第80話 先達の冒険者達
目が離せない新キャラの登場です!
ロミック様主催の選考会が行われると知って参加した俺達。
その選考内容の過程で討伐対象のモンスターである“ミスリルメガリザード”と戦闘していたが、エレーナ様の協力もあって討伐に成功するのだった。
ロミック様の計らいで一晩お屋敷に泊めてもらえる事になってその日の夜は過ぎていった。
「【トラストフォース】の諸君!此度は選考会に参加していただき誠に感謝する!結果は残り数組のパーティーを吟味し終えた数日後に発表する!」
「皆様、ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします……」
「「「「はい!よろしくお願いします!」」」」
俺達はロミック様やガレル様、そしてエレーナ様らに見送られながら屋敷を去って行った。
行った時とは逆のルートで帰る事になり、その道中でレグザリアによって昼食を取ろうとしたが、客単価が気安く行ける値段ではない事もあって、真っ直ぐティリルへ向かった。
「結果、どうなるんだろう……」
「他にも参加している冒険者パーティーが何組かいるらしいけど、もしかしたら俺達以外のところへ行く可能性もあるんだよな……」
「選ばれたいっちゃ選ばれたいですね~」
「何にしても、後は待つだけです」
俺達は選考会の結果を待つだけの状況を思いながら帰路へ着いていった。
馬車に揺られて————————
「う~ん、帰って来た~~!」
「トーマさん!何か食べに行きましょうよ~」
「僕もお腹ペコペコですよ!」
「クルスと同じくです!」
俺達はティリルに到着してすぐに【アテナズスピリッツ】へ赴いた。
それからはいつもの定番メニューをいただく形で昼食だ。
「やっぱり冒険者にはギルド飯だよな~」
「お屋敷で食べた料理は凄かったけどこれですよね~」
「「ウマウマ……」」
ミレイユとクルスはお腹が空いているのか、いつもより気持ち多めに食べている。
昨晩と今日の朝はロミック様のお屋敷で夕食と朝食をいただいたが、いずれも専属の一流シェフによる高級な素材をふんだんに使った料理を食べる事になり、そして美味し過ぎた。
絶品だったのは確かだが、冒険者には武骨な揚げ物や取り分けられるピザなどが似合うと思う。
「ふぅ~食った食った!」
「冒険者にはギルド飯ですね~」
「うんうん……」
「ごちそうさまでした!」
「この後どうする?受けられそうなクエスト探しておきたいんだけど……」
「そうですね。もし受けるとなればその準備もしなきゃですけど……」
「結果が出るまでボーっと待ってるのもどかしいですからね」
「武具のメンテナンスも忘れないようにしておきたいです」
食事を食べ終えた俺達は掲示板の前に立っていたその時だった……。
「あら?セリカじゃん……」
「「「「!?」」」」
声がした方に視線をやると、男女二名ずつのパーティーが目の前に姿を見せた。
「聞いたよ~!ハイレンド伯爵家主催の選考会に参加したって~」
「あの~、どちら様で……」
「あ!ウィーネスさん!」
「セリカ、久しぶり!半年ぶりくらいじゃん!」
「ウィーネスさん達もお変わりないようで……」
「セリカ、こちらの女性とお知り合いなのか?」
「あ、紹介しますね!この方はBランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダーをしているウィーネスさんです!」
目の前にいるサバサバした雰囲気の女性はウィーネスさんと言う女性のようであり、話の内容からしてセリカと旧知の仲のように見える。
「アタシは【ブリリアントロード】のリーダーをやっているウィーネス・ルーラインって言うの!よろしくね!【トラストフォース】のトーマ!」
「初めまして!トーマ・クサナギと申します!」
あっけらかんとしながら挨拶をしてきたウィーネスさんはパーティーのリーダー格であり、Bランク冒険者の『軽戦士』だ。
ウェーブのかかった水色の髪をしたロングヘアーをハーフアップに整えながら、澄んだ紺色の瞳に小麦色が少しかかった肌をした活動的な雰囲気を与え、鍛えられた身体つきもバランスよく引き締まっており、顔立ちも見事に整った女性であった。
剣士と比べれば急所を守る事に焦点を置いたような軽めな装備に身を包んでおり、腰には如何にも上等な剣や短剣を携えている。
女性の身でありながら、Bランクパーティーを率いるに相応しい実力とリーダーシップを持っており、強力なモンスターを何度も討伐したキャリアを持っている。
同じ『軽戦士』であるセリカにとっては先輩に類するって事か……。
「全然砕けた口調で構わないって~。私達もハイレンド伯爵家主催の選考会に参加したから、ちょっとしたライバルって感じね!」
「まぁ、確かにそうですね……」
「そうそう、セリカは顔馴染みでも他のメンバーはあんまりって感じよね!紹介するよ!」
そう言うと、ウィーネスさんのパーティーメンバーも前に出てきた。
全員Bランク冒険者との事だ。
「俺はバダック・メトロスだ!よろしくな!」
バダックさんは『重戦士』であり、パーティーのサブリーダー的存在だ。
刈り込んだ茶髪と剛毅ながらも人当たりの良さそうな印象を感じさせる顔立ちをしたガタイのいい男性であり、豪快さを感じさせる鎧に身を包んでいる。
大振りな金砕棒を背負っている事から、パーティー内における攻撃と防御の要だ。
「僕はモレラ・シュナゴと申します。皆様、よろしくお願いします」
