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第60話 思わぬ収穫

思わぬ展開を迎えます!


【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノさんが協力を申し出る極秘クエストとして、イントミスで密かに蔓延る闇ギルドの調査を命じられた。

Cランクパーティー【パワートーチャー】に所属している魔術師であるゼルナの提案と行動で、闇ギルドの調査に進展をもたらす手がかりを得ていた。


「ビデロス・ガルラン……。こいつが闇ギルドのトップかその側近、あるいは幹部って事か」

「あぁ、そう思って間違いないですね。これでトップに近付いてきたよ」


イントミスに拠点を置いている冒険者ギルド【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノさんは今回の闇ギルド調査のリーダー的存在であり、Bランク冒険者パーティー【ディープストライク】のリーダーであるケインさんと会議をしていた。

フィリナさんも同行しているが、基本言葉は発していない。


「この男と共に、一網打尽に出来ればいいがな……」


ルチアーノさんの手には一枚の二人の男性が陰気な雰囲気がするバーでやり取りしているような写真を握りしめていた。

少し長めな金髪のオールバックをした中身が詰まった土のような茶色をした端正な顔立ちをしている男性がおり、それこそがビデロス・ガルラン。

今追っている闇ギルドの幹部格だ。




イントミス中央通り——————


「あった。『ショックボム』と普段使う炸裂弾に……」

「体力や魔力を回復させるポーションも買っておこう!」

「『リペアフルード』も少し補充しよう」

「準備は大事だからね」


俺達はアイテムショップを訪れていた。

成金の貴族によってゼルナを連れ出されるのと引き換えに手に入れた証拠は闇クエストにおける取引内容が記されており、それをギルドに提出すると同時に重要参考人として捕虜となり、事情聴取を受ける流れになった。

ルチアーノさんやケインさんから取り調べの内容が固まるまでは最低限の見張りで良いと通達され、日が沈む直前までは自由行動となった。

もちろん、怪しそうな人間に目を光らせる事自体は決して怠らないようにしている。

闇ギルドの幹部格に繋がる情報の精査と捕虜の聴取が固まった後は更に踏み込んだ行動を取る可能性があるため、できる準備はしていると言う訳だ。


「にしても、夜ほどではないけど昼もまあまあ賑わっているんだね、イントミスって……」

「娯楽施設を多く抱えていますので、昼でも営業しているお店を中心に盛り上がっていますからね」

「眠らない街って、伊達に言われていないわね……」

「少なくとも僕は、クエストや用事がなければ絶対にいきませんね」


イントミスは夜の方が栄えているものの、昼間でもダーツやビリヤードなどの遊楽を楽しむ施設もそれなりにあり、自分の名前を売るために路上で曲芸を始めとするパフォーマーもいるため、明るい時間帯でも賑わっている。

俺達が普段拠点にしているティリルとは違う活気を改めて感じた。


「そう言えば、ドキュノさん達は朝一番で会って以来何をしているんですかね」

「今日……と言うより俺達がイントミスに訪れて以降、クエストに関連する事以外の絡みは無かったんだけどね」

「それはそれでいいですよ!クルスを交えて突っかかられるのもいい迷惑ですから!ねぇ、クルス!?」

「え?まぁ、そうですね。今となってはもう、昔の話ですから……」


セリカとミレイユはドキュノらに対する怒りを今も抱いている一方、クルスはどこか複雑な表情を変えられないままだった。




「お、よくやるな~、あのピエロ達!」

「動きがユニークですわ」

「うんうん、凄い凄い」

「そうだね」


ドキュノらもほんの僅かな休息を楽しんでいた。

カズナとフルカの両名はデートでもしているような雰囲気のドキュノとゼルナを見ていて複雑な表情をしていた。

ゼルナに対して好意的な印象は今でも抱いていないカズナとフルカであるが、ゼルナが闇ギルドの本丸に繋がる証拠を掴んで見せたと知り、ドキュノがいたく褒め称えている事や、ケインさんの解決に繋がった言葉を聞いて、迂闊に彼女へ絡めなくなっている。

ゼルナが【パワートーチャー】に加入した時は歓迎ムードだったカズナとフルカだったが、ドキュノが気に入っているとは言え、自分達を差し置かれているような状況に少なからぬ苛立ちを覚えていた。

雑用を押し付けて足を引っ張ってやろうとしたが、想像以上に完璧にできている上にドキュノからも窘められてしまう場面も最近増えたりで、内心フラストレーションを溜め込んでいる状況が続いていた。


((何なんのよ?あの女~~~!))


