第81話 結果発表と家族談議
選考の結果と貴族だからこその家族団欒が描かれます!
ロミック様主催の選考会が行われると知って参加した俺達。
その選考内容の過程で討伐対象のモンスターである“ミスリルメガリザード”と戦闘していたが、エレーナ様の協力もあって討伐に成功するのだった。
それから結果を待つ事2週間————————。
昼過ぎ・ギルド内の飲食スペース————————
「中々来ないな~。結果通知」
「私達がやってから数組ほどの冒険者パーティーが参加しているって言うから、かなり吟味していると思われます」
「セリカと旧知の仲だっていうウィーネスさん達のところも参加しているんだったら、確率はよくてそこそこなのかな……?」
「どうだろうね……」
クエストをこなしている中、ティリルを含めた街を治めるハイレンド伯爵家の当主であるロミック様が主催する選考会に参加した俺達だったが、その結果を待っている状況だ。
結果は悪くなかったものの、Bランクパーティーも数組参加していると聞いているため、ハンデのようなものを感じてはいる。
「あら?何してるの?」
「ウィーネスさん。それに皆さんも……」
声をかけてきたのはウチのギルドに籍を置き、Bランクパーティーとして有名な【ブリリアントロード】のリーダーであるウィーネスさんであり、他のメンバーもいる。
いつの間にか近くのテーブルに座っていたが、特に気にする事もなかった。
「武具のメンテナンスをしながら、ロミック様主催の選考会について話し合ってました」
「あらそう。私達は採取系のクエストを終えて戻ってきたところよ。もしかして、あんまり手応えを感じられないとか……」
「手応えを感じてはいないわけではないですが、Cランクパーティーの我々が選んでくれるかどうかちょっと不安になりまして……」
「そう……。私らもトーマ達と似たような気持ちよ……」
「ウィーネスさんもエレーナ様をパーティーに引き入れたいって事でしょうか?」
「そりゃ叶う事ならば叶って欲しいよ!それでも、最終的に決めるのはエレーナ様を始めとするハイレンド家の当主であるロミック様や嫡男であるガレル様、精鋭の騎士団の皆様がよく考えて選ぶんだから、私らはその決定を受け入れるだけ!選ばれたパーティーに対してそれを祝うのが筋よ!」
「あっさりしてますね……」
ウィーネスさんはサバサバしながらも、他者への気配りがしっかりできる思慮深い人だ。
冒険者パーティーの大半は男性がリーダーをしている事が多いと聞いているが、女性の身でありながらもリーダーシップと優れた人間性に溢れた素晴らしい人物だ。
セリカによると、「家事は人並みにできるかどうか」との事だが、冒険者としての気概や人格面では心から尊敬していると聞いており、改めて俺も納得した。
「あの失礼します……。【トラストフォース】と【ブリリアントロード】の皆様、今よろしいでしょうか……?」
「はい……。大丈夫ですよ」
「同じく……」
「先ほど、ハイレンド伯爵家の選考会の結果がギルドに届きまして、お時間があればギルドマスターからお伝えさせていただきたいとの事ですが……」
馴染みの受付嬢であるナミネさんから、俺達とウィーネスさん達がちょうどいる場面を見て好機と捉えるかのように声をかけてきた。
結果を聞かせてもらえるとの事だ……。
「皆、行こうか!」
「「「ハイ!」」」
「私達も行こう!」
「オウ」
「「ハイ!」」
そしてギルドマスターであるカルヴァリオさんが待っている部屋へと案内された。
「集まってくれてありがとう。ハイレンド伯爵家が主催する選考会の結果が出たので、丁度ギルドにいる君達には直接報告したく思い集まってもらったんだ。他のメンバーは文面で伝え、後日正式にどこのギルドのパーティーに所属するかを発表する所存だ……」
「そうですか……。」
「それで、結果はいかほどに……」
「もったいぶってもしょうがないから、単刀直入に発表させてもらうよ……」
カルヴァリオさんの表情にシリアスさ溢れる様相が宿っている。
俺達も固唾を飲んで結果を受け入れる準備を整えた……。
「我々や先方の検討を重ねて出した結果は……」
「冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】の【トラストフォース】!」
「「「「!?」」」」
「本当ですか?私達のパーティーが……」
「あぁ。確かにそのような結果だ」
