14、腐女子たちは動き出す(ロゼリア視点)
「おい、そこの見習い執事!そこでなにをしている?!」
「あっ!で、殿下……」
声を荒げるフレデリックの姿を見て、見習い執事の少年はさっと顔色を変え震えながら視線を下へ向けた。
「見習いのくせに仕事をサボるとはいい度胸だな!しかもアルファン伯爵にすり寄るなど……恥を知れ!」
「さ、サボるだなんて、そんな……!それにジークハルト様とはそんなんじゃ……」
見習い執事の口からジークハルトの名が出たことに反応してフレデリックは一気に頭に血がのぼる。その名を呼んでいいのは自分だけの特権のはずであったからだ。
「言い訳など言ってる暇があるなら早く仕事へ戻れ!」
激昂しながら見習い執事に向かって手を振り上げるフレデリック。しかしその手は振り下ろされる前にジークハルトによって止められた。
「!……あ、アルファン伯爵っ」
フレデリックに視線を向けることもせず、ジークハルトは見習い執事の少年に「ここはいいから、早く行きなさい」と声をかけると、慌てて走り去るその背を見ながら小さくため息をつく。
「……あの子は僕の頼んだ仕事をしていただけです。理由も聞かずに暴力をふるおうとするなんて……がっかりだ」
責めるようなジークハルトの言葉にフレデリックはビクッと体を強張らせる。今度は一気に血の気が引いたかのようにその顔は青ざめていた。
「アルファン伯爵……ち、違うんだ」
どうにか弁解しようとジークハルトを見上げるがその瞳が自分を見ていないことに酷く動揺する。あの日の優しい瞳が失われた現実に今にも胸が押し潰されそうだった。
自分だけを見て欲しい、と。その瞳に他の人間がうつるなんて我慢ならなかったのだ、と。そんな気持ちが渦巻いていると知られたら嫌われるだろうか?そう考えて自分がこんなにも臆病な人間だったのかと驚いてしまう。……でも、この気持ちに偽りはない。俺は自分の気持ちに気づいてしまったのだ。
「アルファン伯爵……いや、ジークハルト!俺は――――!」
フレデリックはあの見習い執事の少年に嫉妬したのだと、ジークハルトに告げた。こんなにも素直になれたのはもちろん相手がジークハルトだからだと、必死に訴えた。
ジークハルトにすがりつくようにこの苦しい胸の内を全て吐き出した。やっと気づいた本当の気持ちを隠し通すなんて出来ない。ジークハルトにすべてを知って欲しいのだ。と。
きっとその顔は赤い。フレデリックは情けなく眉を下げ、泣きそうなのを必死にこらえていた。
「……フレデリック殿下。でも、あなたには婚約者が……」
「……そんなの関係ない!どうか、俺にジークハルトの愛を……」
フレデリックが恥ずかしがりながらも小声でそう伝えると、ジークハルトはその頬に軽く唇を落とし優しく微笑むと、ふたりは静かに部屋の中へと消えていったのだった……。
「……って感じではないしら?!」
むふーっ!と鼻息を荒くしてわたしの意見を述べてみた。フレデリック殿下がジークにい様の元へ行ったあと、みんなでガゼボからこつわそり覗くようにして目を凝らしたが残念ながら会話は聞こえなかったのでそのやりとりの動きを見て勝手にアテレコしてみたのだ。しかし、我ながらなかなかいい出来だと思う。
「まぁぁぁぁぁ、素晴らしいです!まるで本当に現場にいたかのような描写ですわ!」
「はぁーはぁーはぁー、さすがはロゼリア貴腐人様でございます!」
「生ですわ……生のふれあいですわ……ぐふゅふゅふゅふゅ」
「これは腐女子の歴史に残る傑作が出来る予感がいたします……!うっ、ぷはぁっ!」
妄想を広げてうっとりと興奮する腐女子たち。おっと、鼻血噴出でひとり撃沈してしまったようだ。このままここに寝かせておくことにしよう。
「では皆様、準備はよろしくて?」
「「「もちろんです、ロゼリア貴腐人様!」」」
え?そんなに意気込んでなにをするのかって?
そんなの全員でこっそりとあとをつけて盗み聞きするに決まってるじゃないかぁ!
ここからが本番ですからね!




