11、その貴公子、最強なり(ロゼリア視点)
全世界に存在する腐女子の皆様、こんばんは。現在こっそり天井裏から覗きを……ゲフンゲフン。いえ、様子を伺っているロゼリアの実況でお送りいたしたいと思います。
「ふふふ……ここからならよく見えるわ」
音を立てないように小さな穴をそっと覗き込むとそこにはまさに天国が広がっていた。
え?なんで貴族令嬢が天井裏に忍び込むことが出来るのかって?そんなの……〈貴腐人〉の嗜みですからぁ!
それに、ジークにい様が失敗するなんて思ってなどいない。わたしはあの人の逸話を数え切れないほど知っているし、それこそ生きた伝説を見てきたのだ。
つまり、ジークにい様の手腕を堪能するべく忍び込んだのである!フレなんとか殿下が使用人たちをたくさんクビにしたので今の王宮にはほとんど人がいない。そのおかげで忍び込むのも楽勝であった。
あ、わたしの作戦のせいでクビになった方たちだが、そのへんはちゃんと対処しているので心配いらない。
では本日の生実況は……“深夜”・“王子の寝室”・“膝の上”の3本立て!あらゆる想像を膨らませてお楽しみあれ!
「あ、あああああああの、ア、アルファン伯爵ぅ?」
やっと我に返ったのか、ジークにい様の膝の上で慌て出すフレなんとか殿下。呆然としている間に下準備はバッチリのようだ。それにしても、ジークにい様はさすがとしかいいようがない。相手に考える隙を与えずにここまでもってくる手捌きが完璧である。
「どうなさいました?」
ジークにい様が優しい手つきでフレなんとか殿下の髪をそっと撫でると、フレなんとか殿下はビクッと体を震わせた。これまでジークにい様の手に落ちた方々によるとあの手つきはまさに“極上”らしい。さて、フレなんとか殿下に耐えることができるかな?
「あ、あの、なぜ俺はこんな……」
「僕は殿下が悩んでおられたようなので、お慰めしたいと思ったのです。それとも僕のことを友だとおっしゃって下さったのは偽りでしたか?」
「そ、そんなことはない……!俺の本当の気持ちをわかってくれるのはアルファン伯爵だけだ!」
「……どうか、ジークハルトとお呼びください」
「……!じ、ジーク、ハルト……」
「フレデリック殿下、そんなに目を潤ませてどうなさいました?……ほら、こっちを向いて?」
………………。
むっは────っ!!(鼻息)
おっと、失礼。あまりの素晴らしい光景に思わず息を止めていたようだ。
ジークにい様ったら、わたしが覗いている事に絶対に気が付いているとしか思えない。だって角度が絶妙に見えそうで見えないギリギリをちらつかせてくるんだもの。
あぁっ!あの指先の動きったら最高です!ジークにい様に翻弄されるフレなんとか殿下の顔つきもなんとも……おっとヨダレが。(じゅるり)
「……ぁ……!」
あっ!ジークにい様が動いた!くっそぉ、声がよく聞こえない!
────えっ、あらやだ……マジですか?!そ、そんな……すごっ……けしからん!もっとやれーっ!メモを!メモをしなければ!これは次の新刊にいけるのでは?!
あぁ、でもジークにい様をモデルにするのは禁止だから別のキャラ設定をしなければって……えーっ!?それも?!そんなこともぉ?!!す、すご……っ!
さすがはジークにい様!そこに痺れる憧れるぅ!!
はぁはぁはぁ、つい興奮してしまったようだ。
しかし、想像以上にすごかった。やっぱり生は違いすぎる!
ジークにい様の焦らしテクニック……貴腐人のわたしですら鼻血ものである。寸止めで我慢できたのを誰かに褒めて欲しいくらいだ。
しかも、あんなにすごかったのに最後まで致していないなんて……!なんていうか……とにかくすごかった!!すごすぎて語彙力がぶっとぶ!
だって、唇すら奪っていないのに(息がかかる距離だったが接触は指先だけなのだ)あのフレなんとか殿下がまるで別人のようにふにゃふにゃになってとろけるような顔をしてるんだから────っ!
さすがは腐薔薇の貴公子……!
わたしが先ほど見た素晴らしい光景を脳内でリフレインしてうっとりとしていると、一瞬ジークにい様の視線がこちらを向いてわたしとバチっと目が合ってしまった。
そして、フッと意味ありげな微笑みを浮かべたのだ。
あ、はい。退散しろということのようだ。残念だが本日はここまでである。
「……フレデリック殿下、僕のマッサージはいかがでしたか?」
「ま、マッサージ……?」
「はい、どうやら殿下はお疲れのようでしたので身も心もほぐれるマッサージをしてみたのですが……お気に召しませんでしたか?」
不思議そうに首を傾げるジークにい様の様子に一気に顔を赤くするフレなんとか殿下。どうやら自分は勘違いしていたらしいと思ったらしくテンパり具合が半端ない。まぁ、あれだけ際どかったら勘違いもするだろう。
「ま、まままマッサージか……!そうだよな、ただのマッサージだな!う、うむ!なかなかよかったぞ!ジー……ア、アルファン伯爵はマッサージがうまいな!」
アワアワしながら早口で捲し立てるフレなんとか殿下の唇にジークにい様が人差し指をそっと添えた。
「ジークハルト。ですよ、殿下」
「……っ!」
至近距離のその囁きと、煌めく瞳の罪深さよ!許されるならば、今すぐ薔薇の花びらを撒き散らしたい!
本当はもう少し見ていたいのだが、ジークにい様に退散を促されたのでおとなしく従うことにしよう。ジークにい様を怒らせるとものすごく怖いのだ。
とにかく、今夜はいい夢見れそうである!




