第79話 裸の付き合い!
温泉やサウナでよく見る裸の付き合いがテーマです!
ロミック様主催の選考会が行われると知って参加した俺達。
その選考内容の過程で討伐対象のモンスターである“ミスリルメガリザード”と戦闘していたが、エレーナ様の協力もあって討伐に成功するのだった。
ロミック様の計らいで一晩お屋敷に泊めてもらえる事になったのだが、入浴中にそのご本人がガレル様とザリオンさんを連れて入って来た……。
そして女子風呂にはエレーナ様が入浴しようとしていた……。
「ロ、ロミック様!ガレル様やザリオンさんも……」
「やあ。ウチの自慢の風呂は堪能しているかな……?」
「ハ、ハイ!いい湯加減です!」
「お二人共、そんなに硬くならずに……」
畏まる俺達に対し、ガレル様は丁寧に諭した。
上半身裸であるが、ロミック様は年齢を感じさせないくらい逞しい身体つきをしており、ガレル様も痩身痩躯ながらも鍛えられたような筋肉質な体格だ。
ザリオンさんに至っては偉丈夫に違わぬゴツゴツしながらもバランスの取れた身体をしており、冒険者時代や護衛で付いただろう傷が数カ所付いていた。
貴族やその護衛騎士ってやっぱり凄い……。
一方、女子風呂—————
「エ、エ、エ、エレーナ様!?」
「エレーナ様もご入浴になられる様子で……?」
「畏まらなくても大丈夫ですわ」
セリカとミレイユは驚きを隠せないでいたが、エレーナ様は優しく窘めた。
今のエレーナ様はバスタオルで肩から膝上までは隠れているものの、スタイルも抜群だ。
身長もセリカとミレイユの間くらいあるだけに脚も長く、出るところは出て引っ込んで欲しいところは引っ込んでおり、黄金比のように整っている。
少なくともセリカやミレイユよりも肌の透き通り具合が良く、新品の大理石のように美しい肌をしている。
「わたくし……。あなた達とやってみたかったんですよ!裸の付き合いってモノを!」
「「え……?」」
エレーナ様のあっけらかんとした笑顔を見たセリカとミレイユはポカンとした。
一方、男子風呂—————
「エレーナやザリオンから聞いているが、見事なまでの活躍をしていたそうだな!?」
「は、はぁあ……。えっと……」
「活躍と言いますか……」
今は裸の大将と言わんばかりのロミック様が伯爵貴族らしからぬ鷹揚な接し方に俺とクルスは少なからぬ困惑を抱いていた。
ガレル様もえらく好意的な目で見ており、ザリオンさんは我関せずな様子だ。
「お言葉は嬉しく存じますが、私も今回の“ミスリルメガリザード”の討伐もとい、選考会の件で考えている事がございまして……」
「ん?考えている事とは……?」
「実を申し上げますと、トーマさんは仲間に強大なパワーアップを施せるスキルを持っていまして、今回の一件もそれのお陰で何とかなって、それも【支援魔法】のような類と申しますか、何と申しますか……」
「ユニークスキルとは言え、指定された以上の強化を行ったので、選考にも影響するのではと思っているのです……。もちろん、どんな結果も受け入れます!」
「「「……」」」
ロミック様の人隣りは知ったつもりだが、選考に関連する内容を言ったら緊張してしまう。
それでも、隠したままでいるよりはマシだと思って打ち明けた。
ロミック様とガレル様は互いに顔を見やり、ザリオンさんは俺の方をじっと見ている。
「何だ?そんな事で悩んでいたのか?そんな事でふるい落としはせんよ!なぁ!」
「はい。むしろ興味を覚え始めているくらいです!」
「「え……?」」
ロミック様とガレル様から鷹揚な空気が流れ、俺とクルスはポカンとした。
一方、女子風呂—————
「本人のメンタルに比例して身体能力とスキルを一時的に上昇させるユニークスキルなんて、とても興味深いですわ!」
「あの~、選考に影響って事は……」
「いえ、そんな事ございませんわ!むしろユニークスキル持ちのお方と出会えるなんて運命的ですよ!」
セリカとミレイユも、俺がロミック様に話している事をエレーナ様に打ち明けたものの、リアクションはほぼ同じだった。
端的に言えば、俺がクエストの中で使った【ソードオブシンクロ】が選考に影響すると言う懸念は杞憂に終わったと言う事であり、むしろ興味や関心を覚えられた。
「実は参加される方々のリストを確認していた際、トーマさんが異世界から来たと言う事は既に把握しているのですよ」
「そ、そうだったんですね……」
「トーマさんについてはお父様が定期的に寄こしていただいたお手紙で数カ月前から存じ上げるようになってます」
「ロミック様から伺ってたんですね。トーマさんの事……」
エレーナ様がレリーチャに留学していた頃からロミック様がしたためた手紙による文通で近況報告をしていたが、その中で俺が異世界からやって来た事実を知ったようだ。
一方、男子風呂—————
「トーマ殿が異世界人である事を現在は【アテナズスピリッツ】のギルドマスターを務めるカルヴァリオから聞いていてね……。そして懇意にしているアスバン殿の紹介で君と出会う事ができたのは、私にとっては運命と思っている」
