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第五話

というわけで、連続アップ最終日でございます。








 ありました、海底神殿。

 とはいえ、本当に海底にあるので、息が続きません。

 ギルマンかマーマンにでもならないと無理なのか、なにか条件があるんだろう。

 もちろん、アクアラングを作るという選択肢も無い訳じゃないし、逆に海底神殿に行くダンジョンがある可能性も否定できない。


 スキル「海女」ちゃんは、避けたいな、うん、避けたい。


 とりあえず、海岸線での民家がないことから、漁業権は我々のモノと宣言することにした。

 世の中、言ったモノ勝ちである。

 つうか、海岸沿いに民家がないのは当たり前で、定期的に鯱が攻めてくるので、そんな状況では民家など出来まい。

 俺たちの場合は海の幸の大量入荷だと言うことで、大喜びで捌いてアイテムボックスに収納し、国を中飛ばししてNPC商人達に売っている。

 海魚を定期的に入荷する「斜め下」は商人達に大いに支持されており、また、大量に木材を買い付けているので喜ばれてもいる。

 大量の木材など買ってなにをするのかと言えば、当然のこと船を造るのだ。

 海底神殿の結界構造からして、離島か別大陸の半島に入り口があるとみている。

 そうなると、対魔物装備で固めた戦闘船は必須だし、そのための買い付けも大量になる。

 生産者は自分たちの拠点と船の製作と海洋生物の迎撃で毎日が戦争だと言っているが、目がきらきらしているのが全てを物語っているだろう。


 山越えが趣味になってしまった連中もおり、西のダンジョンの直上、こちらから山を越える際にでるのは「猿」。

 力の熊とするならば、早さの猿。

 で、わざと早さの「大猿」。

 加えて力もある「王猿」などなど、バリエーションに富み、極めて満足の行く内容だったと「チーム:山」は大満足だ。


 海を使った移動での海洋貿易なんて言うのも面白いので、本格的な船を造るのに必死な俺たちだった。


 正直、本気で楽しくて熱中していた。


 だから中飛ばしした、あの始まりの町で、なにが起きているかだんんて全く知りもしなかった。

 もちろん、はじめから関わるつもりもないけど。










 それは、ログオン前に表示されたメッセージだが、当事者達には表示されていないメッセージ。

 そのシステムメッセージをみて、なにが起きたのかわかった人間は少ない。




<システムクエスト:「ひび割れた心」 始まりの町で、反氏族の気運が高まり、不販売行為が横行しています。参加氏族:氏族組織「エルダー連合」内全組織>





 いつもの通りにログインして、プレイヤー店舗を広げようとしたら、出店許可が取り消されていた。

 いつもの広場に立っていた衛兵に止められて、逆らえば牢屋行きだと脅された。

 何事かと親筋に問い合わせても不明、プレイヤー同士の情報交換でも分からなかった。


 が、状況は進んでいた。


 NPC店舗で買い取りをしてもらえない。

 NPC店舗で販売をしてくれない。

 宿から追い出された。

 食堂にも入れない。


 等々。


 これは異常だという事でログインしているエルダーだけでもと「エルダー会議」が開かれたが、なぜかエルダー以外の人間が大量にいた。

 それはこの町の衛兵であった。


「・・・ここをどこだと思っていますの!?」

「それはこちらの台詞だ、氏族長達よ」


 その場所は、この町の、いやこの国の王宮の一部を氏族が密かに借りていた場所だという。

 目的はこの国の流通を良くするためのダンジョン攻略。

 そして攻略後は、氏族が流通を補助し、国を富ませる契約になっている、と衛兵が言った。


「ダンジョンは確かに攻略されたようだが、お主達ではない。さらに言えば、攻略したモノ達は、他国を富ませるばかりで我が国には何の利益もない。これは契約違反どころではないのではないか?」


 その契約は、エルダーを引き継ぐときに聞いていた。

 しかし、その契約には時限性は無かったはずであった。

 

