高校1年生の春、東神田高校空手部入部。
春。
別れと出会いの春。
同じ道場のめいは私立高校に進学した。
私はここ数年全く名前は上がっていなかったが、10年前に1度インターハイに出場した公立高校、東神田高校に進学した。
何故この高校だったのか。
ただ単に父親の母校であったというだけだった。
「本田美鈴です。目標はインターハイと国体です」
新入部員顔合わせの日。
空手部に私を入れて10人入部した。
今年は多かったらしい。
部長さんが嬉しそうに話をしていた。
とりあえず、この中で常時勝ち続けないと意味がない。
経験者はいるのだろうか。
そう思って横を向いた瞬間。
「うそぉぉ!!美鈴ちゃん!!!???」
「うっるさ……」
耳元でばかでかい声が響いた。
私は首をすくめる。
「うち!うち!!白川桜!!覚えとらん!?」
「し、白川桜?え……あ……う、うっそ!」
隣のポニーテール。
記憶を小学生の頃まで掘り起こして白川桜の名前を思い出した。
「はぁ?お前なんで中学空手やめたん」
「中学部活に入って習い事全部やめたんよ!」
「あ、なるほど」
「え!?なんで美鈴ちゃん東神田!?神郷じゃないん!?」
「あ、勧誘きてたけど断った」
「はぁぁ!?つっよ!!!」
「いや、白川さんうるさ……そんな子やったっけ」
私の記憶の白川さんは組手よりも型。
戦うのは苦手って感じの可愛らしい女の子。
小学6年生くらいの記憶だけど。
「てかインターハイとか国体とか、ここ神郷じゃないんよ!?」
「分かっとる」
「公立よ?普通の」
「去年、神郷の部長に喧嘩売った。絶対勝つって」
「はぁぁぁ!?」
現部員の先輩方が呆気にとられていた。
それくらい白川さんの声の圧がでかくてびびる。
部長が笑いながら私達に声をかけた。
「と、とりあえず。そこ2人は経験者なのね」
「あ、はい。とりあえず……」
「部長!この人やばい人ですよ!!」
「いや、どう考えても現状では白川さんが1番やばいからね……」
「はぁ!?喧嘩売ってんの!?美鈴ちゃん!!」
「い、いや……売ってない」
小学生の頃の、可愛らしい小鹿みたいな白川さんは一体どこに行ったのか。
とにかく白川さんが東神田に入学して、空手部に入部したことは私にとって大きな戦力だった。
この顔合わせで現時点での東神田全体の戦力を知る。
高3が3人で高2が2人。
……5人?
「あの、部長」
「なにー?」
「皆さん……3年生ですよね」
新入部員10人の他には女子3人しかいなかった。
「あー2年は幽霊部員なんだよね」
「そう、2人とも経験者なんだけど。たまにしか練習来なくて……あ、試合は来てくれるよ」
部長が副部長に苦笑いで話しかけると、副部長も苦笑いで返した。
高校の団体組手は5人で1チーム。
なるほど。
ギリギリだけどすぐに試合に出るには、誰かを蹴落とす必要があるって訳か。
「一応今日来るっては言ってたんだけどな……来ないね」
部長も副部長も未経験から始めたらしい。
ここ1年の戦歴は地区大会止まり。
初戦突破すら出来てない。
「えっと……本田さんだっけ?」
「あ、はい」
「期待してるね」
部長がトンッと私の肩に手を置いた。
私より頭半分低い部長。
多分中段突きを主にして戦ってくるだろう。
その場合は……。
「……」
「どうしたの?」
「え、あ、いいえ。何でもないです」
人の戦い方をすぐに考察して対応の仕方を考えるクセを止めないといけないな。
一応、仲間になるのだから。
仲間に。




