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第64話 それぞれの死闘①

サブタイトル

【ディープストライク】 VS 闇ギルド幹部 弾け合う剣閃


【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノさんが協力を申し出る極秘クエストとして、イントミスで密かに蔓延る闇ギルドの調査を命じられた。

裏切者の魔女であるゼルナと闇ギルドの幹部であるビデロスによって魔改造されたドキュノを見て、俺達は戦慄していた。


「う、嘘でしょ……?」

「あれが、ドキュノだって言うの……?」


体表が赤褐色に染まった肌に口から僅かに覗く長めの牙と生気が抜けたような白髪、漏れ出す禍々しい魔力と共に虚ろで尋常ならざる眼差しをしているドキュノを見たセリカとミレイユは戦慄していた。


「面影で分かります。あれはドキュノさんです」

「信じられないようだが、そうらしいな」


クルスもドキュノが変わり果てた姿だと直感し、俺もそう受け止めざるを得なかった。

そしてその隣にいるのは、俺達が追っていた闇ギルドの幹部であるビデロスだ。

ビデロスもまた、黒くおぞましいオーラと共に俺達と向き合っていた。

ゼルナの姿は見えていないが、今はビデロスとドキュノに集中するしかなかった。


「ではお前達で、この実験体の力を見計らわせてもらうぞ……」

「ゴォォォ……」

「!!」


ビデロスの右手には漆黒に塗られた剣が握られており、醜い眼差しを俺達に向けながら、ドキュノをけしかける。

俺達も戦闘態勢に入る。


「ギイィィ!」

「「「「くっ!」」」」


ドキュノは一瞬で距離を詰めて槍を突き出してきた。

俺達はそれを横っ飛びで躱すが、通常のドキュノよりも遥かに速く鋭い突きだった。


「トーマ、皆!」

「貴様の相手は俺だ……」


俺達に視線をやったケインさんの近くにはこちらも距離を詰めてきたビデロスが迫り、刃が襲ってくる。


「フッ!」

「ほう、今のを受けるとは中々……」

「アンタの相手はケインだけじゃないわよ!【武術LV.1】『下段蹴り』!」


ケインは一瞬でビデロスの刃を受け止め、背後からフィリナさんのローキックが放たれる。

ビデロスは咄嗟にバク転をして躱す。


「【岩石魔法LV.2】『ロックカノン』!」

「他愛もない」


【ディープストライク】の『魔術師』であるニコラスさんの杖から3メートルはあろう大岩を打ち出すが、ビデロスは容易く両断した。


「【剣戟LV.2】『地雷斬』!」


ケインさんは瞬く間にビデロスの懐を侵略し、強烈な唐竹割りを見せる。

ビデロスは躱して距離を取るも、壊れかけた石造りの建物が完全に真っ二つになった。


「なるほど。Bランクパーティーと言われるだけはあるな……」


ビデロスの額からはほんの僅かだが血が流れていた。


「貴様には闇ギルドについて全て謳ってもらうぞ!」

「ふん、簡単に情報はやらんよ」

(久しぶりにあれを使うか……)


ケインさん達は体制を整えてビデロスと向き合う。

しかし、ビデロスの表情に余裕は全く消えていない。




「ガアァァァ!」

「くっ!」

(速い上に重い!まともに受けるのはマズイわね……)


ドキュノの凄まじい槍による連続突きにセリカは避け続けていた。

魔改造による強化や槍の力なのか、その槍捌きは並みの冒険者では目で追うのが難しく、それでいてズシンと来そうな重さを感じたセリカもいたずらに近付けないでいる。


「ゼアァ!」

「フッ!」


ドキュノの振るった槍からは黒いカマイタチが放たれ、セリカはダッキングで躱し、当たった木造建築は見事に切り落とされた。

剣を振るえば斬撃が飛ぶなんて事は漫画やゲームでもよくあるが、本当に使える敵を見ると戦慄を覚えた。

自分や味方がそれを可能にできれば格好良くて心強いだけに、敵に使われたら厄介な事この上ない。


「【炎魔法LV.1】『フレイムランス』!」

「ハア!」

「ギイィィ!」


少し離れた場所からミレイユの【炎魔法】による炎の槍とクルスの投げナイフが同時に跳んで来るが、ドキュノは一振りで弾く。


「ここだ!」

「ガアァ!」

「【剣戟LV.1】『五月雨斬り』!」


俺は間髪入れずにドキュノの間合いを一気に詰めて、【剣戟】スキルによる連続斬りを浴びせまくる。

槍を使う人間とやり合うのは初めてだが、Cランクに上がる前に受けたクエストで、レア度Dの水棲系モンスターである“フィッシャーナイト”ではそれに近い戦闘をした経験はある。

“フィッシャーナイト”はモンスターでありながら質の高い槍捌きを見せており、凄い反面、懐に潜られたら後手に回りやすい欠点を持っており、それを活かした戦法に打って出た。


(至近距離で釘付けにしていく……。【ソードオブハート】や【ソードオブシンクロ】は逆転やチャンスの時まで取っておく)

