回想3
俺たちはしばらくその場に立ち尽くした。
遭難したときはあまり動かないほうがいいと聞いたことがあった。
ただ登山やキャンプの目的ではなかったので誰もが2月末の寒さに耐えられる様な準備をしていなかった。
再び話はじめたのは田口だった。
「よし、覚悟を決めよう。朝までここにじっとしているのは無理だ。だから二手に分かれよう。」
「どうしようって言うんだよ」
俺の問いかけに田口は迷わず答えた。
「比留間はあの紐を持って殆ど真っすぐに進んできたよな。
方向的には俺達の真後ろだ。
だからこのまま前に進めばいい。
紐自体の長さも大体200mくらいだと思う。
ただ、樹海は方向感覚がわからなくなるって聞いたことがある。
まっすぐ進んでるつもりが気が付いたら元居たところに戻ってくるなんてことがあるらしい。
だから俺は少しの間ここに残ってスマホのライトでここの位置を皆に知らせるよ。
50m程度進んだらみんなと合流する。
それを4回繰り返せばきっと道路に出られる」
いいアイデアだと思った。
だがその命綱となるスマホのバッテリーも残っているのは俺の3%と須藤の2%の残量だけだった。
須藤はスマホのライトを点けてを田口に渡し、俺たちは慎重にだが急いで移動した。
田口の位置を確認しながらできるだけ真っ直ぐに進んだつもりだった。
田口の位置が確認しづらくなってきたので俺達はそこに留まり田口を待とうとした。
その時田口側のライトが消えた。
直後に俺のライトも消えた。
俺たちは力の限り叫び田口に位置を知らせたり時には全員が耳を澄ませていたが田口がこちらに反応することはなかった。
すると須藤沙也加が
「大丈夫、私ライトの残像が残ってる」
と言って田口の方に歩き出した。
「離れちゃだめだ」
と声を出したが暗闇で足音が止まることはなかった。
更には友山も須藤を心配して追って行ってしまった。
暗闇の中俺と岡本は何もできずにいると、誰かの足音が近づいてくるのが分かった。
「ここだ、こっちだ」
俺は声をあげた。
誰かの手が俺の腕に当たり
「俺だ」
と田口の声が聞こえた。
俺はすぐさま須藤と友山は?と聞いたが会っていないと言った。
「須藤、友山!たぐっちゃんと合流したぞ!」
俺は力の限り叫んだが返事はなかった。




