キャラ設定とか面倒だ。そうは思わないか?
まずは機材の起動準備。
VR機材の見た目は、カプセルのような見た目だった。
「そういえば俺、VR機材触るのも初めてだ。」
「…意外と流行には疎いんだね、お兄ちゃん。」
そうだな、よく考えればゲームはF○やらD○やらの有名なものばかりをやったことしかない。
ネットゲームは手を出したはいいものの、結局フレンド機能の意味の無いゲームだった記憶がある。オンラインって単語が全く要らなかったな。
本当に…泣けてきた。
「あれ、お兄ちゃん泣いてる?」
「泣いて無い。汗だ。あー暑いなー。」しまった、棒読みになった。
「…そうだね、汗だね。うん。じゃあこのプラグ挿して。」
言われた通りにプラグを挿す。カチリと音が鳴る
しかしながら妹よ、意外と機器の扱いに手馴れているな。
「出来たぞ。」
「おっけー、じゃあスイッチ、おーん!」
カチッ、という音が聞こえた直後、ウィィンと重厚な音が響く。
何かかっこいいな、と思っていると、横から声が掛かった。
「二人とも、今回の任務の時間は、ゲーム内時間で約14日。二週間だということを理解していてね。」と正からの声だった。
「ん?何故だ?」
「明日の零時にAIサーバールームに攻撃をするからだよ。」
「そういう作戦ってコンピュータに対して有効なのか?何かハッキングとかで既に知っていそうだが…」
「だとしてもAIにそれを止める機能は無いよ。ガンカメラとかの防衛装置はもう使われてないからね、時代は進化してるんだよ、黒斗。」
そうか。つまり意味が分からない。
とにかく、大丈夫ってことらしい。
というか、正が参加するってことは…
シューッと煙のような音がして、カプセルの上部が開く。
「お兄ちゃんから先に入って。私は慣れてるから一人でも大丈夫。」
「それはいいんだが、何処で合流するんだ?」
最初の町で迷子になるのはRPGやらファンタジーやらのゲームでのお約束である。
俺は大体いつも一時間くらい迷う。
「うーん、そうだね。始まりの町の東門の近くで待ち合わせにしよっか。」
「東門の近くにする理由が分からんが…」
「東門から外に出たらチュートリアルレベルのモンスターがいるんだよ。」
「というか、何故そこまで詳しい」
「え?え、えっと…その…ま、前にね!気になって調べてたんだよ!」
ふうん。ま、生粋のゲーム好きだしな。
どうやら、妹は今からやるゲームについての知識がある程度あるらしい。
その辺俺とは出来が違うんだな、と思いつつ、VR機の中に入る。
「左側にあるログインボタンを押せば自動でVRの世界に入れるよ!」
そういやゲーム名も分からないな。まぁいいか。ログインボタンは、と。
ああ、あった。ぽちっとな。
カチカチカチカチカチカチカチカチッッ!!!
「え、ちょ!押しすぎっ!」
悪いな。ボタンを見ると…
連打したくなる
シューッと再び音がしてカプセルが閉じる。
そして次の瞬間、というか本当に瞬間だったのか。
いつの間にか意識が無くなり、VRの世界へと入り込んでいた。
次に目を開けた俺が見たモノは、メニュー画面だった。
いや、何のメニュー画面なんだよ、とよく見ると、初期設定と書かれたボード状の物体だった。
宙に浮いている。…ということはここはもう既にゲームの中か。
そう考えてボード、つまりメニュー画面の中の文字を読む。
『ようこそ、ドラゴンフォースへ!』とある。
ドラゴンフォースとは、多分だがこのゲームの名前だろう。
竜の力、と直訳してみる。となるとゲーム内では竜が特別な存在なのだろう。
竜、と言っても別の漢字では龍と書き、意味が少し変わるらしいので、確定は出来ないが。
続きを読んでみる。
『まずあなたは最初に自身のキャラクターの基本設定から始めます。
ここでの設定は、後に変更することができません。』
基本設定か。
メニュー画面には、俺自身の全体像(全裸なんだが、これは一体何時測定されたのか)が写り、その横に身体設定変更ボタンがある。
押してみると、凄まじい数のオプションがある。これで好きなだけ自分の体をいじれるのだろう。
試してはみたいのだが、時間が推している。変更はせずに次の画面に移る。
ジョブを決めてください、一度決めたら変更できません。と出た。
え。ジョブ?