「「「「イヨッシャーーーー!」」」」
俺達はその場で大喜びした。
ウィーネスさん達も素直に結果を受け入れている様子だった。
「それでなんだが、冒険者ランクCの『付与術士』であるエレーナ様を引き入れると言う事で、トーマ達はよろしいかな?」
「ハイ!」
「分かった。ではそう伝えさせてもらうよ……」
こうして、俺達はロミック様の実子にして、冒険者を志すエレーナ様をパーティーに迎え入れる事になった。
同時刻、ハイレンド伯爵家屋敷———————
「エレーナ、本当に【トラストフォース】の皆様のパーティーで良かったのか……?認めていない訳でも信用していないって訳でもないが、本当に……」
「はい!既に決めた事でございます!」
エレーナ様が過ごす部屋にて、彼女の兄であり、ハイレンド家の嫡男であるガレル様がおり、少しばかり切羽詰まったような雰囲気が漂っていた。
「最終的な決定権はエレーナに任せるのは俺も同意しているし、父上も同じだ!それでもな、Cランクパーティーに身を置くのはいかがかと思うぞ!やはりBランクパーティーとかに任せる方が……」
「もうわたくしは大人ですのよ!お兄様もお父様も過保護が過ぎましてよ!」
「いや、しかしだな……」
「いやもしかしもございませんわ!ここから先はわたくしの道を進ませて頂きましてよ!」
「うぅ……」
ガレル様の言う事は最もだ。
どんなギフトを授かったとしても、貴族階級ましてや伯爵家のご令嬢として生まれたならば、いくらかの縛りを受け入れれば安定的かつ裕福な生活や未来が待っている。
それでも、エレーナ様は『付与術士』と言うギフトを授かった時、貴族令嬢として一生を過ごす事を蹴り、冒険者として自ら動いていく行動こそ、世の為人の為に役立てられると天啓が舞い降りたように自らの進路を決めたって話だ。
そのためにハイレンド伯爵家主催の選考会が開かれたのだった。
「可能な限りのバックアップを前提として今回は動いているが、エレーナは本当の本当に良いのか?本当に……」
「くどいですわよ!お兄様!これは、わたくしが決めた事でございましてよ!」
「だが、父上が何を言うか分かった事では……」
「ガレル!もう良い!」
ガレルが引き下がる事なく説得している中、威厳溢れる一声が部屋に響く。
その主こそ、ハイレンド伯爵家の当代当主であり、エレーナ様やガレル様の実父であるロミック様だ。
「父上……」
「ガレルも知っているだろう。エレーナはこうと決めたらテコでも動かないと……。それでもな……。エレーナは間違った事を今まで全くしておらん!世間が異色だのと思おうが、正しき行いに対して誠実に応援をするのもまた、貴族としての矜持ではないのか?そして、兄の務めではないのか?」
「父上……。しかし……」
「お前の心配も分かる。冒険者となれば様々な土地を巡り、様々な状況にも遭遇するだろう……。強大なモンスター、悪辣な輩、未開の場所で遭遇するトラブルなどがエレーナを、そして共にいるパーティーメンバーを襲うだろう……」
ガレル様はまだ不安を残しているのに対し、ロミック様は諦観した様子だった。
エレーナ様が決めた道を心から応援しようとしているのは見て取れる。
「冒険者として行動するには様々なリスクが付いて回るのは常々言い聞かせてきたうえでそう決めたのは、覚悟の上だ。そのための留学と修行なのだろう?エレーナ……?」
「はい……。私は自分の信じた道を行くだけです……」
「……」
ごく短くも大事な家族会議に終わりが近付きつつあり……。
「……分かりました。私から言う事はこれ以上ございません。ただですね父上……。エレーナが冒険者として安全かつ確実にスタートを切るための準備や支援は……」
「無論それはさせてもらう……。エレーナも『付与術士』と言うギフトを授かった冒険者である前にガレルの妹であり私の娘だ。最低限の支援を施す手筈は整えてある……」
「ありがとうございます!」
「その代わりエレーナ。何かあったらすぐに俺や父上に報告するんだぞ!いいな!?」
「もう、お兄様ったら……」
家族同士での話は纏まった。
ガレル様もエレーナ様の意志が本当に固い事を再認識した事で、受け入れたようだ。
こうして俺達【トラストフォース】は伯爵令嬢にして『付与術士』のギフトを持ったエレーナ様を仲間として迎え入れる事になった。
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