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第22話 タレントと人間界の歴史

翌日、昼食を済ませて私たちは町長の屋敷にある会議室に集合しました。

メンバーは私、リタ姉ちゃん、ダルクさん、ドレミー、フィズさん、おまけのキエム。

みんなの能力を確認して、今後の方針を決める大事な会議が始まりました。


始めに話題となったのは、人間のタレントについてです。

今までは魔法使いと隷属魔法だけ警戒していたけど、そもそも隷属魔法が横行しだしたのは魔王様が殺されて宮殿と魔界樹様が人間の手に落ちてからだもんね。

つまり、隷属魔法がなくても、人間は魔界の同胞との戦いを有利に進められていたということ。


その鍵となるのが『タレント』ってことだよね。

リタ姉ちゃんがキエムに命令して、人間界とタレントについて知っていることを全て共有させてくれたので、いろいろなことがわかってきました。


人間界では50年ほど前から、生まれたときに光が降り注ぎ、『タレント』を神様から

授かる赤子が出始めたみたい。

タレント持ちの子供は、そのタレントに応じた能力に秀でていて、努力しなくても普通の人間とは別格の強さを得られるらしいです。


人間の歴史を簡単に要約すると、タレント持ちが生まれるようになって20年ほど経つと、タレント持ちの人間が成人していき、自分たちは神様に選ばれた存在で、支配者となるべくして生まれたという選民主義思想が台頭してきた。

一部のタレント持ちたちは結託して、既存の王国に攻め入り王家を皆殺しにして為政者に成り変わり、普通の人間を奴隷のように扱い始めた。

それに対抗したのが、『聖女』のタレントをもって生まれた王女を擁するもう一つの大国で、タレントは人々が豊かに暮らすために神様が与えてくれたギフトであり、タレントの有無で人間を差別することを禁止する博愛主義思想が、広く一般の人間に支持されていった。

選民主義思想の国から博愛主義思想の国へと亡命者が多発したため、選民主義思想の国で呪術師のタレント持ちが中心になって研究開発されたのが隷属魔法であった。

隷属魔法を永続的に機能させるために利用しようとしたのが、世界樹という大地の魔力に満たされた大樹だったが、その存在が博愛主義思想の国土にあったため、2国の戦争は避けられなかった。

それから20年ほど終わりの見えない戦争が続き両国は疲弊していったが、選民主義思想の国のほうが衰退のスピードが早かった。

それというのも、一般の人間のモチベーションが全然違ったし、隷属魔法を更新し続けるか人質をとらないと、亡命者や裏切り者を止めることができない状況が足かせになっていた。

限界を感じた選民主義思想の国は、停戦協定を結び、人間に対する隷属魔法を禁止する条約をのむことになった。

しかし奴隷がいる生活に慣れきっていた選民主義思想の国のタレント持ちたちは、もとの生活を捨てきれず打開策を模索することになった。

そこで注目したのが、王国の古い蔵書に記録が残っていた魔界の存在である。


封印ゲートの先には魔界が広がっていて恐ろしい魔族が住んでいるというお伽噺は、誰もが子供の頃に親から聞く話で、封印ゲートのある地は禁忌の地として誰も近づくことはなかった。

しかし、魔界とは記録を見るかぎり、人間に近い多様な種族が暮らす地であることが判明した。

そこで、新たな奴隷を手に入れるため、選民主義思想の国は封印ゲートを調べ、2年前に封印の解除に成功して魔界に侵攻を試みた。

丁度、私が蛹化して一年経ったころのことだね。


タレントについては、エピック、レア、ノーマルと3段階で評価されているとのこと。

エピックでキエムが知っていたのは『勇者』『聖女』『賢者』『呪術師』『剣聖』の5つ。

このうち、『賢者』『呪術師』『剣聖』のタレント持ちは選民主義思想の国側らしい。

レアにあたるのが、『剣士』『魔法使い』『治癒士』『弓術士』『暗殺者』などの戦争に貢献できるタレント持ちなんだそうです。

エピックが世界に一人しか存在が確認されていないのに対して、レアは数も多いみたい。

ノーマルにいたっては、『器用』『強腕』『無痛』『知恵者』などの1つの能力が高い程度の存在で、一般の人間とそんなに変わらないみたい。


今回の魔界侵攻は、事前に記録から世界樹に代わる魔界樹の存在を把握していたので、魔界樹を占拠したうえで隷属魔法で支配地を増やし、魔界の永続支配を完成させるというものだった。


一通りの情報共有が済み、私はキエムが仲間にいることの価値が思っていたよりも大きいと認識を改めました。

相手のことを何も知らずに戦うのは、闇に向かって歩いて行くようなものだしね。


しばらく考え込んでいたダルクさんが、キエムに問いかけました。

「その剣聖のタレント持ちも魔界に来ているのだろうな?」

「そのはずです。『賢者』『呪術師』『剣聖』ともに魔王の宮殿を拠点にしていると聞いたことがあります。」

「あの剣士のタレント持ち以上の強者がいるのだな。少なくともお嬢ちゃんとドレミーは対面することになったら逃げることを考えてほしい。」

ダルクさんが私とドレミーのことを心配そうに見つめて、そうお願いしてきました。


「うん、相性のいい相手じゃなかったら全力で逃げるよ!」

なんか卑怯なことを自信満々に言っているみたいで変だけど、こう言ってあげたほうがダルクさんも安心するもんね。


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