第90話 セリカの気持ち
今回はラブコメ要素も付いています!
ギルドマスターであるカルヴァリオさんのお願いでベトカルブと言う街に赴いて欲しいと言うクエストを受ける流れになった。
ふとしたきっかけでBランクパーティーの【ブリリアントロード】を率いるウィーネスさんを筆頭にしばらく修行や行動を共にする事となった。
一緒にお酒を飲み明かして俺達の拠点に戻った後のセリカの様子がおかしくて……。
「トー~マ~さ~ん~……」
「セリカ?何を?うおっ!?」
「じ~~……」
「急にどうした?」
俺はセリカに腕を掴まれた後、彼女が普段寝ているベッドに座らされると、一瞬でほぼ至近距離の真横に座ってきた。
セリカは俺の顔を凝視しているが、元の顔立ちが整っているのもあって、その表情は普段よりも艶やかで熱っぽく、そして美しかった。
「トーマさんって……。大人な女性の方が好きですか~?」
「ハイ?!」
(何だ急に?)
既に装備品である胸当てや手甲を外して薄着同然のセリカの身体は、柔らかい肌と膨らみが俺の腕を絡め、押し当ててきた。
こんなセリカは異世界に飛ばされてから初めて見たぞ。
大人な女性ってまさかウィーネスさんの事か?
それとも同じメンバーのリエナさんなのか、【ディープストライク】のフィリナさんやエルニさんの事なのか、お世話になっている受付嬢のナミネさんの事なのか分からなかった。
するとセリカはドンドンと俺に顔を近付ける。
「この間の修行で私とウィーネスさんがやり合ったんですけど~。その時私ボロ負けだったじゃないですか~?どう思います~?」
「え?ま……。それは……。セリカはウィーネスさんと同じギフトなんだし、キャリアも完全に向こうが上だから実力が劣ってしまうのはどうしても感じてしまうと思うよ!俺やクルスもウィーネスさんにボロ負けだったし!」
「私よりも強くて綺麗でスタイル良いですもんね~、ウィーネスさんは……。トーマさんから見てウィーネスさんの方が私なんかよりも魅力的って事ですか~?」
「そう言う話ではない!」
「じゃあどう言う話ですか~?」
(こっちこそどんな状況だって言いたいところだけど言ったらもっとヤバそうだから言えない~!)
セリカは腕を俺の後ろに回して密着してくると、ベッドに押し倒してきた。
確かに『軽戦士』のギフトを持っている者同士で嫉妬心が芽生える可能性が高いのは分かるけど、何だこの状況は……。
「そ、そんなに自分を卑下しなくていい!セリカだって十分、いや十二分に素敵な女性だよ!自信を持って!」
「私だって……。トーマさんの事……。素敵な方だと信じていますよ……。私達の事をいつも優しく気に掛けてくれて……、助けてくれて……、思いやってくれて……。トーマさんを好意的に見る人達っていっぱいいますよ……。でも……」
「でも……?」
落ち着かせようとしている俺を他所にセリカは一人でうわごとのように語り掛けた後、不意に儚そうな表情をした。
「私の事だけは……。特別に見て欲しいな……」
「!!!」
可愛らし過ぎて、美し過ぎて、いつにない艶やかさ放ちながら本音を言っている時のセリカの表情は計り知れない破壊力を見せている。
そしてどんどんと顔を近付けてくる。
どっちかがその気になれば、キスしようと思えばできてしまう距離感だぞ……。
客観的に見てもセリカだって美人だしスタイル良いし、艶っぽく熱っぽいその姿が近付くにつれ、俺の心臓の鼓動を早めさせていく。
(ん?特別……?)
