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第43話 不安定ちゃんとお粗末くん

「まあ、いいわ。でもベリアス、教えてあげる。迷宮は強弱だけじゃない。もっと必要なことがある。あんたはそれを分かっていない」

 アガニケのそのセリフをきっかけに、こうして二人は後日迷宮探索演習を行うことになるのだが、まずはギルドにサブパーティ登録のために向かうことになったのだ。


 複数パーティの掛け持ちはよくあることだ。特に強者であればその誘いはひっきりなし。そこで得た個人実績も加算されるのでギルドに登録しておくことはメリットがある。

「あら、アガニケ。あなたがサブパーティ加入なんて珍しい。初めてじゃない?いや、今回が二回目か」

 元冒険者にしてギルドの教官、エオリアが話しかけてきた。


 アガニケはこれまでそういう幾多もの誘いをたった一つ除いて、全てことわってきている。

「エオリアさん、ご無沙汰しています」

 アガニケは話しかけてきたギルドの教官に挨拶を返した。そのエオリアはアガニケが組もうとしているパーティメンバーを見て表情を引き攣らせた。

「ベリアス、さん……」

 その様子にベリアスとエオリアの間には既に面識があるのだとアガニケも気付く。


 知り合いのようだがそれも当然だ。最近、冒険者登録をしたベリアスは、登録の際に実技試験を受けただろう。その試験官がエオリアだった。おそらくそういうことだ。なら二人は見知っていて当然。アガニケはそう理解した。


「なるほど、じゃあ、エオリアさんはベリアスの技量を御存じなのね?どうでした?そこそこ?」

「え?ええ……」

 正直なところ、彼の闘気に脚が竦んでいる間にいつの間にか背後を取られ、その後の記憶がない。技量云々を言える程度にその実力を見る時間さえ無かったのだ。いわゆる瞬殺だったのだから。


 困惑の気配を滲ませると共に曖昧なままのエオリアの態度を、アガニケは“はっきり言うのは酷な程度の技量”または“とりつくろう言葉に窮するほどの技量”と理解した。

 つまりはとてもお粗末だったのだ。


 ならばそこはこれ以上突っ込まないのが情けというもの。

「さて、ベリアス。パーティ名は?」

「お前が決めろ」

「ふうん。そうね……。あんたの私に対するイメージは?」

「不安定、だ。」

 しかしお粗末くんの言っていることだと思えば余裕をもって受け流せる。


「相変わらずまともなこと一つ言えないのね。こういうケースでは必ずいいイメージを言うものなのよ」

「なら多少は未来への期待を込めて未完成とでも言っておくか」

「未完成、ね。あんまり変わらないけど、あんたにしては歩み寄った方でしょうからそれで手を打ってあげる。インプログレス。これでどう?」

 完成への進行や成長を前提にした単語に置き換えたのは、それが彼女の知性の本質だからだ。


 こうして問題なくパーティ登録を済ましてドアから出て行く二人の背中を見ながら、受付嬢のエリカがエオリアに言った。

「なかなか息の合ったコンビになりそうですね。アガニケさんはマグダ・レガリナよりむしろこっちの方が合ってそう。なんか生き生きしている。しかも実質SランクとAランクの間くらいの実力をもつパーティですよね?二人しかいないのに」


 コンビという意味ならすでに王国最強クラス。パーティとしても戦闘力だけならAクラスパーティを易々と超えるほどの。エオリアもその点には異論がない。

 最強クラスの前衛に最強クラスの魔法使い。あとは回復役を一人加えれば、このパーティは……。


「とはいえ、迷宮でより問われるのは強さより対応力だ。たった二人ですべてに対応できるほど迷宮は甘くない……」

 エオリアのその呟きもまた事実だ。

 そしてエリカもまた懸念を口にする。

「ということは、カフェリーゼはベリアスさん抜きでフェスに?大丈夫ですかね……」

「確かに」

 エリカの言葉にエオリアも同意する。アベルもカーターも並以上ではあるが、まあ中の上くらいだ。彼らは優勝を目標に掲げていたはずだがベリアス抜きではかなり険しい道になる。

「ふっふっふ。心配ご無用」

 声が聞こえた。しかし姿は見当たらない。


「どこを見ているんですか?ここだ」

 天上を見ると、なんとニンジャが足袋のつま先で天井のティンバーフレームを足の指で挟み、両腕を組んだまま逆さづりになっていた。なぜニンジャと分かるかと言えば、そう言う格好をしているからだ。そのニンジャが降ってきた。

 頭ら急降下してきたが、空中で体勢を入れ換え、見事足で着地。驚いたことに、着地の際に音が全くしなかった。

「あ、あなたは……」

「そう。食材ハンターとはボクのこと」

 呆気にとられるエリカに対し、名乗ったのは食材ハンターという肩書というか自称だ。

「それでエミリオ、心配無用とは?」

 面倒なやり取りは避けてエオリアが早速本題を切り出した。


 鎖頭巾をしているにも関わらず、エミリオは名前を言い当てられたが慌てることなく事実を告げる。

「まもなくモルガナ達が来ることになっているが、カフェリーゼは3人パーティとして再編成した。ボク、モルガナ、アベルさんの三人だ。ボクが加わる以上、心配する必要はもはや皆無」

「カーターさんは?」

「何と彼は今年の有給をとっくの昔に使い切っており、合理的理由がないため欠勤の許可も下りなかったそうだ」

 エリカの質問に過不足なく事実を告げた直後、そこへちょうどいいタイミングでモルガナとアベルが入ってきた。


「あ、エミリオ、早かったね」

「むう!なぜボクだと?」

 さっきは正体を見破られてもスルーだったくせに。

 エリカたちは呆れてその様子を見ていた。


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