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第56話 闇ギルドの存在

シリアスな展開に巻き込まれかけようとしています!


Cランクに上がり、気持ちを新たに邁進する俺達【トラストフォース】。

メンバーのクルスがかつて所属していたCランクパーティー【パワートーチャー】のリーダーであり、彼を追い出したドキュノらと出くわして一触即発になりかけた。

Bランクパーティー【ディープストライク】のリーダーであるケインさんの一喝とクルスが抜けた後任で入ったゼルナと言う女性のお陰で事なきを得た。


「カルヴァリオさんが俺達に話を……?」

「あぁ、今は執務室にいらっしゃる。時間があれば、今すぐにでも来てもらえないか?」

「俺は大丈夫ですが、皆は……」

「私は問題ないです」

「セリカに同じく」

「僕も大丈夫です」

「私達も行けますよ。ねっ?」

「うん」

「問題ございません」

「よし分かった。ケインさん、我々も行けます」

「では、案内しよう」


俺達もドキュノらも全員何も問題ない事を確認して伝えた後、ケインさんらはカルヴァリオさんがいる執務室に案内してくれた。


「カルヴァリオさん、全員をお呼びしました」

「ありがとう」

「早速本題に入らせてもらう。単刀直入に君達へお願いしたいクエストがある」


カルヴァリオさんの前には俺達Cランクパーティー【トラストフォース】、ドキュノが率いる【パワートーチャー】、そしてケインさんが率いるBランクパーティー【ディープストライク】の面々が立っている。

そして緊迫した空気が張り詰めていく。




「このティリルを治めている領主にしてハイレンド伯爵家当主であるロミック・ハイレンド伯爵の領地内で密かに蔓延る闇クエストの調査とその根絶に力を貸していただきたい」


「「「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」」」


カルヴァリオさんから発せられた内容に俺は驚愕した。

ロミック様はこの間会った事のある人だし、凄いお偉いさんだぞ。

そのような方からのクエストを密かに出すだけじゃなく、闇クエストが絡むなんて普通じゃないと直感できた。


「改めて言わせてもらうが、各国それぞれに数点位置する冒険者ギルドには、依頼者から正式にクエストとして引き受けるわけにはいかないモノも偶に飛んで来る事がある。そのためにもギルド側で精査を重ねていく必要があるんだ。正式にギルドで受けられるクエストがどこにもなければ、ギルドを通す事なく各個人のやり取りや密かに作られた組織が仲介となって闇クエストを発注する輩達が少なからずいてね……」


闇クエストについてはセリカからさわりだけ聞いていた。

闇クエストとは、冒険者ギルドが正式に受けてしまおうものならば確実に評判に傷が付くような内容で大っぴらに公開できない事柄ばかりだ。

それこそ内容は窃盗に恐喝、意図的な土地や建物などの器物損壊や荒らし行為、風評被害の流布による無実の被害者を狙った社会的信用の失墜に伴う名誉棄損、そして強盗や殺人。

他にも、それらを誘発させるような悪行も含まれる場合も闇クエストとなる。

当然、闇クエストを受けた人物はもちろん、依頼した人物も厳罰を受ける事になり、全世界共通の決まり事である。

ギルドだけでなく国家単位でも闇クエストが発生しないように目を光らせているが、上手く躱している輩も一定数いる。

以前に受けた害となる盗賊団の捕縛はギルドが精査をしっかり行い、悪質と判断した事でクエストとして張り出される。

闇クエストは罪のない人々に危害を加える事が確実に分かり切った内容だ。


「その闇クエストの数々が、領内各所で起きていると報告を受けたんだ」

「闇クエストが少なからずあるのは存じ上げておりますが、ここ最近で起きたと言う事でしょうか?それも、ティリル付近で!?」

「この数ヶ月でピンからキリまでを含めても、闇クエストに該当する案件が20件ほど確認されている。うち数件は、殺人や強盗も入っている」

「「「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」」」


カルヴァリオさんの深刻な表情をしながら発する言葉には確かな説得力があった。

現在進行形でそれが起きている事も、ロミック様が真剣に悩み考えている事も……。


「あの、私からも一点よろしいでしょうか?」

「何だね。トーマ」


俺は勇気を出して手を挙げて発言した。


「ここ数か月でその闇クエストが出回っていると言う事は、胴元、つまりはそれを仕切る組織がハイレンド家当主の治める領地内のどこかにあるって事だと思うんです!」

「と、トーマさん……」

「トーマ。あのね……」

「は、はい……」


それから詳細が告げられて数十分が経つ頃には会議が終わり、【パワートーチャー】の面々は静かに去って、俺達と【ディープストライク】ら合計8名はギルドに残った。




「ふー。面倒な事に巻き込まれちまいそうだな~」

「えぇ。本当に……」

「ドキュノの言う通りよ」

「だろだろ~」


ドキュノ達はどこか気怠そうな雰囲気の中で歩き進めていた。


「ドキュノさん、今回は前祝でどこか飲みに行きませんか?Bランクパーティーの【ディープストライク】や何かと期待されている【トラストフォース】がいれば、概ね成功は保証されています。仮に失敗したとしても、我々以外の人達に何かしらの落ち度を証明できれば、とばっちりを受ける確率もグッと減りますよ」

