高校1年生の秋、新人戦前。
9月秋。
新人戦地区予選。
私が考案したメニューで夏を過ごして、1人も脱落者を出さずに迎えた初めての公式戦。
脱落者は出なかったが、ほぼ毎回過呼吸で倒れる部員がいた。
経験者の白川もその1人に入っていた。
ただ倒れても誰も辞めようとはしなかった。
そして元々東神田高校が進学校だったということもあり、部員達は皆覚えが早かった。
空手未経験の部員達も見て学ぶことが出来ていた。
私が予想してたよりも、ずっと早く空手というものに近付いてきていた。
このままなら誰も切り捨てずに済みそうだ。
「本田ちゃん、これで行くけどどう?」
「あ、はい」
私は松野先輩が手にしていた紙を覗き込んだ。
組手のオーダー表だ。
先鋒成田先輩、次鋒白川、中堅私、副将富川蓮さん、大将松野先輩。
富川さんはスポーツ未経験だが過去に少林寺を習っていた経験があるそうで、身長が私より少し高くスポーツ体型をしていた。
確かにリーチの長さは有利に働く。
「……あ、良いと思います」
「よし!これで行くぞ!!!」
「……」
私は視線を上に向けた。
まぁ……ないな。
私だったらこのメンバー。
今勝てる確率が高いのはこのメンバーかもしれない。
でも、私は今回勝つことは考えていない。
「ほーんだー!」
小さく溜め息をつこうとした時、右耳からめちゃくちゃな音量が飛び込んできた。
私は顔をしかめる。
「うっせぇな、白川」
「いっひっひ」
「てかお前、そんなキャラだった?」
「こんなキャラだった!!」
「絶対ちげーから」
私は松野先輩から前日預かった対戦表を見る。
名前を確認するが、昔道場の流派で見た名前は数人程度。
団体戦の初戦は去年の地区優勝校の西短大付属西高校。
個人戦を確認するが、私の相手は公立高校の全く見たことのない名前。
「……」
「誰かいる?」
「いや。特に気になるのはない」
「そっか」
「……松野先輩はやられたな」
「何が?」
「これ」
松野先輩は個人戦の初戦。
1度勝ったら去年の団体優勝高校の選手と当たるようになっている。
「死に枠や」
「あー……なるほど」
「白川」
「ん?」
「頼みがあるんよ」
「何?」
私はゆっくり視線を上げて白川を見た。
白川は真面目な私の表情に身構える。
「な、なんや……」
「あのな……」
私の言葉を聞いて、白川はゆっくり構えた腕をおろした。
私を見る白川の瞳が少しだけ曇った気がした。




