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第50話 武器の新調について

お金の使い方についても少し交えます!


Cランクに上がるための試験クエストをクリアし、晴れてCランク冒険者とパーティーになる事ができた俺達【トラストフォース】。

それから約二週間。


「ガアァァァ!」


「「「「ハアァァ!」」」」


俺達はCランクパーティー向けのクエストに赴いていた。

それは、レア度Dのモンスターにして、以前にやり合った経験のある“オーガナイト”数体をリーダーにしたコロニー殲滅だ。

“オーガナイト”はレア度Dモンスターの中では屈指の頑強さを誇り、その下位種である“オーガ”十数体の討伐に動いている。

“オーガナイト”数体ならばCランクパーティーならば対処可能であるが、レア度Eの下位種とは言え、及ばずともそれに近付く耐久力を持ったモンスターがそれなりの数いれば、話が変わってきてしまう。

少なくとも“オーガナイト”に対抗できる攻撃力を持つ冒険者やそれに類する術を持たないパーティーでは苦戦どころか確実に命に関わってくる。


「【剣戟LV.1】『隠座十字』!」

「ギャアァ!」

「【剣戟LV.2】『ツイスタースラスト』!」

「ガバババアァ!」


少なくとも初めて出くわした事のあるそんな“オーガナイト”だが、今ではセリカとクルスによる剣術によって、スムーズに倒す事ができていた。

そしてその巨体は光の粒子となって消えていった。

かつて倒した経験がある事を加味しても、経験を活かした立ち回りと急所を的確に突いていく攻撃で大傷を負う事もなく倒していった。


「ガアアァァァ!」

「ミレイユ、来るぞ!」

「分かってます!」


俺はミレイユと、二体の“オーガナイト”と向き合っていた。

初めてミレイユと出会った時に“オーガナイト”と出会った時は当時のレベルや状況もあって厳しかった。

ましてやそんなモンスターが二体同時に襲われていれば、絶望的だっただろう。



そう、あの時のままならば……


「「グオオォォォ!」」

「「ハアァァ!」」


二つの方向から振り下ろされた強烈な斬撃だが、俺とミレイユは躱した。

俺だけでなく、ミレイユも体力向上のために頑張った結果、ベーススキルの一つである【脚力強化】を身に付ける事ができたお陰で、彼女自身にもフットワークの軽さが備わった。

魔法による攻撃や支援をメインにするギフトは身体能力を強化するベーススキルは身に付きにくいものの、パーティーに加入してから努力し続けて最近身に付けられた。

【腕力強化】は習得できていないが、機動力の向上はそれだけで大きかった。


「【氷魔法LV.2『メガブリザード』!」

「「ザムバアァァ!」」

「【ソードオブハート】&【剣戟LV.1】『斬鉄剣』!」

「【氷魔法LV.1】『フリーズランス』!」

「「ギャアアァァァ!」」


俺とミレイユは“オーガナイト”の急所を的確に突いた事で致命傷を与え、その身体もまた光の粒子となって消えた。

そして魔石となって消えていった。




「よし!コロニー殲滅完了だ!」

「「「やったーーーーー!」」」


疲れたけど、皆で協力し合ったお陰でコロニー殲滅に成功した。

初めてやり合った時より俺やセリカやミレイユの実力の向上とクルスの加入による戦術の選択肢の広がりが特に大きかった。

“オーガナイト”は基本的にかなり頑強だが、喉元が比較的柔らかい弱点を知っている事もアドバンテージであり、それは下位種の“オーガ”も同じだ。

そして俺達は魔石を拾い集め、コロニー殲滅を成功したシンボルを回収して帰っていった。


「お疲れ様です。これでクエスト完了とさせていただきます!」

「ありがとうございます!」


ギルドに戻って完了報告と報酬の受け取りを終えて、俺達は食事スペースで休憩した。

やはり頑強なモンスターを何体も討伐するのは大変だが、やりがいもあった。


「いやー稼ぎましたね!」

「換金も合わせれば90万エドル行きそうですね!」

「僕達もここまで来れたって感じがします!」

「うん、そうだね……」


Cランククエストにもなれば難易度も上がる分、もらえる報酬も比例して増えてくる。

Cランクに上がるための試験クエストでもらったヒライト家の当主であるアスバン様からもらった300万エドルをお礼でもらったものと今回を含めて数回受けたクエストの報酬を合わせれば大分懐が暖かくなってきた。

