い頭を動かして横を向くと、見覚えのある看護師さんがパイプイスに座って足を組んでいた。
ちなみに、彼女の今の姿勢だと、必然的に短いナース服スカートの奥が見えて…しま、う…。
「あの…東さん、パンツ見え」「死んでくださいです」おみ足が勢いよく上がる上がる、降りる!!
「ぎょあっどぅがっ」「意味わかんない悲鳴だすなです、あと変態は失せろです」「…菫色」「死ね」
とうとう語尾が崩壊した。
「…で、なんで東さんがいるんですか」「うーん、…運命ですかね」げんなり。
「…ほんとに覚えてないの?です」「…」思い出すのがめんどいとか、言えないよね。
「まぁ、私はちょーやさしーかんごしさんなので、教えてあげましょう」「それはそれは」
菫色の下着を穿いたその『かんごしさん』は、1つに結わえられたナチュラルブラウンの髪をいじりながら面倒くさそうに喋りだす。
「貴方はラブラブ美少女うさみみたんにナイフでグサーっとされて、で、うさみみたん本人が救急車で君を運んで一命を取り留め、三日間のびのびぐぅすか寝てたとさ、めでたしめでたしです」
ふむ…。やっぱ僕刺されたのか。(などと最初から思い出していたような感じで繕う)
そういや、僕の意識が三日後にワープする直前、水美以外の声が聞こえた気が…。
「めぇ覚ましたんですね」
病院の無機質な白が伝染したかのごとく同じような色の戸が静かに開かれる。
開いた人物の髪色は、病院と対を為す様に黒々としていて、頬の色は紅白セットになりそうな朱色。
「瀬戸さん…だっけ」「覚えてないふりは馬鹿の始まりです(小声)」「そう…瀬戸 真八子」
両手を覆い隠す量の花が盛られた花束を携え、素敵にエゴイズムな笑顔が冴えわたる瀬戸さん。
「へぇ、瀬戸っていうんだです~…私の好きな小説…コミカライズ、アンソロジー、アニメ化もしてる某能力系新感覚青春群像プロジェクトの語尾に『っす』がつくキャラも同じような呼び名だった筈です」「超余計な主観7000%増量解説有難う」
「…陽炎がどうこうっていう話でしたっけ」「あら貴女とは趣味が合いそうです!」「いやあれアンチ多かった筈ですよ」「あーコメントでも毎回荒れてるわよねーです」「見苦しい争いですよねー」「ホントホントです」「話逸れてない?」「「あ」」
というわけで閑話休題した瀬戸さんが、菫パンツ野郎の隣にあったイスに腰掛けて話を振る。
「あのね、私。水緒さんが水美さんに刺されてるの、見ちゃったんです」
…今更気付いたが、水緒『さん』って、水美の名前と並ぶと女みたいな呼び名だな。
「それで、私は水美さんの頬を叩いたんです。そしたら、不敵な笑みと共に言ったんです。『貴女の秘密をクラスメイトに公開するわよ』って」
欠伸と冷めやか(爽やかの進化系)な視線で退屈を表す菫パン(略)。
「そんな最低な女郎と付き合ったままだと、水緒さんまで馬鹿になりますよ?私と…」
「ダメ」相手の唇を指で塞ぐ。てゆか、「修羅場wktk」みたいな目線使うな(略)。
「なんで!?なんでだめなの!?私のどこが悪いっていうの!?胸?頬?なんで!?なんで」「今欲しい物は何?」強引に話題を切り替えてみる。「あ、僕以外で」
「…お金」「いくら?」「そんなこと聞いて何にな」「いいから」「……五万円」「OK、五万円ね」「何?何なの?」
物で釣り上げる古典的な口止め。
「五万円、明日にでも明後日にでもあげるから。だから、お願いだ。水美のこの『行為』は、誰にも言わないでほしい」
これ以上に異常事態が起こったら、水美は本当に壊れてしまう。だから、契約。
「…!」
目を見開く。掠れた声が、耳に侵入してくる。
「…水美さんの事、好きなんだね」
それだけ言って、瀬戸さんは病室を発った。
「…」「……」「五万円なんて、どっからくるのです」「…元母の夫から毎月貰ってる金」「いわゆる父親ねです」「…違う、父親じゃない」「…ごめん、そうだよね。認めてないんだっけ」
この看護師さんが見覚えある訳。
父親(仮)が不倫相手(水美の母親)を家に連れてきて、母親が帰ってきて大参事。具体的に言えば、ロボット系の母がバットで頭ゴン。水美を庇って僕がやられたんだけど、多分水美は恐怖のあまり忘れてると思う。その後冷水を頭からぶっ掛けられて、母親逃亡。
父親(仮)が救急車を呼んで、僕は2日間入院。その時にお世話になったのがこの菫パンツ野郎こと、東 なぎささんだったりする。
ちなみに、幼少期の例の事件以来僕は、父親の事を否定し非難し、忌み嫌って、父親と認めなくなった。
で、逃亡した母親もいないし、血のつながった弟もいたけど、いつの間にかいなくなってたし。
こんな僕には、家族なんて存在しない。だから、
「水緒っ★」「水美、来たんだ」「何言ってんの、来ない方がおかしいでしょ」「よしよし」
今日も、血のつながらない妹を愛すしかない。
それでも、楽しいなら、構わないと思う。
「あ、なんかメール?が来た」「何々」「え、誰これキモッ」
映し出されたメッセージは。
『好きだよ、水美ちゃん。あと五分後に、そっち行くから』
「うん、キモイね」
非日常のゴングが再び鳴った。
二話もなんか三角関係になりそうな。