「それもそうだな!よし、今日の夜は飲みに行くか!」

「いいねってゼルナはくっつき過ぎ!」

「距離感考えなさいよ!」

「あらまぁごめんなさい」

「はは、これは参ったな~!」


ドキュノはすっかり意気揚々としていた。

クルスの後任で加入したゼルナ・ドゥーチェはCランク冒険者の『魔術師』である。

紫紺の髪色に毛先辺りにロールをかけたロングヘアーに妖艶でどこかミステリアスな雰囲気を感じさせる、カズナやフルカとは違った意味で端麗な女性だ。

黒の法衣の上に赤紫色のマントを羽織りながら、世の男達を引き合わせたくなるような煽情的なファッションをしている。

端から見れば相当美人だが、どこか掴みどころがない雰囲気を感じさせた。

【パワートーチャー】の面々はそのまま帰路に着いていった。

ゼルナと言う女性の魔術師が密かに妖しい笑みを浮かべていた以外は……。




同時刻——————




カルヴァリオさんとの話を終えた俺達と【ディープストライク】の面々は部屋を後にした。

それから一息付くためにギルドの飲食スペースにいた。


「にしてもトーマ君。君に一つ言いたい事がある……」

「はい?」

「闇クエストの胴元がある事やその手口まで良く分かったよね……」

「えぇ、まぁ……」


先ほど俺が発した質問は、何と正解であり、その話が中心だった。

この数ヶ月で20件、中には殺人事件も含まれている闇クエストが確認されているのに、その胴元が捕まらないどころか影も掴めないのは、恐らく実行犯だけにリスクが伴う行動を取らせて、足が付きそうになれば何らかの方法で隠蔽していると考えた。

胴元をトップに指示や斡旋を担う幹部、その下に実行役の末端達がいるっていうのが闇ギルドの主な構成だ。

末端の実行犯はよく捕まって運よくまとめ役を逮捕できる事はあるものの、それより上の幹部や胴元には中々たどり着けないケースがほとんどだ。

そして、その闇ギルドの胴元の尻尾を掴んだと共有され、後に今日まで答えを出すとの事で話し合いはお開きになった。


「確認された闇クエストを実行していた犯人を捕まえたのはほとんどが末端の実行者だからな」

「上の立場にいる幹部格に辿り着かれないための手段を徹底しているって訳よ」


ケインさんとフィリナさんがそう言うと、文字通り闇が深いと再認識した。


「闇で思い出したんですけど、ドキュノ達のパーティーメンバーに僕の後任で入ったあのゼルナってどんな女性なんですか?」

「私達、あまり接点が無くて……」

「あぁ、あの紫色のロングヘアーをした魔術師の事か」


セリカとクルスがふとゼルナと言う【パワートーチャー】に新しく入った女性について話を出し、ケインさんは考え込むような表情をした。


ゼルナは元々、ビュレガンセとは別の国で生まれ、「色んな場所で様々な経験をして世界をもっと見てみたい」と言う理由で生まれた国を飛び出し、【アテナズスピリッツ】に拠点を変更しており、それはケインさんが率いるパーティーがBランクになる少し前の話だった。

その時のゼルナの冒険者ランクはDであったが、数ヶ月でCランク冒険者になったとの事であり、魔法の腕前はかなりのモノであったと聞かされた。

ゼルナがドキュノのパーティーに入ったのは、クルスが俺達のパーティーに加入してすぐの出来事らしい。


「僕が追放されて数日後の話ですね」

「その辺りから、ゼルナさんが【パワートーチャー】に入ったんですよね。恐らく『魔術師』が欲しかったのと、顔ですかね。」


クルスが呟くと、エルニさんが話を補足した。


「私から見ても、実力があるのは確かに認めている。ただ、どうにも怪しい気がしてならないんだよな……」

「私もそれ思いました。まるで、腹の底で何を考えているかを掴ませたくないような……」


魔術師の勘なのか、ミレイユとニコラスさんが渋い顔をする。

一見すると淑やかさと妖しさを醸し出すような雰囲気のゼルナだが、ケインさんらの話を聞いて俺も疑念を抱きそうになっているが、現場にいない俺達には全てが理解できる保証はまだできない。


「何にせよ、同じクエストを受けるパーティー同士です。ドキュノらやゼルナと言う女性については思うところはありますが、闇ギルドの打倒に集中したいです」

「うん、その意気だ!明日はよろしく頼むよ!【トラストフォース】!」

「はい!よろしくお願いします!」


それでも俺達は裏で好き勝手している闇ギルドの調査や打倒に向けて気持ちを新たにしながら取り組む決心を固めた。

俺はケインさんと、セリカはフィリナさんと、ミレイユはニコラスさんと、クルスはエルニさんとそれぞれ握手を交わした。








同日、夜中のとある宿——————



「「すやあぁぁ……」」


灯が消えた部屋でカズナとフルカは既に寝ていた。

随分眠りが深いようだが、ちゃんと睡眠を取れているのは良い事だ。


「ねえ、ドキュノさん……」

「何だ?」


一つのベッドにドキュノとゼルナが肩を寄せ合っている。


「明日の闇ギルドの調査、ドキュノさんの出番ですわね」

「あぁ、これで成果を上げたらBランク冒険者も夢じゃねえ……」

「そうなれば、もっと凄い事ができそうですわ……」

「そうだな」


ドキュノは余裕そうな表情をしており、ゼルナは色気漂う笑みを浮かべる。


「お前の魔法は強力だからもっと安心だ。貢献次第じゃあ、俺の女にしてやるよ……」

「まぁ嬉しい……。最善を尽くさせていただきますわ」

「ゼルナは美しくて可愛いな~」

「ウフフフ」

(楽しみだわ……)


そして闇クエストの調査を中心にした極秘のクエストが始まる朝が近付いていく。



「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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