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第50話 出遅れた!

 家令補佐をつとめるリーヴ・マクラカンは今回のハンターフェスに不穏な気配を感じていた。それはこの場を利用しようとしている何者かの気配だ。

 ニミッツガルドから呼び寄せた二つのパーティにその調査を命じるだけでは物足りず、彼はその一つに同行したのだ。そのパーティとはニミッツガルドのA級パーティ「龍飛」だ。リーヴを加えて5人。

「理解しているな?ベン・クレイマン」

「もちろんです。リーヴ様」

 龍飛のリーダー、ベン・クレイマンはいかにも豪快そうな容貌だが、繊細な機微を理解できて適切な先回りが得意な上に、巧妙に他人を持ち上げることのできる賢い男だ。シーフのマチルダ、プリーストのクロス、そして剣士、ギルバート。

 彼らは王国最大のギルドを持つニミッツガルドでも屈指の実力者たちで、ブラックダガーと共にニミッツガルドの双璧と呼ばれている。

「エグゼテスを先行させ、我らはその後に続いてエグゼテスを追うものも確認する。そうですな?」

「その通りだ」

 リーヴがベンの言葉に頷く。エグゼテスもまたニミッツガルドのA級パーティ。彼らもリーヴに雇用されて参加したパーティだ。唯一のS級であるマグダ・レガリナが不参加を表明している以上、優勝候補はA級パーティに絞られる。


 リーヴの使役する「龍飛」に「エグゼテス」そして「ブラックダガー」と王都の「赤煌」。さらにもう一つ、ニミッツガルドの4つのA級パーティの一つ「ガントレット」だ。


 ハンターフェス初日。優勝候補の五つのパーティすべてが螺旋階段を使用して第七階層に降りた。


「モルガナ……」

「もしかして出遅れたんじゃねえか?」

 エミリオもアベルも呆れたように言うのはモルガナの言っていた抜け穴がどこにもないからだ。

「おお、おおお……」

 両手と両膝をついてその場で嗚咽のような声を漏らすモルガナ。

 なぜないのか。

 穴はあったのだ。


 しかし現実の問題としてどこにも見当たらない。

 ならいっそもう一度穴を開けてやろうか。

 それ自体は容易だ。そんなことが出来るのは参加者の中でモルガナだけだ。

 だが今やれば参加者や警備から死者が出かねない。ただ人は死ぬが、自分がさも正しかったかのように振る舞うことはできるだろう。

 自制しろ。自制しろあたし……!そして己を踏み越えろ!


「ご、ごめんなさい。あたしの勘違いでした」

 そう。彼女は成長した。そして仲間の成長の瞬間を台無しにする二人ではなかった。

「いいってことよ」

「そうだよ。地道に行こう、モルガナ」

 涙が出そうな言葉だ。しかし出遅れたのは事実。まだ第一階層にも届いていないのはモルガナ達カフェリーゼだけだ。


 ゲート付近で初日の野営の準備をしているモルガナたちに運営の事務員も失笑する。

 ち、ちくしょう……!なして、なして……!

 失笑の気配に涙目で顔を真っ赤にするモルガナだった。


 二日目に事態は動きを見せた。ヴェロニカたち赤煌は一番進んでいるのがブラックダガーだと見ていた。一か月という期間がある。まずはリタイヤせずに一か月を乗り切るのが重要なのだから、序盤の時点で先頭を走る必要など全くない。

 ただ、未発見の宝物やアイテムがこの階層に眠っていた場合、先に見つける可能性があるのだから、先頭は決してリスクだけでもないのだが。

「焦ることはないよ。ブラックダガーは脅威だけど、先頭を走れば先頭を走っているという自覚がメンタルを蝕む。追われるというのはそういうことだから」

 ヴェロニカは仲間たちにそう言った。


「分かるぜ。俺もいつだって、二番手の足音に怯えているからな」

 前衛のルカが笑った。彼は確かに腕が立つが、いつ一番手になったのか。

 迷宮の中に会ってそういう笑いが生まれるパーティは健全であり、赤煌がそうであった。

「はっはっは。だが、ルカよ。自信を持つのはいいことだ。そしてブラックダガーは自信を持っている。警戒しないとな」

 老魔法使いゼリオールが一同を引き締める。柔らかな表情でプリーステスのブラメーデが頷く。タジルはボウガンのメンテナンスをしながらやはり赤煌はいいパーティだと思うのだった。

 そしてそのタジルの表情が変わる。

「モンスターだ。後方警戒して!」


 アーロンが前にでてルカも並ぶ。前衛の二人が前を固めるとその僅か後ろにヴェロニカ。その後ろにゼリオール。タジルはボウガンを用意しながら後方への警戒も怠らない。

「ふ、ゾンビだ。お前たちはこの場で待機しろ」

 ルカが突出し、数体のゾンビをその場で瞬時に仕留めた。

「しかし、こんなものなのか?有名な大規模迷宮の割に、こんな雑魚ばかりじゃお宝は掘り尽くされているだろ」

 ルカの指摘はもっともだ。


 そこで最年長のゼリオールが言った。

「危険度の少ない掘り尽くされた大規模迷宮。結局は盛り上がるかどうかが運営にとっては重要だろう。なら死人は出さずにすごいお宝が見つかるパターンが最高だ。つまり運営がお宝を忍ばせた可能性はないか?」

 お宝が何も出なければ白ける。

 次回以降の存続の危機に立つ。今回の責任者は面目丸つぶれだ。


 それを避けるためにあらかじめ運営がアイテムや宝物を迷宮内に隠した可能性はないか。しかも微妙に、かつ巧妙に見つけやすい配置で。だとすれば先行するブラックダガーが有利だ。

「追いましょう」

 ヴェロニカがそう言い、彼らは立ち上がった。そして彼らは意外に早い段階でブラックダガーに追いつく。

 追い付いて息を呑んだ。

 ジェイガン達はその先で物言わぬ躯になっていたのだ。


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