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高校1年生の梅雨、部長の決意。

ボーッと窓の外を眺めていた。

気付いたら葉桜も目立たなくなり、梅雨の時期も終わろうとしていた。

夏からの練習メニューどうするか。

今はそれだけが問題だ。


「あ、あの。本田さん」

「……え、あ、はい」

「じ、授業大丈夫?」

「え?」

「あ、ごめん……なんか部活忙しそうだから」

「あ……」


(やばい……誰だっけ、この人)


部活以外に興味が無さすぎて、同じクラスの子の名前すら覚えてなかった。

正直顔もあんまり……。


「ノート……とれてるかなって」

「……あ、全然」

「良かったら写さない?」

「あ……ども」


受け取ったノートの表面に西宮瑠愛(にしみやるあ)と書かれていた。

西宮さん、か。


「ありがとう、西宮さん」

「あ、い、いえ」

「?」


西宮さんは私にノートを渡すと、一目散に自分の席へ戻っていった。

私は首を傾げる。


(変な人だな……)


そう思いながらも、私はとりあえず受け取った西宮さんのノートを開いた。


「うえっ……」


めちゃくちゃ字が綺麗だ。

そして丁寧にまとめられている。

凄い。

西宮さんは頭良いんだろう。


ーガラガラガラッ!


「ほーんーだーちゃーん!!!」

「ギャーッ!」


後ろの扉が物凄い音を立てて開いて、松野先輩の声が響いた。

私は思わず叫んだ。


「ちょ、松野先輩!ここ1年の教室っすよ!!」

「知ってる!」

「もう少し静かに来てくれよ……」


私は西宮さんのノートを机に入れ込み、松野先輩の元に急いだ。


「何かありました?」

「うん。ちょっと歩きながら良いかい?」

「あ、はい」

「昼ごはん食べた?」

「あ、まだです」

「じゃあ一緒に食べようじゃないか」


私は財布を鞄から取り出して、松野先輩と学食に向かった。


「考えたんだよ、ワシ」

「何がですか?」

「今後のことだよ」

「?」

「やっぱり……ワシには切り捨てるのは難しいんだ」

「ああ、松野先輩はそう言うと思ってました」


私が即答すると、松野先輩が目を見開いてから挙動不審に視線を泳がせた。

え?

何の動きですか、松野先輩。

それは。


「え、ぶちギレられると思ってた」

「何でですか」

「神郷の前部長とやりあってる時の顔知っとるから」

「だから、忘れてくださいって。それ」


私は笑った。

表面上は笑っていた。


「良いんですよ。松野先輩の選択は間違ってないので」

「何かホッとしたわ」


松野先輩は少し勘違いしているのかもしれない。

3年生の先輩方や神郷学園の人達よりも、多分1番やばい存在が“ここ”にいるのに。


「……ふぅ」


私は気付かれないように小さく溜め息をついた。

松野先輩は惜しかった。

強くなることに代償が必要なことを気付けるタイミングだったのに惜しいな。


……あれ。

何か変だな。

私は今、何を考えているのだろうか。

一体私は今。



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