「ギイィィ!」


ドキュノを後手に回しかけたその時だった。


「バギャアア!」

「!?」

「ガァァァーーー!」


ドキュノの足元から黒く禍々しい魔力が吹き上がり、俺は咄嗟に距離を取った。

そして鈍く響く叫び声がこだました。


「何なんだあれは……?」

「魔力を放出しているみたいですね」

「強い上に禍々しい……」

「……」

(ドキュノさん……)


俺達は一カ所に集まり、更に力を見せようとするドキュノを見て表情を強張らせていた。

クルスの目には悲しさも混じっているようだった。


「ギャオオォォォ!」

「「「「!?」」」」


ドキュノが握る槍を斜め下に勢いよく刺した瞬間、どす黒く大きな魔力による衝撃が放たれ、大きな爆発を起こした。




「ビデロス!何故闇ギルドで暗躍した上に彼をあのような姿にしたんだ!?」

「我々の目的のためだ!」

「目的だと!?」


俺達から数百メートル離れたところで、ケインさんはビデロスと撃ち合っている。

フィリナさんは格闘術、ニコラスさんはエルニさんを守りながら魔法で援護している。


「我々の目的は魔改造によって究極の暗黒騎士団を作り上げ、この世界を掌握する事であり、ドキュノと言う男はその実験体だ」

「そんな目的のために、一人の冒険者を傷付け弄んだのか!?」


ビデロスの発した言葉にケインさんは怒りを滲ませる。

ケインさんもドキュノの最近の行動には頭を悩ませていたものの、同じギルドに属する冒険者を私利私欲のために魔改造したビデロスと闇ギルドに強烈な憤怒の表情を見せている。


「今回の魔槍は槍の使い手が対象だったのでな。ゼルナが上手く取り入ってくれたお陰で簡単に被検体を手中に収める事ができたよ」

「クズね……」

「外道め!」

(醜き所業だが、認めざるを得ない剣腕だ)


ケインさんは怒りを見せながらビデロスに剣を振り下ろし、受け止められてしまうが、後退させて見せた。

Bランク冒険者の『剣士』であるケインさんはギルド内だけでなく、ビュレガンセ国内でもその名が知れ渡っており、正に達人と言っていい実力者であり、フィリナさんも同様だ。

そんなケインさんとフィリナさんの二対一でも互角に撃ち合うビデロスも腹立つ事に実力は本物だ。

そして互いに中間距離で構えている。


「なるほど、俺を楽しませてくれる剣士は久方ぶりだ。特別に見せてやろう。私の力を……」

「……」


ビデロスは口角を釣り上げながら剣を振り上げ、ケインさんも青眼に構える。


「【暗黒剣戟LV.2】『ダークバースト』!」

「「‼‼」」

「フィリナ!ニコラス!エルニを守れ!」


ズバアアァァ!


ビデロスが振り下ろした剣から黒い衝撃が力強く放出され、地面を抉っていた。

フィリナさん達は開いた口が塞がらなくなっている。


「ほう、やるではないか……」

「そりゃどーも」

(【剣戟LV.2】『地雷斬』で迎え撃たなきゃヤバかったな……)

「ケイン!大丈夫なの?」

「平気だ!そっちこそ無事か?」

「問題ないです!」


ケインさんは攻撃技による防御方法でダメージを最小限に抑えていた。

ミスリルの剣を使用しているとは言え、まともに受けるのは難しいとその場で判断し、強力な斬撃で迎え撃つ形を取らなければ、やられていた確率が高かった。

攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。


「そのまま受けるのではなく、攻撃技でこれを防ぐとは大したものだ。お前の剣腕とセンス、認めざるを得ないな。だが……」

「‼」

(何だ……?)

「ケイン!?」


ケインさんは一瞬、酩酊したような感覚に襲われた。

その場で収まったが、異常を悟った。

ビデロスは間を詰めるも、ケインさんは勘と反射神経で止めて見せる。


「この技は受けた相手を不規則に襲うめまいを引き起こす状態異常の効果もある。最小限にダメージを抑えたが、余波までは流し切れずに浴びてしまったようだな。もっとも、命のやり取りに卑怯はないがな……」

「ふん、どうという事はないさ……」

「ビデロス!アンタの相手はこっちにもいるよ!」


ビデロスの説明にケインさんは動じないような表情を見せているが、内心では危機感を持ち始めている。

自分と同等以上の相手を前に不規則にめまいが襲うと言うのは、凄まじい剣の撃ち合いにおいて隙を晒しやすくするディスアドバンテージでしかない。


ドオオオオオーーン!


「どうやらドキュノの方も決着が着きそうだな……」

「!」

(トーマ!)


大きな爆発が起きた方に目をやるビデロスとケインさん。

ケインさんはもう一つ起きている戦いにも少なからぬ思案を巡らした。


(こいつを倒してからトーマ達の下に行くつもりだったが……。どうやら向こうも深刻そうだな……。)


ここからケインさん達、そして、俺達に更なる苦境が迫りくるのだった。


「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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