すると俺に天啓の如き何かが舞い降りた。
「セリカ頼む!聞いて欲しい事がある!正直に言えば、同じギフト持ちのウィーネスさんの方が実力もキャリアも完全に上を行っている!それは紛れもない事実だけどな……」
俺はある事を思い出してセリカの両肩を掴み、距離を引き離して一呼吸置く……。
「セリカにとってウィーネスさん。いや、どの冒険者とかに負けないだろう事がある!」
「え……?」
「セリカは俺の恩人だ!俺がこの異世界に飛ばされてきて、俺を助け、生きる術や方法、冒険者とは何なのかを教えてくれた!だからこうして俺は生きて来れて、楽しい日々を過ごす礎を創ってくれた!これはどんな女性にも負けない事だ!」
「……」
(どうだろう?伝わったかな……?)
俺がこの世界に飛ばされて最初に出会ったのは、目の前にいるこのセリカ本人だ。
セリカは実力以上に心優しく誠実で素直で、俺の事を腫れ物扱いどころかこの世界や冒険者ギルドを始めとする事を教えてくれた。
初めて出会ったのがセリカじゃなければ、今頃どうなっているか分からない。
それは紛れもない俺の本心であり事実だ。
どこまで伝わるか分からないが、言える限りの気持ちを伝えた。
すると……。
「トーマさん!」
「うぉお!?」
セリカは不意に俺に抱き着いてきた。
柔らかいモノと健康的な肌が俺の身体に密着して来る。
まだ艶っぽい表情はあるが、どこか酔いが醒めている様子だった。
「それを言うなら……。私も同じですよ……」
「セリカ……?」
「兄さんを失って、気持ちが沈んだ状態でクエストをどうにかこなしている中、トーマさんと出会って、それをきっかけに私もいつの間にか前を向けるようになって……。必死に頑張って生きていったらミレイユやクルス、エレーナとも出会えた……。Cランクの冒険者にもなれて、強くなれた……」
「……」
セリカは酔いもあってか、あまり言ってこなかった俺への気持ちやこれまでの道のりを振り返るように語っていた。
「だからトーマさんが私の事をそう思ってくれていると分かっただけでも、本当に嬉しくて、頑張って良かったって思えます……」
「セリカ……」
セリカの表情には安堵や喜びが入り混じったようであり、目も潤んでいるように見えて、それが艶やかさに拍車をかけているようにも思えた。
実際に俺もセリカと出会えた事は本当に幸運だったし、過ごしてきた日々は宝だ……。
「ありがとうなセリカ……。俺にとってのセリカは……。特別な存在だよ……。嘘なんかじゃない。セリカは……俺の大切な人だよ……」
「トーマさん……」
俺も思わずカッコつけたようなセリフを言ったような気はしたと思う中で、セリカは俺の首を後ろに回しながら、ベッドで横合わせの状態になった。
そこからセリカは徐々に顔を、唇を俺に近付けてきた。
俺も思わず少しずつ顔を近付けていた。
その時だった……。
「トーマさん!セリカ!大丈夫ですか~?」
「シャワー空きましたよ~!」
「「!!??」」
「大丈夫ですか?セリカが随分と酔っているように見えまして……」
不意討ちのようにクルスとエレーナが部屋に近付いて来る声と足音が聞こえ、俺とセリカは我に返ったようになった。
セリカも状況に気付いたようなリアクションになって俺から離れ、互いに後向きになった。
しかも扉が半開きじゃないか!
「お二人は何をしているのでしょう?」
「いや!何でもない!すぐにシャワーを浴びるよ!」
「私ももう大丈夫!トーマさんお先にどうぞ!」
「俺も平気だから!セリカこそ、お先にどうぞ!」
「いえいえ!そんな!」
(これは何かあったな……)
(あの慌てよう……。お熱い事がありましたわね……)
俺とセリカはトギマキしたようなやり取りが続き、クルスとエレーナは諦観しながらも、どこか察したように振舞っていた。
そして、【アンビショノブアレス】から申し出された協力クエストで赴くために同行していただけるAランクパーティー【ノーブルウィング】との邂逅を翌日に控えるのだった……。
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