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第58話 イントミス調査スタート!

目が離せなくなりますよ!!


【アテナズスピリッツ】におけるギルドマスターであるカルヴァリオさんから、旧知の仲である【ベスズプレイフル】のギルドマスターであるルチアーノさんが依頼する極秘クエストとして、領内で密かに蔓延る闇ギルドの調査を命じられた。

俺達以外ではクルスがかつて所属していたCランクパーティー【パワートーチャー】と

実力者揃いのBランクパーティー【ディープストライク】に白羽の矢が立った。


イントミス名物のショー会館『プリマブーラ』


娯楽施設を多く抱えるイントミスにおいて随一の規模を持つエンターテインメントの会館であり、煌びやかな外観と華やかな内観は、来る人を楽しませるようなイベントや行楽が何かしら開かれている。

そんな所で……


「では、準備はよろしいかな?」


派遣されたメンツの中で、Bランクパーティー【ディープストライク】のリーダーであるケインさんを筆頭に動いていた。


「我々は観客に紛れて、その周囲を探る」


ケインさんが率いるパーティーである【ディープストライク】は観光を目的とした観客に紛れて周囲を観察する役割を担った。

もちろん、観劇や娯楽を趣味にするような遊び人や成金貴族のような格好で変装だ。


「俺達は建物の裏通りにある見張りや怪しい人間の対応ですね!分かりました!」


クルスがかつていた【パワートーチャー】のリーダー格であるドキュノらは建物の裏道を始め周囲の見張りを担う役割だ。


「我々はスタッフに扮して、不審な動きを見張り、感知したら共有するって事ですね!」


俺達【トラストフォース】は裏方の一員として潜入及び館内で不審な動きがあれば速やかに報告する役割を担う。

今回派遣されたメンバーの中では名前が知られていない確率の高い俺達が楽屋やその近辺を動き回れる仕事を担ったって訳だ。

館内のスタッフはモノクロ調のスーツを着ているのだが、俺達もそれに扮する形で潜入している。

日を分けて、今いる建物以外にも客やスタッフに紛れながら調査していくと同時に、目立たない裏通りや酒場にも入って怪しい人物がいないかも確認していく。

何かあれば、ルチアーノさんから借りた耳飾り式の通信用魔道具『テレピアス』と言うアイテムで情報共有していく。


「いよいよだね……」

「僕はこう言うクエストは初めてですから気を引き締めます!」


館内の廊下は俺とクルスで巡回する事になった。


「昼でも夜でも何かしらの演目をやっているのね」

「夜の方が華やかで派手な舞台をやるって話よ……」


エントランス付近ではセリカとミレイユが見張る事になった。

その近くには、演劇やショーの観戦が趣味ですとアピールするような遊び人みたいなイメージの服装をしたケインさんとフィリナさん、貴族風の格好をしたニコラスさんとエルニさんがカップル風みたいな様子を見せるようにいた。


[では、作戦開始!]