「確かに期限を切った契約ではない。しかし、我が国が得られぬ富が他国で得られている事に興味がないとでも思ってか?」


 加えるならば、国民からも氏族達は評判が悪いという。

 会話もなければ交流もない。

 氏族だけで固まって何をしているかも分からない。 金払いだけいい、そんな不気味な存在。


「我が国を転覆せんとしているという意見もある」


 そのときになって初めて、エルダー連合は自分達の失策に気づいた。

 しかし、その気付き方もピントのずれたものであった。


「・・・では、おいくらほど支払えばいいのですの?」


 その言葉に衛兵達は苦々しい顔になった。


「求めるのは契約の履行であると、国王からの伝言である。金ではない。『富』をもたらせ、そう伝え聞いている」


 そういって、部屋から出て行く衛兵達だったが、一人振り返って言った。


「・・・その何でも金で済まそうってのが鼻持ちならねえって、その程度もわからねーのか、氏族さまってのはよぉ!」


 NPCから浴びせられた激しい憎悪の感情に、エルダー達は誰も反応できずにいた。 







 急変した環境であったが、変わらないモノもあった。

 周辺のポップモンスターや、そのドロップ。

 迷宮の攻略状況も変化せず、リセット状態ではないことが確認されている。

 少なくとも、全兵力を集中させれば、東の迷宮ぐらいは攻略可能だろう。


 いや、そう思いたい。


 いまだ時間を切られてはいないが、国民感情をみれば間違いなく近日中の結果を求められて居ると言える。

 個々で判断すべき点は三つ。


 ・いかに攻略を進めるか

 ・NPC店舗の攻略

 ・攻略以外での手法で「富」をもたらすか?


 それは、明らかに求められている方向を見失った、迷走しきった会議となるであろう事が分かる話であった。










「うん! 私東担当ね!」


 というわけで、いやはやスゴいことになってるわ。


 東探査担当の私は、破壊の剣の連中とともに東方進撃をしてるんだけど、これがもう、


 楽しいの何のって!!


 東方面は、言わばクエスト連チャンだった。

 @@を助け、山賊を倒し、盗賊団を追いつつ巨悪と立ち向かい、そして・・・


「・・・何であたしが姫との恋フラグを立ててるのさ」

「あー、ほれ、誰よりも男前だし」


 隣国のさらに隣国の姫に惚れられました。

 凛々しいお姉さま、なのだそうだ。

 「ふれちゃ」で鶴見ちゃんにグチったら、大爆笑されたのが悔しい。

 最近気づいたのは、「氏族:斜め下」の評判が東平原方面で活性化していて、知らない人に声をかけられたり、氏族と友好すれんず条約を結びたいという国が出てきたりと情報が飛び交っている。

 私たちがこのまま東進すれば、海洋軍事国にぶつかるということで、問題になりそうな官僚とかの情報まで商人が教えてくれる。


「ありがとうねー!」

「いやいや、お宅らの「熊」や「鯱」には儲けさせてもらってるから」


 どうやらお兄ちゃんたちの「熊狩り(カリッ)☆」や「鯱捕庫シャチホゴ」が効いているらしく、始まりの町から山こっち側はスゴい景気らしい。

 最近で回っている「猿確保サルゲッチュッ」の毛皮も評判がいいらしい。

 つうか、北担当のガンさんが持ち込んでいるため、北方面の国で天井しらずの価格逆破壊だとか。


 北方面山越えは「シロクマ」だそうで、血糊がつかないように倒すのに苦労しているという。

 ・・・倒すこと自体は苦労しないあたり、うちの氏族クオリティーかもしれない。

 で、シロクマのドロップで「氷結の指輪」というモノがあり、まさに製氷機。

 シロクマ様々、ということで、「上り坂荘」経由で南に輸出しているそうだ。

 つううか、かき氷の方の「シロクマ」屋台をしながら東進している私たちは、面白可笑しくプレイしているだけなのかもしれない。

 