「えぇ……。私もこうして異世界人と出会えている事を神に感謝しているくらいです。ザリオンはトーマ殿をどう思っている?」
「はい。かつては冒険者としてキャリアを積んでいた私から見ても、剣術の心得がある方の教えが良いからか、若干荒削りな面はございますが、ポテンシャルが感じ取れると捉えております……。クルス殿も感知系スキルのクオリティはかなり高く、【支援魔法】なしでも易々と捕まらせないスピードやその辺の近接職にも劣らない強さもございますね……」
「「あ、ありがとうございます!」」
裸の男同士の空間の中、ロミック様はガレル様やザリオンさんを交えて俺達を褒め称えた。
ここまで評価されていたとは正直思っていなかった。
一方、女子風呂—————
「セリカさんは剣術も【風魔法】の練度はかなり高い上にギフトの特性を上手く活かした立ち回りや身のこなしが素晴らしいですね。ミレイユさんもその年で【氷魔法LV.2】を習得されるほどの魔法に関係するセンスは見事であり、応用力にも優れているから目まぐるしく変わる戦況に効果的な魔法の選択ができる知性は評価に値しますわ……」
「「お褒めに預かり光栄です!」」
同じくエレーナ様がセリカとミレイユを褒めていた。
どうやら好感触のようだ。
「【付与魔法LV.2】の使用をしないで“ミスリルメガリザード”を倒したのは本当に凄い事ですし、何よりも見ていて飽きないと感じさせますね!【トラストフォース】の皆様は!」
「ありがとうございます……」
「恐縮です……」
「ですが、わたくしの興味と今回の選考結果はまた別です……。後に控える数組を見定めてから結果を報告させていただく所存ですので……」
「「承知しました!」」
エレーナ様やロミック様も俺達に一層強く目に掛けているようだった。
だが、個人的な興味と結果はキッパリと分けてもいた。
今の俺達にできるのは待つ事だけだ……。
お風呂から出ると後は寝るだけだが、4人で使う寝室もまた広くて豪華でベッドもフカフカだった。
そして俺達は眠りについた。
日を跨ぎそうな時間帯、エレーナ様は自室で月を見ながら今日の事を思い返していると、ノックの音が聞こえた。
「エレーナ……。俺だ……」
「どうぞ、お兄様」
部屋に入ってきたのは、エレーナ様の兄でありハイレンド伯爵家次期当主のガレル様だ。
公の場では「私」と言っているが、兄妹二人きりだからか、「俺」と言っている。
どちらも質の良い寝間着に身を包んでいるが、それでも貴族ならではの品が伝わってくる。
「俺も、父上やザリオンと一緒にトーマ殿やクルス殿と話をしてみたよ……」
「そうですか……。わたくしもセリカさんとミレイユさんとお話しました……。お二人共素晴らしいポテンシャルの持ち主であり、よくできたお人柄でしたわ……。お兄様の方はどうでしたか?」
「俺から見てもトーマ殿やクルス殿両名はまだまだ伸びしろがあると見ている。ザリオンが個々の実力や連係プレーの巧みさを褒めていたぞ……」
「まぁ。お兄様やザリオンが認めるならば、私をパーティーに入れていいかどうかの水準は達していると思っていいかしらね……」
貴族階級であっても15歳になれば『職授の儀』を受ける事が義務付けられており、エレーナ様はもちろん、ガレル様も受けている。
その時に授かったギフトは『剣士』であった。
ガレル様は次期当主として様々な勉学や教養のための習い事を数多く受けてきたが、財力や名声高い貴族は悪質な輩に狙われる機会も多いため、護身の意味で武芸も収めている。
実力やレベルを上げるために腕の立つ騎士達と剣を振るって日々腕を磨いており、時には護衛付きでモンスターの討伐に赴いた事も多々あった。
その英才教育の賜物故か、Bランク冒険者並みの実力を持つまでになったが、万が一に備えて公務の場では常に護衛付きで行動している。
「【トラストフォース】各々の実力は認めている。お前のフォローに優れたスキル構成と修行で得たノウハウ、そして【聖属性魔法】があれば間違いなく強力なパーティーになるだろう……。しかし、まだ数組のパーティーが残っている。実力や精神性を中心に客観的に測った上で決めてもらうぞ……」
「もちろん、心得ております……」
「なら良い……。俺はもう寝るから、お前も早く寝ろよ」
「はい、お休みなさいませ、お兄様……」
話を終えると、ガレル様は足早に部屋を出て行った。
「【アテナズスピリッツ】と【ベスズプレイフル】からそれぞれからでBランクとCランクが数組……。うーん……」
エレーナ様は書類を見ていながら、悩ましい表情をしている。
そしてエレーナ様がどのパーティーに所属するかどうかの結果を待つだけの身となった俺達だった。
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