テレピアス越しにケインさんからの指示が飛び、俺達は配置に着いた。

ケインさん達は観客に、俺達はスタッフに変装して内部の調査を行い、ドキュノらは建物付近や裏道を見張って怪しい人物や痕跡がないかのリサーチを始めていく。

夜のショーはまるでクラブのように若い男女が集まってワイワイ騒ぎながらエールを始めとするお酒を楽しんでおり、賑やかのような騒がしいような雰囲気だ。

それから数時間後——————


「にしても、あれだけの音量と騒ぎなのに余り音が聞こえてこないな……」

「特殊な素材でできた部屋を使っているらしいですね。でないと他にパフォーマンスを見せている役者や楽しんでいるお客様にも迷惑がかかるので……」

「そうだよな~」


クルスの解説で、同時に芸やショーを行っても問題ない理由が分かってきた。

そのくらいの防音仕様をしないと、うるさいったらありゃしないからな。

それにしても流石は歓楽街きっての娯楽施設、賑わいだけでも街のお祭り行事と同等以上の盛り上がりと言うか、ちょっと騒々しいな……。


「見たところ、怪しい行動を取る人はいない感じだね」

「トーマさんやクルスの張っているショーエリアは若い人達で盛り上がっているって聞いてるけど、こっちは少し厳かよね」

「まあ、お金持ちの方々が多いから……」


セリカとミレイユはセレブな雰囲気を出す人が楽しみそうな演劇系のエリアを張っている。

言われて見れば、仕立ての良い服装に身を包んだ服装の人が多く参加しており、納得させるには充分な場面だ。

ケインさんとフィリナさん、ニコラスさんとエルニさんらも会場内に入っては不審な動きをしているかを見てくれているが、今のところ収穫なしだ。

となれば、後は周辺を見回っているドキュノらの報告が控えているくらいか……。


[こちらドキュノ!皆さん、聞こますか?]

[こちらケイン。ドキュノ、どうした?]


すると俺達の耳に付けているテレピアスからドキュノから声が飛んで来た。

何かあったとすぐに理解した。


[先ほど裏路地で、スリをしようとしていた奴を捕まえておきました。後ほど指示された場所まで連れ出しときます]

[分かった。俺達も直に向かうから、その相手を見張って欲しい]

[了解です!]


どうやらドキュノらが建物の目立たない通りでスリをしようとしていた相手をひっ捕らえたようだった。

ケインさんとフィリナさんがその場で合流して尋問したところ、闇クエストによるものであり、後に駐屯している王国から派遣されて駐屯している衛兵らによって捕虜として確保される流れになった。


「ドキュノ、手間をかけさせたな」

「いえ、滅相もないです」

「何にしてもありがとう。引き続き頼む」

「はい」


ケインさんはそう言うと、ドキュノ達は持ち場へと戻った。

クルスとの一件もあってドキュノらには目を光らせていたが、意外と真面目に仕事をしているようで少しだけ安心した。

しかし、その相手は本当に末端のコソ泥であり、胴元まで繋がる情報を得るに至らなかった。

それから夜が更けていき—————


「皆、今日はご苦労だった。今回は窃盗事件の一つを解決したままであるが、明日以降も引き続き調査を続けていく」


ドキュノらが対応した窃盗犯の対処以外に目立った事件は起きておらず、今日の分はこれで終了となった。

ケインさんら【ディープストライク】の面々はルチアーノさんへの報告のために一旦別れ、俺達はギルド近くのホテルに泊めてもらえる事になった。


「うわ~凄い!」

「映えそう!」

「これは良いお部屋ですね!」


セリカとミレイユとクルスは宿泊する部屋を見て、かなり感心している。

俺達四人で過ごすには結構広く、それでいて必要な家具や備品もしっかり揃えられており、ホコリ一つないくらいに清潔だった。

ハッキリ言って、しばらく滞在するにしては豪華な気がする。


「にしてもクエスト込みとは言え、こんなにいいホテルを無料で使ってもいいのかな?」

「このホテルって、ルチアーノさんがギルドマスターになった際、資産形成の意味で買ったってケインさんから聞きました……」

「凄いんだな、ギルドマスターって……」

「言っても、私にとってのギルドマスターって、カルヴァリオさんしか見た事がないんですよね」

「確かに、ルチアーノさんって理性と陽気さをバランスよく備えているあの人とは違ったタイプのギルドマスターって思っていますけど、いざと言う時には頼りになる人ですよね」


俺はともかく、冒険者として多くの土地に行った事があるだろうセリカ達も、所属しているギルド以外のギルドと本格的に手を組んで、カルヴァリオさん以外のギルドマスターと触れ合うのは初めてだった。