クルスが出て行ってゼルナが入るまでは清々した気持ちで過ごせたはずが、今ではクエストに関係する事以外は彼女に首ったけのドキュノに不満が込み上げているカズナとフルカは今の状況が面白くなかったのだ。


「ねえ、ドキュノ。今日の役割って……」

「あぁ分かってる!みなまで言うなって~」

「ならいいけど……」

「……」


フルカが声をかけてものらりくらりな対応に表面上は取り繕えども、内心は不服の気持ちでいっぱいであり、それはカズナも同じだ。

「ゼルナには感謝してるけど、このままじゃ納得できない」……と。




そして同日の夜——————


[こちらトーマ、裏通り何も異常なし]

[こちらセリカ、同じく異常なしです]


今回俺達【トラストフォース】は裏通りの張り込みを担っていた。

俺はミレイユと、クルスはセリカと行動を共にしており、怪しい人物がいないか街を見回っていた。

ケインさんらから本格的に動くのは近日中にあると聞かされているので、闇ギルドに繋がる情報を得られればラッキーと言うスタンスで基本的には見回りの役割を担っていた。


「夜になると本当に賑やかって言うか、騒がしいと言うか……」

「夜のイントミスに数日も身を置いたらなれてきちゃいそうですね。それを考えたら、ティリルがどれだけ大人しい事やらって思いますよ」

「それは同感だな」


不審人物の警戒は怠らないようにはしているが、本当に賑わいが絶えない街だと実感した。

ティリルが程よい居心地を感じさせる雰囲気があるとすれば、イントミスは普段の日常では味わえないだろう世界を見せてくれるかもしれない雰囲気を見せている。

気分を盛り上げ、沈んだ空気を忘れさせるムードを出そうとするのは俺も嫌いではない。

だが同時に、怪しくも悪質ささえ感じる阿漕な取引も裏であるのもまた事実だ。

何一つトラブルを抱えていない街は、絶対にないのだから。


「現に分かっている上で俺の意見を言わせてもらうけど、華やかで絢爛な光の世界ほど、裏の世界がある気がするんだよな」

「……」


俺がそう言うと、ミレイユも渋い顔をしながら聞いていた。


「トーマさん、そうかもしれないですけど……」

「キャッ!」

「!?」

「ご、ごめんなさい!」


俺とミレイユの下に一人の人とぶつかった。

イントミスの市民と一瞬思ったが、フードが付いた少し汚れたコートの下から女性の声が聞こえ、少なからぬ血が流れている右腕を目に捕らえた。

すると女性は足早に近くの裏路地へと去って行った。

スリかと思ってふと身の回りを確認したが、幸い何も盗まれていなかった。

ホッとしたのも束の間……


「おい!さっきの女、向こうに行ってなかったか?」

「あぁ、この近くにいるはずだ!」

「何が何でも捕まえねぇと……」


するとチンピラのような男性2名が先ほど女性が裏路地へと入った道に走って行った。

さっきの女性の状況や「捕まえねぇと?」と言う言葉を聞いて嫌な予感と放置するのはマズイ何かを感じ取った。


「ミレイユ、俺達も!」

「ト、トーマさん!?」


俺はミレイユを連れて、先ほどぶつかった女性と男性2名が入った裏路地に踏み入った。




「ハァ、ハァ、ハァ……」

(何とか、ギルドまで逃げ切らなきゃ……)


