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第30話 追手⑤

(リタ視点)

影に潜み、影を伝って移動していく。

初めて試したときは、その不思議な感覚に自分が失われたような不安を感じたものね。

真っ暗で果てのないような空間に自分という存在があることはイメージできるけど、肉体の感覚がないから、猛烈な不安感に押しつぶされそうになるのだ。


影移動は、影と同一化し影が繋がっているところへ高速で移動できる能力だ。

真っ暗な空間では外の世界の様子はわからないけど、空間の天井にあたる面には影だけが映りこんでいて、それは遙か先まで続いている。

今の状況は、太陽が昇っているうえに森の中という、全ての影が繋がっているような状態。

つまり、私が知覚できる範囲であれば何処の影からでも外界に姿を現すことができる。

そう、まるで瞬間移動のような強力なスキルである。


私は映り込む影のうち顕著な移動が見られるものを検知し予想を立てていく。

真っ直ぐに突き進む2つの影はダルクとフィズだろう。

その先には3人の影がある。

全てタレント持ちだとすると2対3は不利だから、ここに姿を現してあげたいとは思う。

だけど、その更に奥地に戦場から離れていく影が一つあることに気づいてしまった。

密偵か何かだろうか?


私たち反抗勢力の存在は敵に知られてしまったようだけど、オルフィーの能力や隷属紋を解除する方法は敵側に知られていないはず。

もし、知られてしまったら、オルフィーは真っ先に敵に狙われるようになりそうね。

そんな状況をつくることは避けたい。

ダルクとフィズには申し訳ないけど、すぐに援軍がくるので自力で何とかしてもらうしかないか。


密偵の影が、密偵の背後に映るときに外に出て奇襲しようとタイミングを見計らっていると、森に異変が起きていることに気づいた。

これは木々が動いているの?

私たちのいる辺りを中心に大きく渦を巻くように影が壮大なスケールでゆっくりと回転している様は、北の一番星を眺め続けたときの他の星々の動きのようだわ。


これでは、真っ直ぐ走っているつもりでも、いつの間にか少しずつ軌道を曲げられてしまうのではないだろうか。

侵入者を惑わすために、大樹海が自ら意思をもって動いているなんてことがあるのだろうか?

昔から大樹海の奥地に踏み入った者は帰ってこられないと言われているし、ないとも言い切れないけど…。

もしも、ドレミーがやっているのなら、エルダードライアードというのは森そのものを動かすほどの力があるということになる。

あのポヤっとした癒やし顔で強大な力をもっているとしたら、なんか面白いわね。


そのとき、密偵と覚しき影が移動を止めた。そして木の枝に飛び移りながら上を目指しているよう動きをする。

これは、森の異変に気づいたのかもしれないわね。

思うように戦場を離脱できていないのだから、焦り出す頃でしょう。


敵が森の異変の正体に気づく前に、こちらも仕掛けるとしよう。

私は敵の背後をとるように、別の太い枝に映る木々の影から姿を現した。

完全に出きるまで行動できず1秒ほど要するのが弱点なのだけど、その1秒で気配を感づかれたのか敵が振り返った。

黒い布製の服を着た男だったが、この勘の良さといい何かしらのタレント持ちとみていいのでしょうね。

敵も意表をつかれたのか一瞬動きが止まってくれたので、完全に外界に姿を出すことができた。

お互い相手の力量がわからず、睨み合う展開となったので、恐怖の魔眼を試す。

恐怖に呑み込まれそうになった瞬間、視線を逸らし何か刃物のような物を私のほうに投げつけながら、枝から飛び降りた。

当てずっぽうで投げられた刃物は私ではなく、すぐ横の木の幹に突き刺さったが、ただ者ではないことはよくわかった。

私は警戒しながら後を追うように枝から飛び降りた。


先に地面に綺麗に降り立った男は、すぐに刀のような武器を構え、降りてくる私を切りつけようと身構えている。

だけど、先手をとるのは私のほうよ。


「シャドウ・ランス」


男の影から黒い氷柱のような魔力塊が勢いよく迫り出し、敵を貫こうとする。

闇魔法の使い方はだいぶ掴めている。

この魔法は初見殺しもいいところでしょう。


終わったと思ったのに、男は寸前で体を捻り魔力塊を躱した。

完全には躱せず、脇腹に突き刺さったので動きは止まったけど。

男は苦悶の表情を浮かべつつ、先ほどと同じような刃物を投げてきた。

苦し紛れだったのか、私の斜め後方の地面に突き刺さったけどね。


止めを刺そうとすると、私は自分の体が動かせないことに気づいた。

男は脂汗をたらしながらニヤリを笑った。

「化け物といえども、影縛りは効くようだな。」

見れば、地面に刺さった刃物は私の頭部の影を捉えていた。


勝ったと思っているのでしょうね。自ら種明かししてくれるなんて、舐められたものだわ。

敵が魔力塊から体を引き抜く間に、私は空気中に魔力を全開に放出する。

魔力は黒い靄となり、辺りを太陽光すら通さない真なる闇に包んでいく。

影は闇に溶け、私は体の自由を取り戻した。


私には、生命力を視覚的に捉える能力があるから相手の位置がわかるけど、お前はどうかしら?

逃走を図る様子から、こちらを捉えることはできていないと理解した。

まぁ、逃がさないけどね。


「ダーク・バインド」


闇の中にいる者に対して、体の自由を奪う魔法だ。

動きを止めた男に歩み寄り、私は首筋に牙を立てた。

正直、果物やスープでは満たされない体になってしまっているのよね。


私は久しぶりのご馳走に衝動が抑えられず、相手が干からびるまで吸い上げてやった。


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