と思ったら、戦士やら魔法使いやら、大量に出てきた。
聞いてねぇよ俺。
考えてすらいねーよ
…
……
………
もういいや、ランダムボタン押そう。
ポチポチポチポチと連打。
んで、どうなるのやら、とランダム結果を見る。
『無職』と。
…は?
無職?
……いかん、頭が追いつかんぞ。冷静になれ。メニュー画面を壊すことは出来ないはずだ。多分。
落ち着いて、もう一度見る。
『無職』と。
現実だったようだ。しかもこれ、変更できないんだが。
仕方が無いので、説明欄を見る。
『無職:その名の通り、無職。永遠の無職。転職が出来ず、その上軽装備以外の防具を装備できない。あらゆるスキルに関する可能性を秘めている。』
おい待てやコラ運営。
永遠の無職なのか、そうなのか。その上防具がろくに装備できないのは嫌がらせか。
せめてもの救いは、最後の文か。だがコレも意味が分からないな。
いくらメニュー画面を叩いてもやり直しは出来ないようなので先に進める。
次のメニュー画面。
ボーナスポイント:20、と表記された数字と、その下に、STRなどを始めとするステータスがある。
既に全てのステータスに5ずつ割り振られているが、これから更にボーナスポイントとして割り振るのだろう。
とりあえず全てのステータスの説明を見る。
STR:近接物理攻撃のダメージ増加や、一部の装備の制限解除等に必要。
VIT:物理攻撃を受けた際のダメージ抵抗、一部の装備の制限解除等に必要。
DEX:遠隔攻撃の命中率増加や、生産系の成功率増加に必要。
INT:魔法攻撃のダメージ増加やダメージ抵抗等に必要。
AGI:スピードの上昇。また物理攻撃のダメージも少し増加する。
LUK:盗みスキルやその他の運に関わる全ての確率を上昇させる。
とりあえずはこんな感じか、ちなみに俺の独断で少し省略している。長いんだよコレ。
恐らく俺のジョブからして、ジョブ固有のスキル系統はまず使えないはずだ。
魔法も大型魔法はまず無理だろう。サポート系がメインになるはずだ。
未だに見えない無職の正体。何処までも俺を苦しめるに違いない。
STRにとりあえず10割り振っておく。最悪の場合は素手だからな。絶対に必要になるはずだ。
続いて、DEXに5割り振る。遠隔攻撃に石の投擲くらいは備えておきたい。そうなるとDEXは必要になるはずだ。…こればかりは確証は無い。
最後に、LUKに残りの5を割り振る。運があれば転職も出来るはず…そう願いをこめて。
でないとやってられない。
OKボタンを押し、確認のボタンを再び押す
続いての画面である。
『スキルを4つ選択してください。ここで選択したスキル以外でも、ジョブ固有スキルを除き、プレイヤーの行動によって目覚める物もあります。それがどのくらい成長するかはジョブによって異なりますが、たくさんのスキルがあるので是非探してください。』
再び大量のスキルが並ぶ。
俺に必要なのは回避と火力、あとは捨てる。
となると…『ダブルジャンプ』、『格闘』、『背水』、『ダッシュ』か。
背水に関しては、背水の陣のように、HPを限界まで減らして、その代わりに攻撃力を上げるスキル…らしい。細かい説明はそれだけだった。
次の画面に進む。
『最後に、あなたが借り受けるドラゴンの力を選択してください。』
画面には、ドラゴンの種類と、そのドラゴンから受ける力の説明がある。
重要そうだが、何を…っと、コレはいいな。
ブラッドドラゴン:血の契約:自らの血を捧げた分、力を借り受ける契約。
HPが減った分、攻撃力が上昇する。
これだ。背水と合わせれば上手く使えるだろう。
選択し、ボタンを押す。
『それでは、ドラゴンフォースの世界を楽しんでください』
これ、デスゲームだから楽しめないらしいけど。そこんとこどうよ…
かなり適当な説明になってます。
いつかしっかり説明できるといいですねっ!