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SS 3話 ヒライト家の反応

トーマ達と関りのある貴族の日常を描きました。


「豊穣の国」と呼ばれるビュレガンセの中でも、屈指の農作物の収穫量を誇る街がある。

それがグリナムと言う街だ。

ティリルやイントミスほど石造りの建物が立ち並んでいる訳ではないものの、要所要所で緑や自然を感じさせる草木や小さな花畑があって、心なしか田舎町のように空気の清々しさと爽やかさ感じた。

実際、野菜や植物を扱う八百屋や花屋は数店あっていずれも中々大きく、出されている品物一つ一つが丹精込めて栽培されており、遠いところからわざわざ買って来る者もいる。

今日も多くの人達で賑わう中、一つのニュースが話題を攫っている。


「聞いたか?ここから少し離れた場所を拠点にしていた闇ギルドが壊滅されたって!」

「イントミスに拠点を置く【ベスズプレイフル】とティリルに拠点を置く【アテナズスピリッツ】が協力し合い解決したんだってな!」

「色々と大変な目に遭ったらしいけど、ヤバそうな奴らを倒したんだってな!」


俺達が携わっていた闇ギルドの調査や討伐に関係する話だ。

グリナムとイントミスは距離が結構離れているものの、話題が話題なのか、街中にそのセンセーショナルなニュースが広まるスピードは予想以上に早かった。

当然、ある人物達にもそれは届いている。


「アスバン様、この記事に映っているのは……」

「あぁ、トーマ殿が率いる【トラストフォース】の諸君らだ。加えて【ディープストライク】を率いるケイン殿。トーマ殿らはミクラの病気を治す一助を担ってくれて、ケイン殿らは私が治める領地を蝕もうとするモンスターが跋扈するコロニー殲滅を担ってくれた事があるからな……」


領主の執務室にて、嬉しそうに感想を漏らしている中年の人物がいる。

茶色をベースに立派さと謙虚さをバランスよく両立している仕立てが良いと感じさせる装いに身を包み、濃いグレーのオールバックの髪型に顎周りには丁寧に整えられた髭を結わえ、いかにも貴族の当主と感じさせる威厳と自信を感じさせた、年相応でいながらも端正に整った顔立ちをしていた。


「これほどの事をしてくれるとは、退屈させんな……」


グリナムを中心に数カ所の町村を治めるヒライト子爵家の現当主であるアスバン・ヒライト様だ。

アスバン様を始めとするヒライト家の方々とは、俺達【トラストフォース】がCランクに駆け上がるための試験クエストを受けた際に初めて面識ができており、それからは好意的な関係を築いている。

記事の写真には俺達の顔もあったので、活躍を喜んでくれていた。


「彼らのような冒険者が周囲の平和のために頑張ってくれるニュースを聞くのは、私にとっては良い知らせと同じなのだよ」

「確かに……」


アスバン様は鷹揚そうに笑っていた。




「トーマさん達、また凄い活躍をされていて、自分の事のように嬉しく思います」

「そうね、私のために頑張り戦ってくれた方々の吉報や活躍を聞くのが、細やかな楽しみになろうとしているもの……。チェルシアも随分と【アテナズスピリッツ】の、特に【トラストフォース】の皆様を気に入っているじゃない……」

「もう、お母様ったら……。それを言われたら対応に困りますわ」


ヒライト家のカントリーハウスに広がる中庭で、数名のメイドを後ろに抱えながらお茶を楽しんでいる二名の女性がいる。

一目で一流の職人が高級な素材で作ったと直感させる明るめの紺色を基調にした仕立ての良いワンピースに身を包む若い女性と、同じく質がかなり良く、赤みのかかった黄色がベースのオシャレなワンピースに身を包む妙齢の女性がいた。

