第32話 進化と条件①
進化きた!
今回の戦闘でもギリギリな状態だったから、少しでも戦力が上がるのが嬉しいよ。
でも呪塊って何だろうと思ったけど、すぐに黒い水晶のことだと気づきました。
そういう名前があったんだね。
個数やタイミングからみて間違いないでしょう。
今まで『ミッション』というのを達成すると進化できてたから、ちょっと振り返ってみようかな。
まず、『町の開放』でしょ。あとは『同胞の解放』、『呪塊の破壊』、それに『ミッション達成総数』というのが私の進化に影響あるっぽい。
こうやって振り返ってみると、人間に支配された町を取り返して、同胞を解放しながら呪塊を壊していけば、私たち魔界の勢力はどんどんパワーアップしていけるのでは。
あと、『条件を満たしていません』というのはどういうことだろう?
私一人で考えていても答えが出なさそうだし、とりあえず進化を実行してから相談してみようかな。
全員がここに集まっている訳ではないけど、とりあえず『ラーテル』という人を確認するところからだね。
「あの、この中にラーテルさんはいますか?」
私の呼びかけに、先ほどの森人代表のお姉さんが手を挙げました。
「私がラーテルです。でも、どうして私の名前をご存じなのですか?」
それは疑問に思うよね…。
「えっとですね、ラーテルさんは進化できる状態なの。進化できる人の名前はわかるというか…。」
私が困っているのをみて、ダルクさんが代わりに説明してくれました。
もう慣れたもんだよね。
また『次代の魔王』とか『魔界の救世主』とか言ってるけど、もう気にしないことにします。
私がそれを否定していたら、士気も下がるんじゃないかって思うしね。
説明を聞きながら、森人さんたちが「おー!」とか「凄い!」とか騒いでいるのも気にしない。本当は気になるけどね…。
一通り説明が終わったところで、改めてラーテルさんに選択してもらおうと思います。
「それでね、ラーテルさんは、森人のオリジンかニンフを選べます。オリジンというのは、たぶんだけど昔はもっていた力をとり戻した森人という感じだと思います。ニンフは私はわからないんだけど…。」
最後はゴニョゴニョっとしちゃいました。だって知らないんだもん。
「ニンフとは大樹海に住まわれる精霊様の名前ですね。植物の精霊であるドライアードはそれなりに個体数もいるようですが、ニンフ様は何百年も前から姿を見た者はおりません。かつては、大樹海に迷い込みそうになると危険を知らせて帰るように促してくれたと森人の伝承に残っています。」
ラーテルさんが知っててよかったよ。
でも、一回目の進化から伝承に残るような存在に進化可能って凄くない?
大樹海の中だからとかって影響あったりするのかな。
「なんかニンフが凄そうですね。でも、どっちを選んでもいいですよ。」
強制はしたくないんだよね。種族が変わるのに私みたいに抵抗を感じるかもしれないし。
「ではニンフでお願いします。少しでも強くなれる可能性が高いほうを選ばせてください。」
ラーテルさんが迷いない瞳で決断しました。
私は魔界の一大事にまだ種族に拘っていることが、だんだん恥ずかしく思えてきました。
次に私自身が進化するときは、本当にみんなのためになるほうを選ぼうと思います。
「わかりました。ラーテルさんはニンフになります。」
(ラーテルの進化先が確定しました)
頭に直接声が響くと、ラーテルさんが繭に包まれ、そして繭が優しい緑色の光に包まれ弾けて消えました。
ニンフとなったラーテルさんは、耳が私と森人さんの中間くらいの長さに変わったのと、瞳の色が若草色になっていました。お顔はもともと整っていたので大きな変化はないように感じたけど、なんかラーテルさんの周りだけ薄ら霧がかかっている感じで幻想的でした。
「どうですか?強くなれましたか?」
ニンフになったことで、何ができるようになったのか気になって尋ねてみました。
「そうですね、不思議な感じです。大地や陽の光から魔力が急速に体内に溜まっていっているところです。試してみないとわかりませんが、水や光を利用した魔法が扱えそうです。
あとは、近くにいる者の気持ちを和らげ好意的にするオーラのようなものを常に放っているかもしれません。」
説明されると、確かに気持ちが穏やかになっているような気がする。それに、ちょっと恥ずかしいけど甘えてみたくなっちゃうんだよね。
なんか、お母さんみたいなんだもん。
「魔法が使えるのはありがたいわ。私も闇魔法に慣れてきて理解したけど、あるとないとじゃ戦力差は歴然よ。それに、私たちは人間みたいに長い呪文を必要としていないのも大きいわね。」
リタ姉ちゃんの言葉にダルクさんとフィズさんが頷いていました。