新しい武器の新調をしても日常生活に支障が出ないくらいに……。


「皆、手元にある武具を出してもらってもいいかな?」

「「「……?」」」


俺は皆に冒険で使う剣や防具をテーブルの上に出させた。

俺とセリカは鋼の片手剣と両手にはめている手甲と胸当て。

ミレイユは杖と羽織っているケープ。

クルスは二振りのロングナイフ。


「うーん、やっぱり結構使い込んでる感あるよな~」

「気付けばもうここまで……!」

「リペアフルードを使えば表面上の傷は治せても、もし強力な攻撃を受けたら不意に壊れそうなくらいに見える……」

「このロングナイフ、何年も前から使って修繕してきましたけど、そろそろ寿命ですかね?」


思った通り、俺達がそれぞれ使う武器は大分劣化していた。

ミレイユの杖はともかく、俺とセリカの剣はリペアフルードでも完全に誤魔化せないくらいまで傷んできていた。

クルスの愛用しているロングナイフの内一本も傷が目立っている。


「もしかしてトーマさん……」

「そろそろ武器を新調しようと考えているんだ」


セリカが聞くと、俺はそう返した。


「そうですね。アスバン様からもらったお金やこの二週間でクエスト達成による報酬を合わせれば、良いモノが買えそうですね!」

「ですよね!私はまだ大丈夫な方だけど……」

「ロングナイフだったら剣よりも安く済みますし!」

「じゃあ、決まりだな!」


俺達は思い切って使用している武具の新調に乗り出すのだった。

その足で俺達は御用達の武器屋である『ロマンガドーン』へと足を運ぶ。


「いらっしゃい!おう、しばらくぶりだな!」

「ご無沙汰しております。今日は武器を見に来ましてね……」

「おー、そうかそうか!Cランクに上がるに伴って新調でもしに来たのかい?」

「そんなところですね」


馴染みの店主と軽く会話した後、俺達は店内を見て回った。

新入荷の剣や槍、鎧や盾などがあったりと品揃えは変わらず良く、俺達以外の冒険者も多く訪れている。


「どれにしようかな~?」

「このロングナイフは軽くて振り回しやすいですね!」

「セリカ、この胸当ても良いと思うよ!鋼を使っている割には値段も手頃だし……」

「本当だ。想像したほど重くない」


入って数十分後——————


「ん?トーマ達じゃないか!?」

「はい?」


武器を見ている中、一人の男性が声をかけてきた。


「やあ!」

「ケインさん!それに皆様も!」

「どんな武器が入っているかを見ておきたかったんだが、まさか君達がいるとはね……」


その男性はケインさんであり、Bランクパーティー【ディープストライク】のリーダーであり、メンバーであるフィリナさんやニコラスさん、エルニさんもいる。


「もしかして、武具の新調かな?」

「はい、俺達が使っているモノをCランクへ上がった機会にと思って……」

「そうか……」


ケインさんとそんなやり取りを交わしていると、セリカとミレイユ、クルスも合流してきた。

今日のクエストで起きた話をしながら、俺達が持っている主な武具を見せる。


「なるほど、リペアフルードでしっかり修繕や保守をしているのは分かるけど、これは……」

「お金があるなら買い替える事を進めるわ。ちょっと傷が目立つならともかく、レア度C以上のモンスターによる攻撃じゃポッキリ折れかねないくらいだから、クエスト実行中にそうなれば相当マズイ事になるのは明白だし……」