「じゃ、俺が北だな」



 北に進路をとった途端、雪ときたもんだ。

 まぁ、そういうフィールドなんだと納得しつつも、シロクマ系がわりと保護色になっていて面倒。

 雪豹とか雪猿とか雪猪とか、北は動物素材に事欠かない。

 が、色が白しか居ないので、色彩豊かな熊や猿の毛皮が人気だ。

 北の町には、俺たちが通ってきたルート以外にも他のルートがある。

 さらに北の氷原フィールドからどこかに行く道と、ダンジョンから北上してくる道だ。

 つまり、始まりの町の北迷宮はここに繋がっているわけだ。

 とはいえ、ダンジョンの出口から隣町まで安全な東の迷宮と違って北はダンジョンを出た途端に白系動物に襲いかかられるので何ともはや。

 加えてドロップが製氷系とくると、このゲームにおける指針が見えてくる。


 広域に探査する各氏族間で物流をやりとりし、この世界の経済を富ませる。


 北のモノは南に、海のモノは山に、人から人へと渡りゆくアイテムが、人と人とのつながりを表して居るとも言える。

 まさに「ふれんず」。


「ガンさん、きました!! レアです、雪女です!!」

「おっしゃ、絵面はまずいが、取り囲んで一気に攻めるぞ!!」

「「「「「きゃー、ガンさん鬼畜ぅ!!」」」」」


 ・・・雪女でさえコレなんだから、雪ん子とか出てきたら逃げようかと思う俺だった。











「えーっと、じゃぁ、南とりました」


 遙々来ました南。

 というか、南は「虎」だったらしく、まさしく「虎虎虎」でした。

 レアな虎人という獣人も居たんですが、「あ、トラ」と指さしたところ、周辺にある竹を振り回し、『私をトラと呼ぶなーーー』とか大騒ぎになって、あれは多分ルートボスに違いない。

 ともあれ、倒したところ「タイガーボール」という金と黒の斑模様の「何か」が出てきて。


「何でしょね、これ」

「・・・なんかスゴく不吉な気がする」

「でも、譲渡不能アイテム、廃棄不能、って、呪われてません、コレ」

「手に持つなよ、もつなよ?」

「ああ、そんなこと言うから持っちゃったじゃないかぁ!」



 その効能はというと、持つもの全て、装備品全てがトラ柄になると言う恐ろしいモノでした。

 これでビキニでも着ていたら、一次創作ではいられなかったでしょう。

 犠牲者に合掌。


「「「「「成仏してね」」」」」


「死んでねーから!!」


 以降、レアトラは、タイガーストライプに引かれて集まって、トラの里に連行されていったのは隠れクエストに違いないという事で、任せた。


「助けろよ、おい、助けてーーーー」

「「「「「仲間、仲間!」」」」」

「いやーーーーーーーー」


 密林に消える共よ。

 その偉大なる犠牲に黙祷。





 と、本気で見捨てたわけではなく、スカウトが尾行したところ「トラ柄勇者」として称号を受けて、勇者とバレないようにトラ柄を消すジョブの伝承をうけたとか。


「なーなー、賭けしようぜぇ」

「・・・なんだよ」

「俺が勝ったら、おまえの名前は『タイガー』な」


「わたしをとらとよぶなーーーーー!!」


 というバーサーカー技まで手に入れたのは、良かったことに違いないと思うことにした私だった。


 ・・・


 もしかして、南の町って、あのトラの里でしょうか?

 その確証がないうちは南進ですね、ええ。

 そうそう、ガンさんが手に入れてくれた製氷装備。

 レアトラさん達に好評で、虎縞硬貨で払ってくれます。

 一応共通硬貨らしく、他の国でも使えたので問題有りませんが、珍しい硬貨と言うことで公定歩合的に上位にみられています。

 割と細かいところまでリアル、それが「ふれんず」の私のイメージ。


 ところで・・・


「虎が落としたこの装備、持ちたくありませんよね」

「しかし、ドロップを見過ごすにはできすぎてる」


 虎が吠えた顔を模したマスク。


 被っただけで呪われるのは決定です。

 触っただけでも取り込まれるかもしれない。


「とりあえず、タイガーさんに拾ってもらいましょう」

「つうか、俺の改名決定!?」

「タイガーさん、拾ってください」

「・・・ああああ、触った途端、エイリアンのように顔に飛びついてきそうでこわぁ、・・・押すなよ! いま触りそうだっただろぉ! って、食いついてきたぁ・・・・・あーーーーーーーー!」


