表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/40

第28話 追手③

(ダルク視点)

フィズを後ろに庇うように、矢が放たれたと思われる方向に疾走する。

あの矢は危険すぎる。

光のようなものを纏っていたことから、魔法使いによる何かしらの付与が為されていたのだろう。でなければ、あの貫通力の説明がつかない。

それに、あの軌道の正確性。これもタレントによる力なのだろうな。

一刻も早く、討ち取らねばならない。それがお嬢ちゃんを守るために俺がすべきことだと腹をくくった。


お嬢ちゃんは命を繋ぎ止めただろうか。

鱗粉の奇跡的な癒やしの力を疑うつもりはないが、腹部を貫通されたのだ。

対応が遅れれば、手遅れと言うことも起こりえる。

側にいて守ってやりたいが、力に見合った役割を放棄することはできない。


定期的に矢が射かけられるが、森人程度の力で放たれた矢は纏った闘気を貫くこともできず、弾かれるように地に落ちていく。

時折、速く正確な矢が急所をめがけて飛んでくるが、光を纏っていないものは闘気の障壁を出して相殺できた。


一度だけ光を纏う矢が飛来したときは、障壁を破壊する一瞬の間に体を捻り急所は外した。

それでも纏った闘気すら貫通し、左肩に深々と刺さってしまったが、毒のようなものは塗られていなかったのは幸いだった。


「ダルク殿、大丈夫ですか!?」

後ろからフィズが声をかけてきた。

「問題ない、右肩が無事なら刀を振るうことはできる。接敵したら俺は弓使いを討つが、魔法使いはフィズに任せるぞ。」

「任されました!」

フィズの迷いない了承の言葉が響く。


その直後、ついに敵影を確認した。

大木の枝の上に弓をもった人間が一人、木の根元に杖をもった魔法使いと思われる者と、その前に金属製の小手と具足を身につけた者。


もう一人いたのか…。

連携されればフィズでは厳しいかもしれないが、やってもらうしかない。

先ほどから森人の矢に狙われなくなったのは、お嬢ちゃんが頑張ってくれたのだろう。

そうならば、犬人族は勿論のこと、森人も味方として駆けつけてくれるだろう

「フィズ、粘れば援軍が来るはずだ。死ぬなよ!」

「こんなところで逝く気はありませんので、私より御身の心配を。」

皮肉交じりの返答に笑いが漏れる。

では、心置きなく主君の腹に風穴を開けた不届き者を討ち取ろうぞ!


俺は他には目もくれず、弓使いへ向けて疾駆すると、奴は枝を渡るように高さの優位を守りながら奥地へ移動していく。

逃がすものか!

闘気の障壁を大地と水平に展開させながら、それを足場に階段を駆け上がるように追いかける。

タレント持ちの猛者とはいえ、空中さえも直進してくる俺とでは、移動速度に格段の差がある。


距離を詰められていくことを気配で感じとったのだろう、覚悟を決めたのか振り返って弓に矢を番えた。

そして、その矢は光を纏っているものだった。

しかし、人間の目からは恐怖の感情がありありと見て取れる。

鬼神族も弓を扱う部族だからわかるが、恐怖に身が竦んでいては、正確に狙いを定められるものではない。

それでも至近距離であり、避けるのは不可能だ。障壁も足場に展開しているため正面にまわせない。

ならば、斬るしかないのであろうな。


俺は体に纏っていた闘気を解除し、刀に闘気を込めた。

矢を凝視し、神経を集中し、思考を介さず目と手を直結させるように。


「この化け物が!」

罵る言葉とともに、矢が放たれた。


過集中状態にあり、一瞬であるはずの矢の飛来がスローモーションのように感じられる。

それを迎撃しようと動く自分の右腕さえもスローであった。

刀は矢尻を捉えるには遅すぎたが、矢が体を穿つ前に矢羽根を切り落とすことに成功した。

大きく軌道を逸らした矢は俺の右太腿を貫通し、バランスが崩れる。


もう敵は目の前なのだ、ここで足を止める訳にはいかない。

前方に最後の障壁を展開し、左足を全力で踏み込んで跳ぶ。

人間が慌てて矢を番えようとする姿に、相手が正常な判断力を失っていることを確信した。

この足では次の一歩はだせないのだから、後ろに跳べばよかったのにな。

その矢を放つ前に俺の刀が届くぞ。


次の瞬間、闘気を纏った刀が、敵の首を切り落とした。


勝つには勝ったが、ひどい状態だ…。

小袋を取り出し、鱗粉で傷を塞ぐが、貫通した太腿は痛みがとれず思うように動かせない。


皆、無事でいてくれよ…。

そう願いながら、俺は足を引き摺りフィズのもとへ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