表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第二章1 『契約』

――酒場。 杯を傾ける男の目に、赤い紋章がちらりと映った。


「さて、始まったか。」


炎の光に揺れる戦の気配。静かだが確かに、幕は上がっていた。


――街外れ。 石畳の修復を淡々とこなす男。無表情のまま、静かに目を光らせる。

王戦は、まだ静かに動き出したばかりだ。


――古い教会。 祈る声はない。ただ紋章が淡く光る。 王と繋がる神の力。まだ姿は見えぬが、気配は確かに、動き出していた。


◇◇◇


私はアルトの横で傷を確認していた。


「こんなに血が…」


心配になり顔を歪めながら、治療の方法を考える。とりあえず授業で習った止血法を試してみたが、思うようにいかない。

傷口に抑えた白いハンカチは真っ赤に染まっていた。


「どうしよう……。」


不安で涙が出てきそうだ。こういう時に自分の無力さをつくづく実感する。 何もできない、アルトは私のことを命がけで助けてくれたのに私はアルトを助けれない。

そんな思いで心がいっぱいになったその時、聞いたことのある声がした。


「随分と無様な姿ですわね。みっともない。ただ、小娘を守ったのは評価に値しますわ。」


青い髪を二つに結んだ少女だった。初めて異世界にあの時の盗賊少女だ。


「……アンタ、生きてたんだ。」


「妾はそう簡単には死にませんわ!」


オーホッホッとお嬢様のような高笑いをしている。しかし、私は今この子と話している時間などない。一刻も早くアルトを助けなければ。


「アルト…!ねぇ、返事をして!…アルト!!」


どれだけ呼びかけても反応はない。地面に剣を刺しそれを支えにして座っているが、ぐったりしているのが見てわかる。

私の反応がないからか、盗賊少女は少し眉をひそめながら話しかけてきた。


「その歩兵。このままでは危ないですわ。いずれ、出血死するでしょうね。妾なら、其奴を助けることも容易いですわ。」


希望の光が胸に差し込む。


「お願い…!……何でも!!何でもするからっ!だから、アルトをっ……!」


すると、私の言葉を聞いた途端さっきまでの表情が一変した。


「……ハァ?何でも?お前、自分が何言ってるのかわかってんのか?………いいでしょう。ならば、貴方の覚悟を試すことにしますわ」


すると少女は不敵な笑みを浮かべた。私の心臓は早鐘のように打ち、手は震える。


「私からの提案は一つ。」


人差し指を立て私を見下ろしながら言う。


「貴方の目を一つくださいな。」


「……は?」


信じられなかった。目を、あげる?抉り出すってこと?頭の中で警告音が鳴る。想像するだけで視界がチカチカした。


……でも、アルトは私のことを怪我を負ってまで守ってくれた、なら……。


「まぁ、貴方みたいな一般人がそう簡単に “いいよ”なんて言えるわけがありませんわ。だから――」


「――いいよ。」


「……え?」


盗賊少女は目を見開いていた。よほど驚いたのだろう口をパクパクと動かしている。


頭を下げて言葉を続ける。


「いいよ。……私の目、あげる。だからアルトを助けて…。……お願いします。」


涙が頬を伝う。胸が張り裂けそうなほど必死だった。アルトを助けてほしいその一心で彼女に願う。

直ぐ側で息を呑む音がした。

しかし、すぐに怒声へと変わる。


「……なんなんだよ、お前。もっと嫌がれよ!こんなガキに頭下げてまで頼んで恥ずかしくないのか!?」


「……お願いします。」


「……クソっ。なんなんだよ。……なんで、お前らは自分を捨ててまで誰かを助けるんだよ。」


少しの無言のあと、少女が話し出す。


「……いいですわ。なら、貰いましょう。その目を。」


すると、片目を少女の小さな手に覆われる。怖い。強烈な痛みを覚悟し体が震える。

恐怖が体を貫くが、何秒待っても痛みは来なかった。恐る恐る少女を見ると、優しく微笑んでいた。


「これで終わりましたわ。契約は成立。その男を助けましょう。」


「…え?もう終わったの?抉り出すとかじゃないの?私、片目を失う覚悟決めてたのに……。」


驚きと安堵が入り混じる。


「妾はそのような汚らわしい行為しませんわ。」


少女はアルトの方へ近づき傷口に手を軽くかざした。魔方陣が浮かび、緑の光が傷口を包む。


「軽い治癒魔法で傷口はふさぎましたわ。今の妾ではここまでが精一杯。まぁ、完璧に直したとは言えませんが命を繋いだんですから感謝はしてくださいまし。」


軽くウインクをしてこちらを見る。その姿が今は女神のように見えた。


「用件も済んだことですし、妾はもう失礼しますわ。ごめんあそばせ。」


そして少女が去り際、それから呟いた。


「歩兵の怪我を完全に治したいというのなら街外れにある荒れ果てた書物庫に行くことをお勧めしますわ。

そこにいる人物は気難しいですが、こう言えば反論はありませんわ。」


少女がくるりと振り返り、初めて会った時のようないたずらっ子の笑みを浮かべる。

手を口元に当てニヤリと笑ってみせた。その手には歪な淡い赤の薔薇の紋章が浮かんでいた。


「――『王候補者、リージェントの紹介で来た』と。」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

少女との契約――それが今後どのように影響してくるのか。

そして、これから待ち受ける王戦の嵐。

次回は、新たなイケメン候補者が登場します。お楽しみに!

面白いと思ったら、ブックマークやコメントで応援してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