だからこそ、ルチアーノさんのようなタイプのギルドマスターを初めて見た時は少し戸惑ったのだろう。

それでも、決める時は決め、やる時はやってくれる人だと言うのは理解しており、それは俺達も同じだ。

でなきゃギルドマスターを務められるはずがないのだから。


「それにしてもトーマさん、明日以降は今日やった事をベースに、今日の建物以外にも見回る場所やチェック項目を時折変えるってケインさんも言っていましたけど……」

「うん、観客として潜入するのはケインさんらがメインになるけど、裏で調査をするのは、俺達とドキュノらが率いるパーティーが中心になるからね」

「知名度の一点で言えばケインさん達のパーティーは、私達の中では最も知れている可能性があるからこその編成ですからね」

「私達は知れ渡っていない可能性によるもの、ドキュノらは知れ渡りつつもそれを利用した抑止のサポートって話ですし……」


今回の極秘クエストも、国内では知れ渡っているパーティー、今にも知れ渡ろうとしているパーティー、本格的に知れ渡っていないパーティーに分けて動く事になっている。

ギルド側もCランクパーティーで頼る伝手は他にもあったのだが、動かせる人員や状況を鑑みて今回の編成になった。


「クルス。俺は今でも嫌な印象は持っているけど、ドキュノらはやるべき役目を果たしているって捉えているんだよ。前に所属していた時もそんな感じだったのかな?」

「はい、モンスター討伐や調査系クエストにおいてはカズナさんやフルカさんとしっかり連携を取って動いていましたし、冒険者としてのキャリア自体は割と長く積んでいます。人柄は好きではないのですが、実力者であるのは確かです。カズナさんやフルカさんも同じです」


クルスは平気で嘘をつく性格でないのを加味しているが、仮にも実力者として見られるCランクパーティーのリーダー格やそのメンバー達だから、今回起きている事を真面目にやっていると言う結果を見ても、人格面はともかく、一人の冒険者としての技量は確かなのかもしれないと分かりつつあった。


「それでも、私は本気で受け入れる気はないですけどね!」

「ドキュノがクルスを半ば強引に追い出したって事実は、半永久的に忘れる気はいので!」

「あはは……」

(この二名は僕がドキュノさんにされた事実を一生抱えそうですね……)


セリカとミレイユはドキュノの事を認めておらず、むしろまだまだ猜疑心を抱いているようだ。

俺とクルスは少し苦笑いを浮かべるしかなかった。



同時刻・別室——————————


「ふうぅー!とりあえず今日は貢献できたって事でいいかなー!」

「はい、お疲れ様です」


別室では、ドキュノら【パワートーチャー】の面々が宿泊していた。

テーブルの上にはエールやワインがいくつも置かれており、ドキュノはゼルナにお酌されている。


「「……」」

((お前は大した事してないでしょ!酒を買い込む以外は!))


その様子をカズナとフルカは訝しげに見ている。

確かに悪い事をした人物は捕えたドキュノ達だが、ゼルナは大して何もしていなかった。

カズナとフルカも最初こそゼルナの事を歓迎しており、魔法の腕前自体は認めていたものの、隙あらばドキュノに密着しており、蔑ろにこそされはいないが相手にされていないような場面が増えてきている事に不満を抱いている。

一方で雑用をやらせてみたところ、ゼルナは武具の手入れやを始め、そつなくこなしているから文句は言えず、そのドキュノもここのところ彼女に首ったけ気味だ。


「カズナさんとフルカさんもエールとかどうで……」

「大丈夫。ワインの気分なので!」

「自分で注げるので!」

「オイオイ二人共、つれないぞ!せっかくゼルナがやろうとしてくれてんのに~」

「「……」」


ゼルナが【パワートーチャー】に加入して以来、ドキュノは彼女を優遇もしくは擁護する事が増えてきていた。

最初は細やかな気遣いくらいだったのが、今ではカズナとフルカよりも扱いが良く、「ちょっとくっつき過ぎじゃない?」と注意した際はドキュノがその都度庇う等、彼女達は不満が顔に出ないように気を付ける日々を送っている。


「ドキュノさん、明日も頑張りましょうね!あ、カズナさんやフルカさんも……」

「おーそうだな!カズナ!フルカ!明日も気合い入れていこうぜ!」

「うん、分かった!」

「もちろんよ!」

((何でおまけみたいな言い方されてんのよ?アタシら!?))


ドキュノの一声で、カズナやフルカは愛想と元気を見せながら答えたものの、内心ではゼルナへの不満が溜まっている。

同時にドキュノへの苛立ちも……。


闇ギルドの調査を実行していく俺達は改めて取り組む気持ちを固めていった。



だが、俺達はこの時完全に理解し切れていなかった。このクエストの闇の深さを………。



「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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