喧騒から明らかに離れたような暗い裏路地に入った女性は息も絶え絶えになっていた。

行き止まりの壁を見て振り返った瞬間……


「よう、見つけたぜ!」

「!?」


先ほどの男達が女性を見付け、下卑た笑みをしながら近づいている。

女性は怯えながら後ずさりするが、挟み撃ちになってしまった。


「あの話を聞いたならば活かしちゃおけねぇな!」

「悪く思うなよ」

「あ、あぁぁ……」


男達が抜いた刃物を見た女性は絶望したような表情をしている。

その瞬間……


「【氷魔法LV.1】『フリーズショット』!」

「「うおっ?」」

「!?」


男達の下半身と両腕が氷漬けになり、彼らはその場を動けなくなった。


「その人に何をしている?」

「あぁ、誰だよ!?」


男達が声のした方角へ顔を向けると、俺とミレイユがいた。

ミレイユの【氷魔法LV.1】の『フリーズショット』を男達にぶつけたのだ。


「何で【氷魔法】をぶつけてくるんだよ!これを外せ!」

「外せと言われて外すわけないでしょ!」

「お前らには関係ねぇだろ!」

「ふん!」

「ぐえ!」


男達が喚き散らす中、俺は一人を殴りつける。


「何でこんな事をしているんだ?その女性が何をしたってんだ?」


ミレイユは女性を守るように近付き、俺は怒りの表情を男達に向けた。


「そいつらか?女性を追いかけ回している輩達は……?」

「あ、ケインさんとフィリナさん」

「ありがとうね。トーマ君、ミレイユちゃん」


ケインさんとフィリナさんが現れた。

ミレイユが咄嗟にテレピアスで状況を伝え、一番近くにいたケインさんとフィリナさんがダッシュで駆け付けてくれたのだ。


「被害に遭った女性とは……ってイズノちゃん!?」

「ケインさん、フィリナさん、ご無沙汰しております……」

「追われてた女性って、イズノちゃんだったの?また何だってこんな」

「お二人はこの方をご存じなんでしょうか?」

「あぁ、そうだ。彼女は【ベスズプレイフル】に籍を置いているイズノさんだ!ギルド内の若手有望株のパフォーマーなんだ」

「私達も彼女の踊りを見た事が数回あるけど、凄く上手なのよ!」


イズノさんと言う女性は『踊り子』であり、ケインさんやフィリナさんとも知り合いだって話だ。

戦いとは無縁そうなギフトであるが、『踊り子』には支援型と攻撃型に分かれるが、大体が前者であり、後者はあまりいないとの事だ。

パフォーマーと言っても最低限の生活費は稼げるものの、金策で冒険者パーティーとアライアンスを組む形でクエストに赴くケースがある。

イズノさんの場合はパフォーマーとしての収入は普通の人よりそれなりに多いと知った。

そう言えばゲームの世界でも、明らかに戦闘とは程遠く見える職業だけど冒険に出るってパターンもあったような気がするな。


「あのケインさん、こいつら何が何でもイズノさんを捕まえて命を奪おうと躍起になっていました」

「何故こんな真似をした?正直に答えろ」

「「ヒィ!」」

(何ちゅう威圧感だよ……)


俺から聞いた言葉でケインさんは男達に強烈な睨みを利かせプレッシャーをかけた。

男達は明らかに自分達より強いと気取ったのか、顔がみるみる青くなった。


「あ、あの、皆さん……」

「どうしたのイズノちゃん?」

「私、見たんですよ……」


殺気立つ雰囲気の中、イズノさんが手を挙げて言葉を発した。

怯えた表情だが、勇気を振り絞って何かを言おうとしている様子だ。




「ショークラブの楽屋で、貴族らしき人と見知らぬ男性が賄賂を渡しているところや人身売買の話をしている場面を……」

「「「「何!?」」」」


その内容に驚くしかなかった。

イズノさんは違法な取引をしている場面に遭遇してしまい、勘図かれた相手が追手の男達を差し向けたのが読めてしまった。

その上貴族までもが絡むなんて……。


「イズノさん、もしかしたらで構わないのですが、この写真の男性だったりしませんか?」


ケインさんは懐から写真を取り出して、イズノさんに見せた。


「あ、はい。一瞬顔が見えたのですが、間違いありません。この人です。」

「……」


イズノさんがそう頷くと、握った写真を見ているケインさんの顔が深刻になっている。

その人物とは……。



他でもない、今追っている闇ギルドの幹部格であるビデロス・ガルランだ。




「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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