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第49話 Bランクパーティー

先輩冒険者パーティーとの新たな出会いです!


Cランクに上がるための試験クエストをクリアし、依頼主であるヒライト家の当主、アスバン・ヒライト子爵のお屋敷で数日間滞在をしていた。

そして、ティリルを治めているハイレンド家当主のロミック・ハイレンド伯爵と邂逅した。



翌日—————


「皆、忘れ物はないかい?」

「僕は問題ないです!」

「私も!」

「準備OKです!」

「じゃあ、帰ろう!」


朝食を頂いた後に、俺達はティリルに帰る準備を終えてお屋敷を出ようとしていた。

アスバン様から、妻であり病状の身だったミクラ様を救ってくれたお礼と言う意味で報酬もいただいた。

その額は何と300万エドルと大金だ。

最初は「こんなにいいですよ」と遠慮したものの、アスバン様は「私やチェルシアにとって大事な女性を救ってくれた事に比べれば安いモノ」と言われ、結局受け取る事になった。


「皆様、今回は本当にありがとう!感謝してもしきれない気持ちでいっぱいだ!」

「お母様を救っていただいたこの御恩は生涯忘れません!」

「……」

「こちらこそ、休養のためにお屋敷で滞在させていただいて本当に助かりました!」


俺達はアスバン様らヒライト家の皆様やその従者の方々に見送られながら発った。

ミクラ様も俺達が採取してきた“キトサンフラワー”を使った特効薬と日常的に飲むお薬のお陰で、初めて会った頃に比べると健康的になっていた。

今回受けたクエストで誰かが救われ、助かる事があるのは知っているが、回復していっているミクラ様やそれを心から喜んでいるアスバン様とご令嬢であるチェルシア様の笑顔や幸せそうな姿を見ると、改めて実感する。

頑張って良かったって……。


「にしても、クエストと言い、貴族が集まるイベントと言い、内容が色々と濃かったな」

「確かにそうですね!私にとっては“フライングタイガー”との戦いやトーマさんの新スキル、そして社交界デビューですね!」

「社交界はともかくにして、あの戦いは本当に過酷だった。トーマさんがいなきゃ色々とヤバかったかもしれなかったですよ」

「“フライングタイガー”との戦いは本当に大変でしたが、社交の場に行ったのは、別の意味で大きなプレッシャーでしたね!」

「それは同意する!」


ティリルに向けて戻る馬車の中で、俺達は今回のクエストを思い返していた。

セリカの提案で受けたCランクに上がるための試験を兼ねたクエストを受け、最初は次のランクに行きたい気持ちで受けたが、その内容を知って想像以上にシリアスな事を知った。

貴族階級で子爵の爵位を持った当主とご令嬢の頼み、その妻が病気である事、助けて欲しいと言う願いを聞いて退けない気持ちが込み上げていた。

利得以上に、このまま投げ出すわけにはいかない気持ちが勝って挑み、最後は全員生き残る事ができた。

そしてミクラ様は回復していき、アスバン様とチェルシア様に心からの笑顔をもたらすに至った。

自分達の事にしても、依頼主の気持ちを主体に考えても、今回のクエストは様々な視点で有意義なモノをもたらせたと思えた。

セリカもミレイユもクルスも、同じ気持ちだった。

それから馬車に揺られて——————



「約一週間ぶりのティリルだな!」


俺達は拠点にしているティリルへと帰って来た。

長かれ短かれ、一週間ほど間隔を空けて毎日のように訪れている街へ赴くと、ちょっとした懐かしさを感じた。

ホームシックとまではないが、拠点にしている街をしばらく離れたままにしていると、愛着のある場所が恋しいと思ってしまう自分がいるのだった。


「【トラストフォース】の皆様、本当にお疲れ様でした!」



「今回のクエスト達成を持ちまして、【トラストフォース】の皆様の冒険者ランクとパーティーランクはCランクとなります!」

「「「「やったーーーーー!」」」」


馴染みの受付嬢であるナミネさんから、セリカ、ミレイユ、クルス、そして俺はCランク冒険者への昇格が言い渡された。

クエストの結果自体はアスバン様が前もってギルドへ報告していたものの、改めて伝えられると嬉しく思う。


「凄いじゃないか!」

「なれると思っていたけど、本当になったな!」

「おめでとう!」

「応援してるぜ!」


その場にいた冒険者の皆様からも、俺達がCランク冒険者になれた事を心から祝う言葉を沢山もらえた。

そして俺達はCランク冒険者である事を証明する赤銅色のプレートをもらい、本当になれたんだなと再度実感する俺達だった。


「この赤銅色のプレートがCランクの証か……」

「遂に私達もCランクまで来れたんですね!」

「このプレートを見たら、新しい領域に進めたって感じがします!」


セリカとミレイユも喜びが漏れ出ていた。

Cランク冒険者は周囲から実力者と見られるようになり、Dランク以下にはない恩恵や待遇を受けられる事になる。

同時に相応の活躍や実績を見せていかなければならないプレッシャーも感じるものの、皆の性格ならば大丈夫だ。


「僕も、胸を張ってCランクパーティーの一員だと言えるようになりました。これからも頑張っていきます!」

「あぁ!」


出会った当初はどこか暗くて陰気な印象を与えていたクルスだったが、今は自信と向上心に溢れた表情をしている。

正直、クルスがいなければ大変な場面も多くあったくらいだから、仲間になってくれた事には今でも感謝している。


「“フライングタイガー”から採れた魔石や素材を換金したら、どこか飲みに行こうか!」

「「「賛成でーす!」」」


今日はお祝いにどこか飲みに行きたい気分であり、セリカ達も同じだった。

クルスの加入祝いに利用したお店でやろうかとも考えた。



「君達かな?【トラストフォース】の皆様は……?」

「「「「ん……?」」」」


すると一人の男性が声をかけてきて、他に男性一名と女性二名がいる。


「Cランクに昇格したんだよね。まずはおめでとうと言わせてもらいたい」

「は、はぁ……」

(誰だろう?見覚えはあるけど、話した事はないぞ……)

