高校1年生の秋、新人戦地区大会。
「うおー!やったぁぁぁぁ!」
「ちょっと目立ちすぎましたね」
松野先輩が両手を上げて夕日に向かって叫んでいた。
その後ろで私は地区大会の優勝盾を持ってついていく。
白川達、他の部員も更に後ろに続く。
「いや、本田ちゃんも凄いやん」
「地区予選ですからね。西高の部長さんには勝たしてもらえませんでしたし」
「いや、結構押してたやん。本田ちゃん」
「でも結局負けたんで」
新人戦の地区大会が終わった。
団体組手はまさかの優勝。
団体決勝の試合中は体育館のざわめきが消えなかった。
それもそうだろう。
急に無名公立高校が私立を破ったのだから。
しかも白帯をつけた1人が互角に戦って、もう1人なんてストレートで相手を下したのだから。
まぁ白帯をつけたのは白川と私の作戦。
なめてかかって貰えるように初戦は目立たないようにしていた。
前回の公式戦で初戦敗退の高校とは思えない成績。
個人戦では松野先輩が2回戦敗退。
私がベスト8。
私はギリギリ県大会の個人戦に進むことが出来た。
(確かに押してた。確実に私の方が押してたけど、西高との試合は私の攻撃に旗は1度も上がらなかった……地区予選でもこのザマか……)
奥歯をギリッと噛む。
神郷学園の前に立つよりもまだ先に、地区大会に出場する私立高校を簡単に消さなくてはいけない。
自分が出場してはっきりと分かった。
神郷学園だけじゃない。
私が意識するのは私立高校全てであること。
そしてその道は、長く険しい茨の道だということ。
「来月の県大会はついに神郷とご対面やな、本田ちゃん」
「まぁ……そうっすね」
神郷学園と顔を合わせる。
去年の夏に吐き捨てた言葉通りだが、今日の地区大会の有り様じゃ神郷学園の足元にも及ばないだろう。
「……」
分かっていることだ。
この道を選んだのは自分。
時間をかけて這い上がる必要があることなんて、入部した時に分かっていた。
それでも私はずっと勝ちにこだわって空手を続けてきた。
勝つことを目標にしてきた。
勝ってこそ正義の舞台に身を置いていた。
「……」
勝ちたい。
可能性が0に近くても。
私は無意識に右の親指の爪を噛んでいた。
その様子を白川がじっと見つめていることも気付かずに。