「ですよね……」


流石はBランクパーティーで冒険者としてのキャリアが長いケインさんとフィリナさんだ。見ただけで武具の状態や傷んだ状態でクエストを引き受けるリスクも説明してくれる。

言ってみれば、壊れた自家用車や家電を修理に出すより、新品に買い替えた方がまた中長期的に使えるからお得って話のようなものだ。


「お金と相談しながら考えているんですけど……」

「因みに予算はどのくらいで考えているのかな?」

「400万エドルほどですね……」

「それで、できる事ならメンバー全員に何かしら武具を新調したいってことかな?」

「そんな感じですね……」


俺はケインさんと軽く相談していた。


「ならば、パーティー内での役割に応じて使う装備を決めて購入するのはどうかな?」

「え……?」

「それって、ギフト毎に割いていく予算を決めるって意味でしょうか?」

「そうだ。戦士を始めとする近接戦をメインにするギフトは当然、剣や防具にお金をかける一方、魔法を始めとする回復や後方支援を担うギフトは防具にお金をかける必要がないもしくは少しに抑えるって感覚になるかな。」

「となると今の僕達の状況でしたら、トーマさんとセリカには剣や防具に良いモノを用意するのが得策って事でしょうか?」

「それがセオリーだね。でもクルス君、君もそのロングナイフで奇襲や戦闘に参加するならば、ミスリス製のロングナイフを一本は用意しておくのが良いと思う」

「なるほど……」

「ミレイユが普段使うその杖も、今は大丈夫でしょうけど、強力な魔法が使えるようになったらより良いモノに買い替えた方がいいわ。今着ている装備は要検討だけどね……」

「確かに……」

(杖自体は良いモノだから、リペアフルードでまだまだ使えるし……)


ミレイユもギフト上は接近して戦うタイプじゃないため、直接攻撃を咄嗟に防ぐ事がなければ壊れたりはしないものの、強力な魔法を使えるようになれば、それに見合うモノを用意できないと本来の力を発揮するのが難しくなる。

実際に魔術師であるニコラスさんが持っている杖は、体格差もあるとは言え、ミレイユが持っているタイプより長さもあって付いている魔石も一回りくらい大きい。


「今の【トラストフォース】は、装備の新調のためにお金をかけると言う点では、トーマやセリカを中心に、残ったお金で他の武具を新調させた方が良いと俺は見ている」

「そうですか……」

「私が今使っている杖も、修繕や保守はしっかりしているからまだ大丈夫ですし……」

「僕も重い装備を付けすぎてフットワークが鈍くなるのは避けたいですね」


ケインさんは冒険者ならば一度は直面するであろう悩みをスムーズに教えては的確な買い物方法までアドバイスしてくれた。

キャリアや実績を積んだ冒険者の助言は本当にためになる。


「色々と教えていただき、ありがとうございます」

「いやいや、大した事はしていないさ。役に立てたなら何よりだよ」

「頑張ってね!【トラストフォース】の皆さん!」

「応援してます!」

「私達と同じランクに上がれる日をお待ちしています!」


ケインさんだけでなく、フィリナさんらも本当に良い人達ばかりで良かった。

ちなみにケインさんらが来たのも、彼のサブウエポンとして刃渡り50センチほどするミスリル製のロングナイフを買って行った。

100万エドル弱していたが、ポンと買えちゃうなんて、流石はBランクパーティーと言ったところだな……。


「店主さん、一回よく考えてもよろしいでしょうか?多分何かしら買うとは思います」

「おう、構わんよ!」

「あのよぉ。俺からも相談つーか、提案だけど……」


店を出ようとした時、店主さんからある提案を耳打ちで持ち掛けられた。


「え?それって……」

「まあ、修繕や保守はやれるだけやった方が良いって前提だけどな!」

「分かりました!ありがとうございます!」


店主さんから言われたアドバイスにヒントを得た俺達は、そのまま帰路に着いた。

今日は出費を抑えるため、自炊する事になった。


武器の新調のために……。


「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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