「あの、確か……Bランクパーティーの【ディープストライク】の皆様ですよね?」

「あぁ、その通りだ」


俺は少し困惑したが、セリカは知っているようであり、確認したところ正解だった。


「失礼、紹介が遅れたね。俺は冒険者パーティー【ディープストライク】のリーダーを務めているケイン・バニシスだ。君達、最近の活躍が目覚ましいと聞いているよ」


礼儀正しく挨拶をしてきたケインさんはパーティーのリーダー格であり、Bランク冒険者の『剣士』だ。

精悍さと爽やかさを両立させた風貌をしており、オリーブ色の短髪にシルバーのメッシュを入れた髪型が特徴的な男性であり、俺と同じ年齢に見える。

纏う装備も俺達が今身に付けているモノよりも上質な鎧に身を包んでおり、腰には立派な装飾を施された剣を携えている。

パーティー内の絶対的エースであり、今の俺達では手に負えない可能性が高いレア度Bのモンスターを数えきれないほど倒した実力と実績を持っている。


「農耕の街を治めているヒライト家の奥様を助け、そのためにあの“フライングタイガー”を倒したって話はもう届いている。是非とも挨拶しておきたくてね……」

「ありがとうございます」

「ケインが是非にって言うもんだからね……。あ、私も自己紹介ね。ケインと同じパーティーに所属しているフィリナ・トレミスよ。よろしくね!」


気さくに自己紹介してきたフィリナさんはBランク冒険者の『武闘家』だ。

鮮やかなオレンジ色のロングヘアーをポニーテールにした髪型をしており、身長も俺と同じ程度のスレンダーな体型のサバサバした雰囲気を感じさせる美人である。

身に纏う装いも、シャツの上に胸や心臓及び脇腹を始めとした急所はしっかり保護したような形状の鎧であり、フットワークの軽さを感じさせている。

両手脚に付けているミスリルの手甲や脛当が眩しく見える。

ケインさんとは冒険者になった時からの仲であり、パーティーにおける最古参の片割れだ。


「他のメンバーも紹介させてもらおう!向かって右が魔術師のニコラス・マルサ、その隣が僧侶のエルニ・メイナーだ!」

「「初めまして!」」


ニコラスさんはBランク冒険者の『魔術師』だ。

紺色を基調にしたローブを羽織った如何にも魔術師らしい格好をしており、眼鏡をかけた理性的な印象を与える男性だ。

本人曰く、【炎魔法】と【土魔法】、【岩石魔法】を得意としており、パーティーにおける主砲やサポートを担っている。

エルニさんはBランク冒険者の『僧侶』だ。

白を基調にしたコートとワンピースを羽織っており、慎ましさも感じさせる印象だ。

【回復魔法】や【支援魔法】を得意とする後方支援の専門家であり、仲間のフォローの大半を担っているものの、自分の身を守る術も備えているきちんとした人だ。

メンツを見るに、年齢はもちろん冒険者としてのキャリアも明らかに先輩である。

後に俺達も一人一人自己紹介をしていった。


「とまあ、挨拶と改めて自己紹介で来たって訳なんだ!今後ともよろしく!」

「よろしくお願いします!」

「ところで、君って確か、Cランクパーティーの【パワートーチャー】にいなかったけ?」

「はい……。色々あって抜けました。今はトーマさん達のパーティーに身を置く事になったんですよ」

「ケインさんはクルスの事をご存じなのでしょうか?」

「あぁ、半年くらい前に若いながらもCランクパーティーに駆け上がったって事で少し話題になってな。その時に顔は覚えているんだ」


ケインさんはクルスの事を知っているようであり、クルスも頷く。


「クルス君、彼に……トーマを信じて付いて行ったのは、正しかったと思うよ。俺達は応援しているから」

「は、はい……」

「では、また別の機会で……」


それを言うと、ケインさん達は去って行った。

クルスも少し神妙な面持ちだった。


「クルス……?」

「僕は大丈夫ですよ!Cランク祝いに使う場所ですけど、前に使った場所がいいです!」

「え?他の場所って言うのは……」

「あそこは隠れ家感があるのが良いんだ!トーマさんも気に入ってましたよね!」

「俺も確かにあの店は気に入っているし……」

「トーマさんもこう言っているし、セリカもミレイユも美味い美味い言ってただろ!」

「そりゃ言ったけどさ……」

「では決まり!」

「「勝手に進められてる気がする!」」


そうして夕刻になった頃、クルスの加入祝いで利用した酒場を利用する事になった。

Cランクに至るまでの感想や一時的な活動拠点になったグリナムについて、【ディープストライク】の皆様についてまで、夜遅くまで語り合った。


俺達は新しくも高いステージに挑んでいく気持ちを新たにまた頑張って行こうとする意志を再確認し合うのだった。



「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、作品への応援をお願い申し上げます。

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