野菜のプリンス!
「おい、人参。別にへるもんじゃないし、いいだろ?」
「え? いや、待ってくださいよ!!大根先輩 そういう問題じゃないし……男同士がこういうことやっても…良いわけないじゃないですか……。」
「大丈夫だ。 もしもの時は、俺が責任を取る。」
「大根先輩・・・!!」
「人参、お前なに赤くなってんだ? さては俺に惚れたか」
「ち、違いますよ!! 別に惚れてなんか……いませんよぉ」
「それじゃあ、行くぞ!」
「はい、先輩」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
僕がステージに一歩踏み出すと、観客席から溢れるほどの歓声が湧き上がった。
同時に、照明のあまりのまぶしさに目眩を覚える。しかし、僕にとっては気持ちいいくらいの光だ。
「キャアアアアアアアアアアア//// 今日の人参様の衣装はメイド服よww」
「男がメイド服を着るのは反吐が出るほどキモイけど、人参様と大根様だけは許されるわよねww」
「今日もかっこいいわ! 人参さま大根様サイコおおおおおおおお!!」
「一度でいいから、間近であの美顔を眺めてみたいわ!」
「あの二人のCPとか萌え死ぬわあああ!!」
「わんわんわんわん/////」
「俺もああなりたいぜ!!!」
「無理よ」
「かっこいいいいいいいいいいいいい!!!!」
僕、“人参”と先輩にして相棒の“大根”は只今人気絶頂の人気アイドルユニット『vegetable』
デビュー1年にして人気はうなぎのぼり、初シングルCDはめちゃくちゃ売れまくり、オリコンチャートの上位を占め続けるほど。
初アルバムはすでにミリオンを超え、子供から大人男女構わず、老人またはペットいや生きている動物全てから支持を受けている天才アイドルだ。
そして、今日の衣装は思い切って “メイド服”である。
僕は反対したのだが、大根先輩は一点張り、結局着るはめになってしまった。
そして、ライブは始まり、最近の新曲を歌ったり、トークをしたりダンスを踊ったり。
スケジュール通りの時間が流れ、ついに“あのコーナー”がやってくる。
「今日のライブに来てくれたみんな、ありがとう!!!!!」
「そんなお前たちに、恒例の褒美がある! 大根様直々にくれてやるぞ!!!!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「なんと、今日の褒美は…… 採れたて産地直送!! メイドin北海道、新鮮な夕張メロンだ!!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 欲しい~!」
「それだけじゃない! お値段の方は…… 今なら! 1万円だ!!! 今だけだぞ」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、安い~~!!!」
「ほら、俺様直々に売ってやる。」
「ここに並んでね!!! 急がなくて、ちゃんと数はあるよ」
そう、僕たちがこんなふざけた仕事をしている真の目的は、客に野菜や果物、特産品を買わせるため。
ファンは、僕達の事を人参だけに赤い天使様、大根先輩を白い堕天使様なんて呼んでいるけど、アイドルになる前はただの売れ筋に悩む農業家の息子だった。
つづかない……