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第24話 神秘の触媒

「あんた、先日、モルガナと一緒にいたパーティメンバーだな?」

 ゴトリと頼んでもいない皿が目の前におかれ、その皿を持ってきたシェフが話しかけた。更には美味しそうに料理が盛り付けてあった。


「あ、ああ。そうだけど」

「これはモルガナからもらったレシピで作った料理だ。彼女が来たら振る舞うつもりだったが、パーティメンバーにもその資格がある。食ってくれ」

「い、いいのか。助かるぜ」

 その様子をエリカとヴェロニカがクスクス笑いながら見ている。皿を持ってきたシェフ、バーモンドがその様子を見て質問を重ねる。

「モルガナは普段何をしているんだ?」

「リゼの店でバイトしているよ。あ、知ってる?リゼの店」

「あ、ああ……。知ってるぜ……。元オーナーだからな」

「まさかリゼの元旦那とか言わねえでくれよ」

「あ、ああ……」


 あれ?

 エリカに視線を送るとあからさまにその視線を外された。ヴェロニカの方を見ると彼女はあらぬ方を見てこっちを見ようとしない。

「仮にそうだとしてもモルガナは何も知らんかっただろ。だってあいつは初めてギルドに入ったんだ」

「そうだな。そんなことは分かっている」

 とその時、少女が駆けこんできた。


「あ、シェフ。丁度良かった。あなたに用があったのよ」

 周囲に注意が向いていない。バーモンドを捕まえ、他の人には意識が向いていないようだ。

「実はわたし、リゼさんの店で働いているの。でも安心して。この間のレシピは私のオリジナルだから。元奥さんは一切関係していないから」

「ああ、だろうな。それのことだろ」

 アベルの皿をバーモンドが指差した。

「そう、これこれ。何よ、上手く出ているじゃないの。って、おい、アベル!」

「今気づいたのかよ」

 一同に笑いが起きた。


「まあ、みんな座ってくれ。客もいないし奢ってやろう。ただし料理と酒はお任せだ。まあ、つまりは残り物のアレンジとかだが期待して待ってていいぞ」

 バーモンドがそう言って厨房に引っこんでいった。

「初めまして。私は冒険者パーティ、赤煌のヴェロニカです」

「ご丁寧ありがとうございます。私は冒険者パーティ、カフェリゼのモルガナです」

「え?」

 アベルとエリカが同時に声を上げた。

 パーティ名はこうしてモルガナに勝手に決められてしまったが、多少はもじってカフェリーゼという名前で落ち着いたのだった。


「ンく…ん、ん……」

 ヴェロニカの肩がプルプル震えている。新たにパーティ登録も済ませたモルガナの登録証を見て辛うじて笑いをこらえているのだ。

 なにしろ白いカードは初めて見たし、ジョブランクもクラスも空欄というのも初めてだ。エリカが正式なカードだというのでそこは納得するしかないが、こんなのを持っているのは大陸でモルガナだけだろう。


「恥ずかしいから人には見せるなよ」

 アベルがモルガナにそう言ったのが耳に入ったところで爆ぜる寸前まで行き、なんとか踏みとどまったのだ。


「ヴェロニカさんて、なーんか失礼だよねー」

 自分が笑われているという自覚あんのかよ。

 ヴェロニカはごめんなさいと言いたかったがそれは言葉にならず、ぶへえっと下品な笑いになって爆ぜたのだった。

「ご、ごめんなさい、でも、あっはは、これは確かに」

 確かになんですか?


「まあでもこれでようやく形は整ってきたね」

 モルガナの言葉にアベルも頷く。


「後は実戦経験だな」

 そこでようやく笑いを抑えてヴェロニカが質問してきた。

「いまのカフェリーゼのパーティ構成は?」

「前衛二人に後衛二人。後衛の一人は非戦闘員だ」

 その言葉にチラッとヴェロニカの視線がモルガナに走る。目があった。

 ヤバイと目を逸らすヴェロニカ。

「そうそう。私も登録申込書にジョブクラス食事係りって書かれてあってわが目を疑ったわよ」


 食事係り?

 エリカの話す内容にクックックとヴェロニカの肩が震えた。

「いやいや、ごめんなさい。でも実戦の前に、やはり弱点はすでに明らかね。パーティ構成に改善の余地があるわ」

「中衛ですね?」

「そうよ、エリカ。栄養管理役もいいけど、治癒回復役が欲しいわね」

 悪意など微塵も無かったが、その言葉に一同の視線がモルガナに注がれる。そして一瞬の間をおいて笑いが起こった。


 ち、ちくしょう……。こ、この私が魔法のことで馬鹿にされる日がよもややってこようとは……。

 そこへバーモンドが料理をもってやってきた。

 さっきと違ってなんだか歩様がおかしい。

「バーモンドさん、どうしたんですか?」

「あ、いやちょっとな、ま、食べてくれ」

 そう言って厨房へと戻っていくと、後ろからモルガナがついてきた。


「どうした、モルガナ?」

「シェフ、太り過ぎよね」

「や、やかましい」

「膝、ほっとくと大変なことになるよ。みせて」


 ズボンの上からそっと触る。そして左の薬指の爪を掌に抱くように祈りを捧げた。ぽあっと患部が発光し、痛みが引いていく。

「おお……。モルガナ、お前のジョブクラスはプリーステスか。魔法使いの次に稀少なジョブだ。引く手数多なんだろうな」

「まさか」

 馬鹿にされたばっかなんだけど。そうは言わずに彼女はさりげなく手洗いを経由して席に戻るのだった。


 モルガナはウィザード系魔術式魔法のスペシャリストだが、プリースト系祈祷式魔法の知識も有している。専門職をはるかにしのぐ程度には。ちなみに彼女は僧侶が一般的に祈祷式魔法の触媒に使う魔物の化石や骨ではなく自分の指の爪を触媒に祈祷式魔法を使用する。


 魔女の爪は魔物の化石や骨などよりはるかに神秘の素材なのだ。


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