第26話 追手①
鬼神族の合流を待つ間も、各自新しく得た能力をフルで活用できるように研鑽に励みました。
私はというと、鱗粉を乗せた風を操る能力に『パウダーウィンド』と命名しちゃいました。
やっぱり名前があったほうが必殺技っぽくて格好いいしね。
風の操作にも慣れていき、突風のように放ったり、広くそよ風のように吹かしたりとバリエーションが増えてます。
なんか、まだ気づけていない能力がありそうなんだけどなぁ…。
なにせ『女王』ですからね。
私の羽に込められた何かがあると直感が働いているのだけど、どうにもわからないのが悔しいんだよね。
いろいろ試行錯誤しているうちに、鬼神族のみんなも合流し、いよいよ明日はバオーの町を旅立つことになります。
直線的に魔王の宮殿を目指すと、すぐに人間側に気づかれそうなので、大樹海の縁に身を隠しながら北上し、できるだけ宮殿に近い地域まで行こうという作戦です。
350人以上での移動なので、平地を進めば目につくもんね。
ちなみに大樹海というのは、魔界の西部に広がる超巨大な森なのですが、昔から奥地まで踏み入った者は帰ってこないことで有名な危険な森です。
縁の辺りなら採取等で立ち入る者もいるので、特に危険はないみたい。
この森があるせいで、大地がどこまで続いているのかわからないのです。
海路で迂回しようにも、海には危険な海竜が住んでいて遠洋まで出られないし、飛行可能な部族も大樹海上空は飛龍の縄張りだから越えられないんだって。
いっそ、飛龍さんたちが人間たちを滅ぼしてくれたらいいのに…。
翌日、予定通りバオーの町を出発した私たちは、昼は犬人族の鼻の良さを活かして偵察してもらい、夜はリタ姉ちゃんの使い魔コウモリさんに警戒してもらいながら、辺境地域を北上していきました。
3日後に何事もなく大樹海に到着したときは、緊張の糸が切れてへたり込んじゃったよ。
飛んで移動したほうが楽なんだけど、鱗粉を小袋に貯める作業は継続しているからね。
大樹海を進みながら何度目かの夜営を終えて、慌ただしく出発の準備をしていると、犬人族の男性が全速力で私たちのところに走ってきました。
「緊急報告です。我々を追跡してきている一団がいるとのことです。敵の数は不明ですが、支配された森人を案内役として前線に立たせているのが確認されました。そのことから、人間の魔法使いが同行していると思われます。」
その報告で私たちに緊張が走りました。
「どうやら反抗が敵に知られてしまったみたいね。」
リタ姉ちゃんは意外にも冷静でした。
「ニアやバオーに誰も残して来なかったのが幸いしたな。」
ダルクさんも余裕ありそう。なんか私だけ動揺しているみたいで恥ずかしい…。
「オルフィー様の鱗粉のことを知られると人間側が対応を変えてしまうでしょうから、こちらの情報を与えないよう、殲滅してしまいましょう。」
フィズさん、過激だなぁ。でも、できれば、森人さんたちは救ってあげたいです。
森人というのは、魔蝶族と同じく森に住む少数部族で、耳が長くスレンダーで美形揃いです。森の恵である木の実や果物が主食のため、魔蝶族と食生活が共通していて交流もありました。
穏やかで友好的な部族だけど、森を荒らされたりすると弓をもって交戦する一人一人が優秀な狩人だったはず。
「陣を敷いて迎え撃つ感じですか?」
キエムがリタ姉ちゃんに尋ねました。
「本来ならそうしたいけど、森の中で森人と戦うのは危険よ。姿を隠しながら接近されると、こちらが奇襲を受けることにもなりかねないわ。」
リタ姉ちゃんの懸念はもっともです。
森人って、木の枝の上をピョンピョン音も立てずに移動するし、枝や葉に上手く隠れるのが上手なんだよね。
「目視が難しくても、犬人族の嗅覚をもってすれば、近づかれれば大まかな位置は判断できます。奇襲を許すようなことはありません。」
フィズさんの言葉に、私たちはもう4人じゃないんだって思い知らされました。
なるほどね、こちらにも強い武器がたくさんあるんだった。
「だったら、森人さんたちがある程度近づいたら教えてくれないかな。私の『パウダーブリーズ』で広域に隷属紋を解除して形勢逆転しちゃうから!」
私はついに、必殺技の名前の1つを披露しました。
なかなか格好いい名前だと思っていたので、みんなの反応が楽しみだったのですが、最初に目が合ったリタ姉ちゃんが、可哀想な子を見るような目で私を見下ろしていました…。
「では、待ち構えるように陣を形成し、森人の接近に気づかないふりをして十分に敵を引きつけ、同胞の解放を優先する。その後、人間どもの殲滅という手順でいこう。」
ダルクさんが作戦を整理して提案してくれましたが、私と目を合わせません。
おかしいな…。名前つけたらダメなの?




