同じ場所
ここが8年前と全く同じ場所と確信したのは、道路と樹海の境に古いタイヤを見つけたからだ。
8年前、樹海に入るときに岡本がタイヤに足を取られて転んでいたのを思い出した。
そのタイヤに紐を巻き付けて俺たちは中へと入っていった。
今回も俺は途中コンビニで、ビニール紐を買ってきた。
ただ、あの時と違うのは、外はすでに暗闇なので小さな懐中電灯も一緒に買った。
俺は刑事ドラマなどで見た懐中電灯を口にくわえて手元を照らすシーンを思い浮かべ、同じようにしてタイヤに紐を巻き付けた。
そのまま俺は残りの紐をもって奥へと進んだ。
あの時の手掛かりになるようなものが落ちていないか慎重に辺りを見回した。
「流石に風化してるか・・・」
きっと俺たち以外の誰かがあの時のビニールひもを途中で切ってこの辺に捨てたんじゃないかと考えていたが収穫はなかった。
10mほど進んだところでスマホの地図アプリを開いた。
ここではまだ進む方向が狂うことなく動いていたし電波も立っていた。
さらに100mほど進んだだろうか。
多分、須藤と友山2人と別れたのもこの辺だろうと思った。
須藤は田口の方に歩き出し、友山も須藤を追って行ってしまった。
俺はあの時を再現するためにライトを消して辺りを暗闇にした。
そこで初めて誰かの息遣いが一瞬変わるのを感じた。
誰かが近くにいると感じた。
距離にして20mほど離れて後をつけていたようだ。
俺の点灯していたライトを頼りに歩いてきたのだろう。
声をあげたい気持ちを抑え、足音を立てないように今まで進んでいた方向からななめ後ろ方向に10mほど進んで身を潜めた。
時間にして10分ほど経っただろうか。
俺をつけて来た誰かが動き出すのが分かった。
そして明かりが点いた。
一瞬の光がその人物の顔を照らした。
間違いなく田口だった。
田口は俺のすぐ横まで来ていた。
俺は背後から飛びつき田口を羽交い絞めにした。
「ギャー!!」
「俺だよ、比留間だよ」
「あぁ、なんだ比留間か、びっくりさせんなよ。」
「なんだじゃねぇよ。なんでお前がいるんだよ!」
「心配だったんだよお前が」
「嘘つくなよ。お前何か知ってるんだろ?」
「知らねぇよ。とにかく落ち着け」
怒鳴りあいながらの取っ組み合いの状態になっていたところに新たな光が見えた。
「比留間君落ち着いて」
ごく最近に聞き覚えのある声だ。
岩井だった。
「岩井までどうしたんだよ」
「実はたぐっちゃんから、比留間君が今晩ヤバいかもって聞いて私戻ってきたの」
そこまで聞いて俺は田口を羽交い絞めにしていた手を完全に緩めた。




