疑心暗鬼
田口は歩きながら、俺の前に置かれたジョッキを見て、近くの店員に
「生1つ、そこの席に。」
と注文をし、俺に向き直り、
「久しぶり、元気だったか?」
と声をかけてきた。
「おぅ、たぐっちゃんも元気そうで!」
田口は苦笑いしながら、答えた。
「そうでもないよ、にしても何年振りだっけ?」
俺はその問いにすぐに答えず考えるふりをした。
「そうだな、確か4年ぶりだったかな、前回もここで。」
「もうそんなに経つか・・・」
その言葉を聞き、質問しておきながら分かっていたのだろうと俺は感じた。
それを証拠に4年ぶりの突然の誘いにも動じている様子はなかった。
「あのことか?」
田口はポツリと言った。
あのこととは沙也加が失踪したことだ。
よりによって閏日だったこともあり、この件に関わりがある者にとって閏日が来るたび思い出す出来事となった。
「あぁ、早いものであれから8年。未だに手掛かりがない。」
と言いながら田口の表情に注目したが特に変わった反応はなかった。
「比留間が責任感じることないよ、仕方なかったんだ。誰も悪くない。」
田口も自分に言い聞かせるような何か含みを持たせる様にに言った。
「気を悪くしないでほしいんだけど、たぐっちゃんってなんとなく思っていたんだけど友山のこと好きだった?」
この質問にもさほど慌てる様子はなく
「岩井に聞いたんだろ。」
「いや、誰かに聞いたとかじゃ・・・」
「いいんだ、確かに俺は友山に一度告白したけどフラれた。それとあの事件は全く関係ない」
「いや、わかってる、けど何かほんとに小さな事が繋がってる気がするんだ」
少しヒートアップしかけたころ、店員が生ビールを持ってきた。
田口は再び話始めた。
「友山はお前が好きだってよ。そういってフラれたんだ。」
岩井には
『好きな人がいるからごめん』
って言ってたって聞いたが友山はホントは俺の名前をだしていたのか?
いや、友山の性格からして岩井の話が友山らしいと思えた。
そのあとは、二人とも酒が入り他愛もない話を少しして別れた。
それにしても友山の話が出てきた時の田口はいつになく感情的だった。
本当になんとなくそう感じた可能性、友山本人から聞いた可能性、須藤から聞いた可能性がある
のにも関わらず
『岩井から聞いたんだろ』
と決めつけたことに違和感を感じた。
もしかして田口と岩井はつながっているのか?
そしてノートを送ったのはいったい誰だ。
頭の中でかつての友達を疑う罪悪感と闘いながら色んな出来事が駆け巡った。
気が付いたら俺はタクシーに乗り込み、行き先を8年前の現場に指定していた。




