第13話 バオーの町解放作戦
人間たちが乗ってきた幌馬車に農作物を積み込み、御者は人間にやらせてバオーの町へ出発します。
乗り込んだのは、私とリタ姉ちゃんとダルクさんと凶蓄桃。
他の鬼神族のみんなも一緒に行きたいと願い出てくれたんだけど、大人数でいけば反抗が始まったとすぐに人間に知られてしまうから、今回は我慢してもらいました。
本当に4人だけでバオーの町を人間たちから取り返せるか不安は尽きないけど、やるしかないもんね。
御者の人間から引き出した情報では、バオーにいる人間は50人くらいらしいです。魔法使いは一人しかいないらしいのが救いだけど、腕利きの用心棒が一緒にいるらしく、攻略を難しくしてる感じかな。
元町長の屋敷を根城にしてると聞いて、リタ姉ちゃんが「屋敷ごと燃やしてしまえばいい」と過激な発言をしたけど、ダルクさんが「中にいる魔界の同胞を道連れにはできない」となだめてくれました。
バオーの町までは丸一日かかるので、途中で野営することになりました。
簡単な穀物入りのスープと果物を食べて満足していると、魅了の魔法を上書きしないといけないと言って、リタ姉ちゃんが馬用のムチをもって人間と馬車を挟んで反対側の見えないところに移動していきました。
ムチ?と思っていると、ビシビシとムチで打ち付けている音が響いてきて震え上がっちゃったよ。
スッキリした顔で戻ってきたリタ姉ちゃんの後ろを恍惚とした表情の人間がついてきたのは驚きでした。
足の裏の浄化も頼まれなかったし、もうムチだけでいいんだ…。
知らないでいいこと知ってしまった気分です。
バオーの町が見えてくると、ニアの町より大きくて、防護柵みたいなものでぐるりと囲まれているのがわかりました。
もう少し近づくと、町に入るための門があって、門番として犬人族が2人で門を守っているのも確認できました。
人間の話では、犬人族には全て同じ命令が下されているわけではなく、門番なら『人間以外の侵入者を捕らえろ』とか個々に役割があるらしい。
私以外は幌に身を潜め、私は人間に見えるように羽を最小にして背中の隠れる服をきて、御者台の人間の横に座りました。
人間だと思っているうちに、鱗粉を振りかけて隷属紋を解除しちゃう作戦です。
私は小袋から鱗粉を少し取り出して右手に握り込みました。
門に辿り着くと、門番の犬人族が見慣れない私に注目し、本当に人間なのか確認しようと近づいてきました。
命令に忠実すぎだよ…。嗅覚が鋭いのもあるのかな。緊張で心臓がバクバクいっちゃう。
目の前まで来た瞬間に、私は思いっきり鱗粉を投げつけました。
犬人族は反射的に腰の剣に手をかけたけど、そこで動きを止めました。
「隷属紋は消えたでしょ?私たちはバオーを解放しに来たの。強力して。」
私の言葉で我に返ったようで、犬人族の二人は目をあわせて頷きあいました。
「この人間は、殺さなくて大丈夫なのか?」
するとリタ姉ちゃんたちが幌から出てきて、私に代わって話をひきとってくれました。
「こいつは私の魅了の魔法がかかっているから安全よ。まだ利用価値があるから殺さないでおいてくれる。」
「わかった。」と犬人族は納得してくれました。
「このお嬢ちゃんがニアの町を救ってくれたんだ。隷属紋を消す力をもっている。今の魔界を救うための切り札だぞ。」
ダルクさんの言葉に犬人族の二人は神妙に頷きました。
「ドレミーはこの門のところに居てくれる?人間が出入りしそうになったら花粉で麻痺させて、花を無理矢理口に押し込んで殺しちゃってね。」
「わかったノ。」
リタ姉ちゃんとドレミーの会話が怖いです…。
「ドレミー、危なかったら逃げてね。雑草とかに同一化しちゃえば、人間も急に消えたと思うはずだから。」
私はドレミーと離れると思うと心細くなりました。
今は人間側に私たちの存在を知られないことが重要だから、人間の逃亡者をだしてはいけないのです。つまり、皆殺し一択なんだよね。
ここからはスピードが命です。
農作物倉庫で働かされている犬人族を解放し、手分けして町の犬人族に情報を共有してもらい、倉庫まで来ることができる犬人族には集まって貰って隷属紋を消しました。
次に取りかかったのは、犬人族の嗅覚を最大限に活かして、人間を各個撃破していくことです。
叫び声をあげられたくないので、基本はダルクさんが刀一閃で首から上を胴体と切り離していきます。
夢に出てきそうな恐怖映像の連続でしたが、目をそらしたりはしません。
だって私が始めたことだもん。
犬人族も隷属紋が消えて人間に攻撃できるようになったので、腕に覚えのある者が数人単位で行動し、人間を殺して回っています。
ほとんどの人間を始末したんじゃないかと思っていたら、大音量の声が町中に響きました。
「犬人族ども、反逆者を殺せ!」
ニアの町でも使われた、広域に声を発する魔法だ。
町の異変を報告するような命令を受けた犬人族がいたのかもしれない。
まぁ、いつかは気づかれると想定してたから、ここで動揺してはいられないのです。
私はリタ姉ちゃんに鱗粉入りの小袋のほとんどを渡しました。
コウモリの羽で飛ぶことができるリタ姉ちゃんが、集まってきた犬人族に空から鱗粉を撒き散らして解放していく作戦です。
「リタ姉ちゃん、絶対死なないでね!」
私はリタ姉ちゃんに抱きついて懇願しました。
「オルフィーこそ無理しちゃダメよ。ちゃんとダルクさんの後ろに身を隠して行動するのよ。」
そう言いながら、リタ姉ちゃんが私の頭を優しく撫でてくれました。
私は決意を固めて言いました。
「ダルクさん、行こう!魔法使いを殺しに。」
支配されている犬人族に一斉に命令が下された今がチャンスなんだもん。
解放された犬人族が囮になって惹きつけてくれている間に、敵の本拠地を叩くのです!




