第36話 世界の真実①
「おい、先ほど進化させてもらったと言っていたが、誰に進化の恩恵を受けたのだ?」
竜種の青年は偉そうにラーテルさんに話しかけているけど、距離感も近いし感じ悪い…。
ラーテルさんも答えていいものか困っているようで、押し黙ってしまいました。
竜種に問い詰められて怖いはずなのに、私の身を案じて答えられないんだと思うと、ダルクさんの後ろに隠れているのはダメだと思いました。
もう自分から名乗り出ようと思って一歩を踏み出そうとしたら、青年が声質を少し柔らかくして言葉を続けました。
「この中に偉大なる龍人族の祖と同様の力をもつ者がいるのだろう?害する気はない、正直に答えろ。」
今、同様の力って言ったよね!?
この謎の声や進化について知っている人がいたことに驚くとともに、教えてほしいという気持ちが抑えられなくなりました。
「私です!」
思わず大きい声になっちゃったけど、私はラーテルさんと龍人族の青年との間に体を滑り込ませ、ラーテルさんと青年の距離を広げました。
私だって仲間を守れるんだからね。
「このチビが?お前、嘘をついていたら殺すぞ。」
正直に名乗り出たのに、疑われた上に脅されているんだけど…。
しかも、チビって言った!
気にしていることを…許さないんだからね。
「嘘なんかついてないよ!それにチビって言ったこと謝ってよね!羽だってこんなに大きくできるんだからね!」
私は羽を最大まで大きくして見せつけてやりました。
勢いで言ってしまったけど、みんなのハラハラしている顔に気づいて言い過ぎてしまったことを自覚しました。
私、殺されないよね?
「ほう、確かにこの羽からは強い魔力を感じるな。次代の魔王に対して失礼な言動があったことは謝罪しよう。」
そう言って、青年はわずかに頭を下げました。
謝罪ってそれだけですか…。不遜を絵に描いたような人だと思いました。
「あの、私はオルフィーという名前なんですけど、お名前を教えてください。」
「いいだろう。我が名はグノーシスだ。」
偉そうだけど、話はできそうでちょっと安心しました。
「すいません、教えてほしいことがたくさんあるんですけど、聞いてもいいですか?」
「教えてやらんこともないが、その前にこちらの質問に答えよ。次代の魔王が存在しているということは、現状異界の侵略を受けているのか?」
異界の侵略?人間のことでいいのかな?
「2年前にゲートの封印を破って人間が攻めてきて、今のところ魔界の同胞は奴隷のような酷い扱いを受けていますけど、そのことですか?」
半信半疑で答えてみたら、グノーシスさんはなんか納得したみたい。
「保留の決断をしたという人間界との争いが再燃したのだな。まぁ、あのような逃げの一手を黙認するはずもないか。」
なんか一人だけ理解した感じだしちゃってズルくない?
「すいません、何のことか全然わからないので教えてください。」
私の懇願に対して、グノーシスさんは不快な顔を隠そうともせず溜息をもらしました。
「偉大なる龍人族の祖エスターブ様が多大なる犠牲を払い手にした知識を受け継いでいないとは、なんと愚かなのだ。」
完全に私たちを見下してますよね?
まぁ、教わる側だから我慢するけど、友達いないタイプでしょ?
「一度しか言わんから、よく聞いておけ。」
そう切り出し、グノーシスさんの長いけど重要な世界の真実に関する話が始まりました。
グノーシスさんの話では、世界は絶えず生み出されているらしいです。
それをそのままにしていくと限界がくるみたいで、それを防ぐために世界の管理をしている絶対的な存在がいるとのこと。
その存在が世界の数を管理するために、世界の淘汰を進めているんだけど、その方法が世界同士を繋いで争わせて、負けた方の世界を消滅させるという残酷なものだそうです。
遙か昔に、魔界も別の世界と繋がって侵略を受けたことがあり、そのときに魔界を守るために戦ってくれたのが、私たちの知る初代魔王にして龍人族の祖エスターブ様だったみたい。
異界との戦争に勝利したときに、エスターブ様は世界の管理を司る存在と対話する機会が得られて、世界の真実を知ることが出来たんだって。
その知識は、龍人族の間では大切に受け継がれてきたみたいだけど、代々魔界を統治する者(初代以降の魔王様のことだと思う)も受け継ぐことになっていたのに、ちゃんと伝わっていないことにグノーシスさんはご立腹のようです。
最初の侵略のときに戦場になった大樹海の向こう側の大地は、今も不浄の土地として荒れ果てているんだって。
たくさんの犠牲者をだし、大切な仲間を失ってつかみ取った魔界の存続だったのに、統治者の座を争って部族間の抗争が絶えない魔界の住人の愚かさに絶望して、エスターブ様は他の部族との関係を断って大樹海に引きこもっちゃったみたい。
あとは勝手にやれって感じかな…。




