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第27話 追手②

森人の弓の射程を予想して、ギリギリまで引きつける何とももどかしい時間が流れます。

犬人族の鼻を頼りに、およその距離や配置、人数が次々と報告されていき、私では処理が追いつかないです。


「えっと、『今です!』みたいに言ってくれれば、パウダーブリーズを発動するね。」

そう言って羽を目一杯大きくして準備するけど、なんか惨めな気分になりました。

だって、みんなが苦笑いしているんだもん。


そんな緩んだ空気を切り裂くように、私に向かって光を纏った一本の矢が、木々の隙間を縫うように迫ってきました。

私は恐怖に身が竦んで一歩も動けない状態で、死すら覚悟したとき、私の後方にいたダルクさんが前に出ながら手をかざすと、私の前に透明なガラスのような何かが広がりました。

それに着弾した矢は一瞬止まったように見えたけど、パリンと弾けるような音がして透明な何かが弾け飛んでしまったのです。

矢はそのまま私の腹部を貫通して後方の大木に突き刺さって止まりました。


あまりの激痛に声も出ず、涙で視界がぼやけていきます。

それを開戦の合図に、めまぐるしく状況が動いていきます。

ドレミーがいつの間にか大人サイズに戻っていて、私の横で地面に手をつくと、矢から私を守るように頑丈そうな木々が急速に大地からせり出してきました。


「キエム、オルフィーを死守しなさい!」

リタ姉ちゃんの命令の叫びが響き、キエムが『2m以内に入ることを許してくださいね』といって私の側で警戒態勢をとります。

リタ姉ちゃんは、渡してあった鱗粉の小袋の中身を全て私の傷口にぶちまけて塗り込んできます。

乱暴で凄く痛かったけど、リタ姉ちゃんの顔にいつもの余裕がなかったから、それだけ心配してくれているんだと思えて悲鳴はあげずに済みました。


フィズさんの号令で、犬人族のみんなが森人の迎撃に動き出し、ダルクさんの指示で鬼神族のみんながここの守備に残りました。

指示を終えたダルクさんとフィズさんは敵将の首を獲ると言い残し、森の中に消えました。


このままじゃ、犬人族も森人もたくさん死んじゃう。

もしかしたら、ダルクさんやフィズさんも死んじゃうかもしれない。


やらなきゃ!

鱗粉で傷口は塞がったもの。痛いけど、そんなの気にしている場合じゃないし。

「キエム、私の前に!」

そう指示して木々の壁から抜け出し、私は羽を大きく悠然と動かし、風を作り出します。

飛んでくる矢もあったけど、キエムが剣で弾いたり、その身で受けとめたりして血飛沫が私にもかかりました。

周りでも、鬼神族のみんなが盾や剣で飛来する矢に対処しているけど、悲鳴もあがっている。

もう少し耐えてね…。

所持していた小袋の鱗粉も風に流し込み、私は鱗粉を大量に含んだ風を広域に森へ送り出しました。

よくわかったよ。実践では必殺技の名前なんて言ってる余裕ないんだね。


風が放たれると、矢の雨がパタリと止んでいきました。

たぶん、ほとんどの森人は支配を逃れたはず。


続いて、つむじ風を起こし、周辺の鬼神族やキエムの怪我を治していきます。

完治とまではいかないけど、出血が止まれば死ぬことはないよね。

そこまでやると、思い出したように腹部の痛みが襲いかかり、その場に膝をついてしまいます。

「オルフィー、よく頑張ったわね。あとは任せなさい。キエム、ここは任せたわよ!」

そういうと、リタ姉ちゃんは木の陰に沈みこむようにして姿が見えなくなってしまいました。


「結構、根性あったんですね。」

ポツリとキエムが私に言った言葉が、認められたようで嬉しかった。

なんか逆だよね。

私がキエムを認める日がいつか来るんだろうと思っていたのにさ。


「オルフィー、大丈夫ノ?」

大人サイズのドレミーが不安そうに私を抱きしめてくれました。

これも逆なんだけどなぁ、でも心地いいね。抱きしめられるのって。


「私たちの情報、敵に知られちゃうかな?」

こんな混戦になったんだし、攻めてきた人間の人数はわからないけど、一人くらいは討ち漏らしてしまいそう。

「どうですかね。人間が3人までなら大丈夫じゃないですか?リタ様やダルクとフィズも私なんかより強いですからね。」

「そうだね、人間が少ないことを祈るよ。」


不安を払拭できずにいると、ドレミーが立ちあがりました。

「ドレミーにお任せなノ。誰も逃がさないノ。」

そう言うと、ドレミーは地面に手をつき、ウンウン唸り始めました。

「ドレミー何をしているの?」

「森を迷路に変えているノ。」

そんなことができるの!?

私はエルダードライアードの能力を甘くみていたようです。

「フォレスト☆ラビリンスなノ。」

必殺技の名前!

違和感なく言えてるし…。ドレミーにちょっと嫉妬しちゃいます。


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