モレラさんは『アーチャー』であり、中遠距離攻撃の役割を担っている。
濃い黄色のミディアムヘアを中分けにした髪型が特徴的であり、真面目で理知的な印象を与え、動きやすさを備えたような甲冑に身を包んでいる。
冷静沈着に周りを見渡しながら最適解を見出せるパーティーの頭脳的存在であり、弓とボーガンを的確に使い分ける合理的な立ち回りを得意にしているっとの事だ。
「私はリエナ・チャイルよ。以後お見知りおきを……」
リエナさんは『魔術師』だ。
濃紺色のセミロングヘアにシャギーを利かせた髪型と濃いピンク色の瞳をしており、ウィーネスさんと対照的にクールさと落ち着いた印象を与える女性だ。
群青色を基調にしたローブを身に纏っており、手には自分の身長の2割短いくらいの杖を握っている。
モレラさんと共に中遠距離攻撃や魔法に関連する役回りを担っており、【土魔法】と【岩石魔法】、【水魔法】や【氷魔法】を得意としている。
パーティー編成から見ても、防御力を据えながら攻撃的な組み合わせのように見える。
「よ、よろしくお願いします……」
「アタシらもハイレンド伯爵家のご令嬢さんをどのパーティーに入れるかの選考会に参加していたのよ。支援や回復に優れたギフトを持っている冒険者探しをしているところで今回のお話に乗ったって次第なの……」
「俺達と同じですね……」
「本当にそれ!まぁ、私らは何とか課題となるクエストを達成できたけどね……」
「流石はウィーネスさんです!」
「まぁね!それに、伯爵令嬢が冒険者になるってんだから、きっとアクティブな方なんだろうなって思っているし、一緒に冒険できるなら是非にって……」
ウィーネスさん達も、俺達が参加していたロミック様主催の企画に出向いていた事が判明した。
考えや目的も俺達と同じようであり、願わくば選ばれたい想いでやったようだ。
接していて思ったが、ウィーネスさんらは気の良い人達だと見て取れ、セリカと親しくも適度な距離感でいる事から、パーティーメンバーを大切にしようとする姿勢を感じ取れた。
(ウィーネスさん達のパーティーだったら、エレーナ様を任せられるかもな……)
「トーマ?どうかした……?」
「いえ、何でも!俺達やウィーネスさん達も良い結果になればと思ってまして!」
「あら、嬉しい事言うじゃない!まぁ、どこのパーティーに身を置きたいかは選考の結果次第になっちゃうけど、その時は恨みっこなしよ!」
「勿論です!」
俺達の自己紹介を終えると、ウィーネスさん達はモンスター討伐のクエストを終えた手続きを済ませて去って行った。
「セリカ、ウィーネスさん達と旧知の仲だったんだね」
「はい、トーマさん達と出会う前は一時期ですけど、剣術や戦い方の心得を師事した事がありますので……」
ウィーネスさんのギフトはセリカと同じ『軽戦士』であり、同じギフトを持った女性同士って意味で意気投合し、稽古を付けてもらった事があると教えてくれた。
今は亡きセリカの兄であるトーゴさんが存命の時に面識を持ち、彼女が同じギフトを持っていると話を持ち掛けた際、ウィーネスさんは積極的に指導してくれたって話だ。
そのお陰でセリカは若いながらも、練度の高い剣術を身に付ける事を早い段階で叶えられており、それが強さの礎の一つになっている。
セリカも髪型をハーフアップにしているが、ウィーネスさんに倣ってやっているモノだそう……。
「ウィーネスさんも強いですよ。ケインさんやフィリナさんクラスの実力者ですし、パーティーメンバーやギルドの冒険者達からの人望も厚いですよ……」
「そうか……」
セリカからウィーネスさんについて補足のような説明を受けた。
【ブリリアントロード】の皆様、特にウィーネスさんは女性の身でありながら、【アテナズスピリッツ】の冒険者達からの人望や信頼も厚く、ギルドマスターであるカルヴァリオさんからも一目置かれていると言われている事実から、彼女が確かな実力者であるのはイメージできた。
「エレーナ様がウィーネスさん達のパーティーに加わったら、凄い事になりそうだな……」
「確かに……ってトーマさん!もう諦めてる感じですか!?」
「諦めてる訳じゃない!こう言っては難だけど、ウィーネスさん達ならばきっとエレーナ様を大切にしたうえでより活躍するって思っただけだ!負けていいって訳じゃない!」
「そうですか……。確かに、ウィーネスさん達だったら信じて任せられます……」
「私達が選ばれない可能性の方が意外と高かったりするかもです……」
ミレイユやクルスも意見を並べており、俺もそうだなと割り切りかけている。
望み通りの結果を諦めていないわけではないが、冒険者としてのキャリアは俺達よりも重ねてきたウィーネスさん達ならば信じても良いって気持ちも抱いている。
もちろん、選ばれるならば選ばれたい。
なんて気持ちや願望を抱く俺なのであった。
「それでも、当日俺達にできる事は全部できたと思っているし、後は待つだけだよ!選ばれなかった時は、また別の人を探せばいいだけだ!」
「それもそうですね!」
「確かギルドには、仲間探しのサポートを受け付けているシステムもあったはずです……」
「直接スカウトしてみるとか……」
俺達はイメージ通りの結果にならなかった時の代替案を考えながらその日を過ごした。
それからしばらくの間、もどかしい気持ちを抱きながら過ごしたのは、言うまでもなかった。
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