どちらも緑を基調にした美しく整えられ緑色の髪をしている。

若い女性は綺麗に広がる草原のような若葉色のミディアムヘアーにウェーブがかかっており、もう一人は濃い緑のストレートのロングヘアーをしており、どちらも宝石のように輝く瞳と端麗で上品な顔立ちをしている。


その両名が、アスバン様の正妻、ミクラ・ヒライト様であり、その愛娘である、チェルシア・ヒライト様その方々だ。

ミクラ様は最近までは病気で衰弱していたが、俺達がクエストで集めた“キトサンフラワー”を中心にした特効薬と回復に向かうための薬を創る一助を担った事で、今ではすっかり健康体になっている。

病気で若干痩せこけ、弱弱しそうな面影は全く残っておらず、二十歳手前の娘がいるとはとても思えないほどに若々しく気品溢れる顔つきだ。


「私を助けて下さった【トラストフォース】の皆様、また凄いご活躍をなさったようですね」

「はい。彼らの活躍を聞く度に私はこう思います。お母様を助けて下さったのが【トラストフォース】の皆様で良かったと……」

「本当にそうですね……。我々の指名クエストを担ってくれる冒険者は他にも多くいらっしゃいました。依頼内容通りにこなしてはくれどもそれだけでしたが、彼らには確固たる信念とプライド、何よりも弱き人達を助ける気概と優しさを持っている。そう感じてならないわ……」

「私もトーマさん達には本当に感謝してもしきれません。特にトーマさん、五日間も意識不明になったって聞いた時は驚くばかりでした」

「チェルシアったら思わずお手紙を書いて従者の方に最速で郵送させていたくらいだったわね。因みにどのような内容を記したのかしら……?」


チェルシア様はミクラ様と俺達の事について思い思いに語り合っていた。

二人はすっかり俺達のファンになっているようで、その活躍を聞く度に嬉しくて清々しい気持ちにさせていた。


「トーマさん達の安否の確認はもちろん、私の最近の近況を主に綴っております。その中にはお父様とお母様の近況も含まれています」

「そう……」


ミクラ様が回復されてからはアスバン様もチェルシア様も俺達と初めて会った頃よりも活き活きと日々の仕事に勤しむようになっている。

ヒライト家が治める領地は緑豊かで野菜や家畜などの作物を持っている農家も多く、小さな農村や町をいくつも抱え納めている。

円滑に農作業が回るように働きかけ、街の発展のために様々な業務を日々行っている。

移住に関する事務作業や商売を営む商人の開業手続き、冒険者ギルドの仲介や領地の安寧を守るための警備などと多岐に渡る。

貴族と聞けばさぞ贅沢な暮らしをしている者も多いだろうが、皆が皆そうと言う訳ではなく、アスバン様が現当主を務めるヒライト家は毎日豪遊どころか領地で暮らす人々の生活や未来を常に考えて行動される素晴らしい方々だ。

だからこそ、その土地で暮らす人々のほとんどがヒライト家の皆様を心から慕い、ミクラ様が全快したと知った際は誰もが喜んだと言う。

それほどまでに人望があるのはすぐに分かった。


「おや、チェルシア。先ほどトーマ殿の名前が出ていたのだが、彼に関する話かな?」

「お父様!はい、トーマさん達の活躍を聞く度に嬉しく思います。彼等のような冒険者達がより報われるように私達が働きかけるのも良いかとも考えています」

「そうかそうか。だったら今以上に【アテナズスピリッツ】の冒険者達がより活躍できるようにしつつ、グリナムを中心にした場所がより栄え、より安心していただけるような仕組みを整えていきたいと考えている。ミクラ、チェルシア、協力してもらえぬか?」


アスバン様は自分が治める領地をより良い場所にするため、冒険者が活躍しやすくするための考えと理念を説いていた。


「もちろんです……」

「このグリナムという街を、より素晴らしい場所にしていきます!」


緑と清らかな空気がそよぐ空間の中で、ヒライト家の面々は更なる発展と国への貢献に勤しむ気持ちを新たにするのだった。


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