10、初めての親友(フレデリック視点)
……おかしいぞ?どうしてこうなったんだ……?
俺は現在の状況に混乱しつつ、これまでの事を思い出していた。
***
あれからクビにした教師どもの代わりに新たな教師を雇ったが、ロゼリアに対する評価は全く同じだった。なんて見る目の無い奴らなのかと落胆したのをよく覚えている。
テイレシアの評判を前任の教師たちから聞いていたと言う奴等はまたもやロゼリアを酷評したのだ。
なんてことだ!優秀な教師を選んだはずなのにあの前任どもの息がかかっていたとは。と、再びクビにしてやった。しかもよくよく調べれば、最初の教師どもはその業界では“博士”とか“師匠”などと呼ばれる存在だったらしく、この国の若い教師どもはみんなそいつらの弟子だったのだ。俺はこの国の腐った片鱗を見てしまったと頭を抱え、ロゼリアの教師は他国から探して連れてくることに決めた。そして、ロゼリアの為にも俺がなんとしてもこの国を変えなければと新たに決意したのだ。
王宮の中にも不穏分子はたくさんいた。なんと、ロゼリアの身の回りの世話を任せた侍女たちまで口を揃えてロゼリアへの不満を言っていたのだ。
「テイレシア様は使用人を差別したりしませんでした」
「テイレシア様は身分の低い者もちゃんと人間扱いしてくれました」
「テイレシア様は」
「テイレシア様だったら」
「テイレシア様ならば」
と、王宮で働く者たちがこぞってロゼリアを批判していると報告を受けて目眩を感じた。
何に目眩を感じたかって?そんなの、あの毒婦が手当たり次第に自分の毒を撒き散らしていたという事実にだ。
ロゼリアが差別をしただと?馬鹿馬鹿しい。彼女は未来の王子妃だ、俺の妻になる女なのだ。身分の低い使用人が馴れ馴れしくしていいはずがないだろう。ロゼリアはちゃんと身分の差と言うものをわかっている賢い娘だ。それなのにテイレシアは老若男女、下級貴族から平民上がりの使用人にまで分け隔てなく接していただと?!
あいつらがテイレシアの事をなんと評していたと思う?「慈愛の女神」だと!「テイレシア様が王子妃になられたら、この身を捧げて忠誠を誓うつもりでした」などと言う王宮騎士までいたんだぞ?!
あいつら王家に忠誠を誓っているはずだろう?!なんで個人的に忠誠を誓うなんて言い出すんだ?!意味がわからん!
まさか堅物で有名な騎士たちまでテイレシアに毒されていたとは……あいつはとんだ尻軽女だ!あんな女と婚約していたと思うと虫酸が走る!!
あの日、ロゼリアに親戚だというアルファン伯爵を紹介されてから4日が過ぎた。
ガゼボでふたりきりになった時、アルファン伯爵は俺の味方だと囁いてきたのだ……。
そしてなぜか、その日からアルファン伯爵は王宮に泊まっている。いや、許可したのは俺なんだが。
アルファン伯爵は悩める俺の相談役になってくれた。親身に話を聞いてくれて、男同士なのだから無礼講だと。それまで友と言う名の取り巻きしかいなかった俺は、はじめて心の底から話し合える相手を見つけた気がした。
アルファン伯爵は毎夜寝室にやって来て俺の悩みや愚痴を聞いてくれた。彼はロゼリアのこともよく知っているから俺の知らないロゼリアを教えてくれるのも嬉しかった。
アルファン伯爵は不思議な男だ。
俺から見てもとんでもなく美しいと思う。しかし、やたらなんというか……時々こそばゆい感覚になってしまうのだ。
耳元で甘く囁かれると頭の芯が時折痺れるような感覚に陥る。男同士なのだから気にする必要はないのだが、彼の指先が俺の……その、わざわざ際どい場所に触れてくる気がしてならない。いや、俺の思い過ごしだと思うのだが。
でも……それが彼の親愛の示し方なのだろうかとも思ってしまう。何の抵抗もなく自然に彼は俺の心に染み込んできたのだ。俺の中にあったはずの警戒心はとっくの昔にほぐれてしまっていた。
これが親友と言うものかと、嬉しささえも覚えたものだ。
***
「フレデリック殿下、僕とふたりきりの時はあなたはとても可愛らしいですね。とても魅力的だ」
「ア、アルファン伯爵……っ?!」
な、なんだこれ……なぜか胸の奥がきゅんきゅんする────?!
耳元でそんな言葉を囁かれ、我に返った俺は自分の心臓の鼓動の早さに戸惑った。
あぁ、それにしてもなぜだ。……今現在、なぜ俺はアルファン伯爵の膝の上に乗っているのか?!




