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第38話 キグナス視点

反抗勢力は無事に調査部隊を退けただろうか。

敵であるにも関わらず、つい応援するような気持ちが湧いてしまうことに自嘲してしまう。

退屈な日々というのは恐ろしいものだな。

いつか自らの策略を駆使して、完膚なきまでに叩きのめすことをついつい夢見てしまうのだ。


今日も今日とて玉座に座り、つまらぬ報告を受けていると、呪術師のカーズがやかましく入室してきた。

慌てた様子を見るに、調査部隊が返り討ちにあったのかと想像し気分が高揚した。


「キグナス、大変なことが起きたぞ!西部に広がる大樹海へ逃れたのを追跡するという報告を最後に、調査部隊の魔法使いと遠距離念話の魔法が繋がらなくなってしまった。」

唾を飛ばしながら騒ぎ立てる醜い姿に辟易する。


しかし、大樹海か…。

情報では竜種と呼ばれるドラゴンのまとめ役が支配する地域だな。竜種は他の魔界の部族とは一線を画す強者であり、魔界の者も大樹海には基本的に近づかないらしい。

つまるところ、魔界の住人と竜種は協力関係にはなく、お互い干渉しない状態を維持してきたのだろう。


では、反抗勢力は何故大樹海に入ったのか。


一番可能性が高いのは、助力を求めに敢えて危険な地に足を踏み入れたという説だな。

もともと魔界の住人ではあるのだから、このような外界からの危機が迫っている状況なら手を組むことができると考えてもおかしくはない。


他に考えられるのは、大樹海に身を潜めながら、敵の本拠地であるこの宮殿を目指していたという説。戦力差を考えれば、そのような愚策をとるとは考えにくいが、辺境の地で反乱が起こったことを考えると、我々の戦力を軽く見ている可能性も捨てきれない。情報弱者でありながら、実際に魔法使いや剣士のタレント持ちを倒した実績があり過剰な自信を得ているかもしれない。。


それ意外だと、大樹海を抜けた地に逃げ延びるという説。我々が追手を差し向けようとも、大樹海の竜種が防波堤の役割を果たしてくれると考えれば、あながち悪くない一手だが、その程度で満足する輩だとすれば興ざめもいいところだ。


個人的には知恵者がいて、大樹海に我々が討伐部隊を差し向けるように誘導し、竜種の怒りを買わせて、なし崩し的に竜種を戦争に巻き込むという作戦を考えているなら最高だな。

どうせなら力で制圧するより、頭脳戦を楽しみたいものだ。


「なかなかやるではないか。連れて行った森人は、森での戦闘に特化していたのだろう?にもかかわらず森で返り討ちに遭ったとするならば、余程の戦力差があるのか、かなりの策士がいるのか。いや、竜種の介入があった可能性もあるか。」

「何を楽しそうにしておるのだ!危機が迫っておるのだぞ。防衛策を立てるのか、大部隊を差し向けるのか決断せんか。」


小心者の浅知恵ジジイが、この俺に命令だと…。

あまりのことに一瞬思考が止まってしまった。

今すぐ消してやりたいという欲求を自制した自分を褒めてやりたい。


「随分偉そうじゃないか。自分では最善手がわからないから頼りに来たのであろう?頼む側の姿勢というものが理解できていないのか?」

からかうように諭してやると、カーズは身を震わせ怒りを隠そうともしない。

この愚かさが逆に面白く見えてきた。


「お前なら、どう決断するのだ?」

どのような策を考えているのか興味がわき、試しに聞いてみた。

「これ以上勢力を拡大する前に討伐すべきだ。大部隊を編成して向かわせるのはどうだ。」

敵の場所も明確になっていないのにか?やはり深く考えることができないのだな。

大部隊をあてもなく行軍させる時点で愚策だが、その間の兵糧の問題など考えてもいないのだろう。


「敵の居場所がわかっているのか?」

「敵は大樹海に潜んでいる可能性が高いのだ。そこに向かわせるしかあるまい。」

「しかし、大樹海は竜種と呼ばれる強者の支配地と聞くが、寝た子を起こすようなことにならないか?」

「敵が大樹海に入っているのだから問題はないのだろう。」

小心者のクセに大雑把な作戦を考えるものだ。

いっそ大失敗を経験させて、身の程を弁えさせるか。


「ならば、やってみるがいい。討伐についてはカーズに一任する。」

「おい、作戦立案は賢者の役目だろう!」

「なんだ、自信がないのか?」

怒りに震える様は、今にも血管が切れそうだな。

そのまま死んでもらっても一向に構わんが。


「ふざけるな、見事に討伐して賢者など不要だと証明してやる!」

そう叫ぶと、カーズは玉座の間を後にした。

証明することになるのは、お前の無能さになるだろうがな。


どんなピエロを演じてくれるのか楽しみだ。


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