ライパチくん
『「ライパチくん」
今日私は晴れて野球部のマネージャーになった。
陽介は早速レギュラー候補らしいよ。
8番ライト。
うちの学校は結構強いほうだから1年生でレギュラーってだけでメチャクチャすごいんだってさ。
8番ライトのことをネットで調べたら「ライパチくん」って出てきた。
なんか可愛いね。
その話を陽介に話したらあんまり嬉しそうじゃなかった。
ちょっと馬鹿にした言い方だからほかの人には言わない方がいいよだって。』
ノートの最後のほう、問題の
「苦し紛れの嘘」
のページを開き、そのひとつ前に書いていた内容に目を通した。
『「卒業まであと2か月」
3年間一緒だったこのクラスとのお別れまであと2か月。
ほんとに楽しい日々だったね。
比留間君とは結局結ばれることはなかった。
でもそれでよかった。
比留間君の邪魔したくなかったし。
比留間君はすごいね。
夢に向かって一歩ずつ進んでる。
独立リーグでの活躍楽しみにしてるね!』
卒業まであと2か月ということは大体1月終わり頃から2月のはじめ頃。
沙也加が失踪したのが2月29日。
その間に問題の
「苦し紛れの嘘」
は書かれた。
電車の揺れで膝の上のノートが傾いた。
すると光のあたり加減で紙の凸凹が表れた。
もしかすると一度別の紙に書いてからこのノートに清書していたんじゃないか?
鼓動が早まるのが分かった。
今すぐ確かめたかった。
リュックの奥の方に手を入れると指先に金属の冷たい感触が伝わってきた。
それを取り出しふたを開け1本の鉛筆を取り出した。
鉛筆を斜めに持ち、薄くノートを塗りつぶす。
浮かび上がった文字を読み終えるとそのノートを封筒に入れ、リュックにしまった。




