第6話 ま、魔法使い!?
セリオンと一緒にいる3人。この人たちも知っている。勇者パーティ一行のメンバーたちだ。剣士ガランのプリーステスのゼニア、そしてアーチャーのパイク。4人で構成するバランスタイプのパーティだ。
「あ、あの」
4人のところに戻ってきたモルガナだったが、何から話せばいいか分からない。すると女性であるゼニアが向こうから説明してくれた。
「ごめんなさいね。ここで寝ているあなたを発見したんだけど、野宿の用意が無かったから寝ているのか何なのか判断がつかず、命に別状はないようだから夜明けまで様子を見ようってことにしたの」
なるほど。周囲を警戒して一晩中守ってくれていたのか。
「あ、有難うございます、何とお礼を言ったらいいのか。あ、あのこれ、有難うございます」
身体に掛けられていた純白のローブは女性のものに思えた。それをゼニアに返す。
「いえいえ。でもどうやってここまで?馬もいないみたいだし」
「あ、歩いて……」
「そう、信じがたい話だけど私たちも歩いてきたから人のことは言えないね」
ゼニアは少し驚いた様子だったが、微笑でそれを覆う。
「すいません、皆さんはどこから来たのですか?私は王都ですけど」
「私たちも王都よ」
100年前の王都から飛ばされてきたのか。100年前、なにか王都で発生した出来事はなかったか。無難でしかも100年前を探れる質問。モルガナは必死にそれを考えた。そして出た質問は自然とは言えない質問だった。
「あ、あの、王様の名前なんでしたっけ?」
「へ?ふふ、ブリキン王よ、私たち、何か疑われてたりする?」
「い、いえ」
100年前は確かにブリキン・オスティンバーグ王だ。つまりこの4人は本当に100年前から飛ばされてきたのだ。自分も185歳分若返ったのだから、そういうこともあるかもしれない。
魔法の深淵はまだその底を誰も見たことが無いのだ。問題はどの時点で飛ばされたのか。王都を出たところまでは彼らの時代だ。そこからこの場に至る途中で飛ばされた。そう見るべきだろう。そして彼らはそのことに気付いていない。
気づいているようには見えない。
「あの、皆さんはどちらまで?」
「ガイア山よ」
火山だ。
「そんな危ないところに何をしに……」
「ええ、まあ……。ところで森を出るまで一緒にいましょ。森の中は危険よ。森を出たところで、街に入り、そこで王都行きのキャラバンに同行させてもらって」
かなりの迂回にはなるが安全面を考えるなら至って常識的な提案だ。モルガナは空を飛べるからその点についてはあまり関係ないのだが、森を出るまでと言え、このパーティと一緒に入れるのは好都合だった。
ズウゥゥゥン……。
道中不意に地響きが鳴り動物や鳥が逃げ回る。パーティは戦闘態勢をとり、敵の接近に備える。やがてそれが姿を現した。山が動いてるかのような巨体。全長4メートル、高さも4メートル。幅3メートル。超巨大陸ガメ、アルケロンギガテスだ。噛む力はこの世のありとあらゆるものを噛み千切るという噛合力。
しかし真に恐るべきは体内に溜めた水分を超高圧力で射出するアルケロンレーザーだ。王都の城壁を一撃で貫通にする破壊力があると言われている。そして巨大で分厚い甲羅は人間の武器等一切刃が通らない。
走る速度は短い距離なら人間の5倍ほどの速度で走る。だから逃げることも不可能だ。
もしかしたら地竜を超える戦闘力ではなかろうか。全員顔面蒼白だ。
まずいな……。でもこんな化け物がまだいたなんて。
「心を縛れりその鎖、慈しみの温もりでいざ溶かさん。エリシオ」
モルガナは懐からおよそ20センチ、愛用の杖を取り出し、委縮の彼らに精神デバフ魔法を施してやる。すると顔面蒼だったパーティに落ち着きが戻る。
「首を狙うぞ。突きが有効だ。ガラン、囮を頼む。パイク、目を狙って陽動してくれ。ゼニアは魔法で援護を」
ふむ。的確な指示。少ない勝機目がけた一点集中。確かにそこしか勝筋がない。前向きな思考もリーダー向きだ。セリオンの身体が黄金に発光する。聖属性エンチャント。それも武器だけじゃない全身強化だ。だがそれでもリスクが高すぎる。
「厳冬の女神よ、我が槍となって敵を撃て、フローズンヒューベリオン」
ピキイン!
変温動物には特に効果的。体内の水分、体液まで凍りつかせる氷結魔法。一般にタンパク質や体内の糖分を使った凍結耐性を持つのが変温動物だ。しかしその耐性が効果を発揮できるのはある程度の温度までなのだ。それを超えればむしろ恒温動物よりも凍りやすい。それはモンスターでも同じことが言える。
「キミは一体・・・」
「精神状態異常解除も使ってたよね・・・?」
4人は振り返って唖然としている。ここまで強力な魔法使いを見たことがない。
「あ、あの。溶けないうちにトドメさしておいた方が、良いよ……?」
だって、ほっといたら溶けちゃうからね。