 凛々しい虎の仮面の瞳の奥は、どろっとしたいいかんじです。


「タイガーさん、だいじょぶですか?」


「・・・力が正義なんかじゃない、正義がちからなんだーーーーーーー!!!」


 絶叫とともに走り出すタイガーさん。

 私たちも追いますが、全く追いつけず、その姿を再び確認できたのは、南の先の岬の突端で腕組みで昔のアニメの歌を歌っている、そんなところでした。


「やっぱ、やばいアイテムでしたね。タイガーさんはさすが勇者です」


 あれ、なんでしょう? 私を見つめる視線が鋭いのは?

 まぁ、考えませんよ、ええ。


 さすがに岬から海に飛び込もうとしたのは止めましたよ。

 私にだって良心というモノがありますから。


「「「「「・・・え、あったんですか?」」」」」


 失敬な。











 東の迷宮はバランス的におかしいという結論になった。

 迷宮で出会う魔物に対して、ボスがあまりのも堅い、と。

 現状から全く攻略が進んでいない北の迷宮を先に攻略し、その先を確認した方がいいという意見が纏まり、エルダー連合は総力を挙げて北の迷宮を攻略した。

 結果、あっさりと北の迷宮がクリアーされた。

 迷宮にいる魔物とほぼ同等の力のボスが複数居るだけであったから。

 これほどの脱力はないとエルダー達は思ったが、それでも北への道がつながり、そして初めての迷宮制覇となったのだから嬉しくないわけがない。

 装備を改め、そして迷宮出口へのポータルポイントへ我先に続いたプレイヤーたちがみたのは、真っ白な空間だった。

 いや、正確に言おう。

 ホワイトアウトした吹雪の空間だった。

 とりあえず、ポータルメモリーをし、いるでも通過できるようにしたのだが、対フィールド効果音で戦闘状態になったことが分かった。

 周囲警戒し、そして一人がやられたところで気づいた。


 囲まれている、と。


 そして、微妙にリアルに爪を赤く染めた白いそれをみて、何だか気づいたのは全員一緒だった。


「し、白い熊だ・・・」

「シロクマだぁーーーー!」


 熊怖い。

 未だエルダー連合の認識であった。


 「斜め下」では、熊=美味しい。


 大きく隔たりのある感覚であったが、それでも、ダンジョン攻略をした自負が踏みとどまらせた。

 いや、踏みとどまってしまった。


「みなさん、打撃をそろえなさい! 一人で無理なことも、二人で無理なことも、みんなで打ち壊せばいいのです! 行きますわよ、『ふれんず』!!」

「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」


 ここでの幸運は、このホワイトアウトエリアのモンスターの大半が、「斜め下」を目指して狩られていたことだろう。

 そして不幸は、かなりリアルに感じる寒さが、彼らの反応を落としていたことだった。

 結果として、囲んでいたシロクマ12体は倒せたが、ダンジョン攻略組が半壊した。

 もちろん、倒したシロクマを「始まりの町」へ持ち込み、半数を国へ献上した。


 血塗れで、所々に傷があるシロクマの毛皮であったが、王は一応の評価を下した。

 その結果、システムクエストは一応の終了を迎えた。

 が、未だ始まりの町とエルダー連合との溝は深かった。


 ちなみに・・・


「おいちゃーん、この魚買わねー?」

「お、りゅうちゃん、これまさか・・・」

「西の迷宮の先の海の幸。うまいよ~」

「買う買う! いや、うちだけじゃ買い切れねー! 職人集めるからちょっと待ってろや!!」

「おお、人数集めるなら、こっちも数出すぜ」

「なんだとぉ、まだあるのか!? どんだけだ、どれだけ持ってきたんだ!?」


 とか普通にNPCと会話している氏族も居るのだが、まぁ、人それぞれだろう。

日々のストレスが見て取れる作品になってしまいましたw


連続アップは以上です。

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