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第40話 Cランクの条件

新たな展開です!


アライアンスを結んだ『シーフ』であるクルスを新たな仲間として迎え、4人のパーティーになった俺達【トラストフォース】。


それから約1カ月間———————


「やあ!」

「フウン!」


この一週間、Dランク向けのクエストを数件こなし、今日の俺達はクエストをお休みにして、新しく加入してきたクルスを交えて修行していた。

クルスは前にいた【パワートーチャー】からは偵察や斥候、後方支援を主に担っていたものの、剣術も心得ているので、戦闘能力そのものは結構高い水準にあると見立てている。

俺もセリカと剣で撃ち合う修行は、この世界に来た時からやっているんだけど、クルスの二振りのロングナイフによる剣戟は鋭かった。


「にしてもクルスって、あれだけ接近戦もこなせるなんてね……」

「私から見ても、鍛え上げられているのは見て分かるよ。いいお師匠さんから基礎を身に付けてもらったのか、独学で密かに頑張ってきたのか……」


ミレイユはもちろん、同じく剣術がメインの戦法になるセリカから見ても、クルスの剣捌きは大したものであると直感させていた。

それから俺の次にセリカがクルスと稽古に勤しんでいたものの、身のこなしや魔法を交えた立ち回りではセリカ、二振りのロングナイフによる攻めと搦め手を交えた戦術ならばクルスと、俺から見ればいい勝負をしていた。

俺もミレイユから魔法攻撃による対処に関連する訓練をして、彼女も体力に欠けている部分を少しずつ克服していると分かるくらいのパフォーマンスを見せている。

クルスがミレイユとの訓練では少し毛色が違っていた。

クルスは魔法攻撃による攻めで気付いた事をミレイユにその都度伝えており、ミレイユも素直にうんうんと受け入れていた。

気のせいかもしれないが、かつてのパーティーメンバーに捨てられた経験を持つ者同士、かなり距離が近付いているような雰囲気だった。


「ふぅ、皆、とりあえず昼食を交えて休憩しようか?」

「そうですね、でしたら……」

「僕、できますよ!簡単な家庭料理くらいでしたら作れますので……」

「え?クルスって、料理できるの?」

「できますよ!高級な料理店レベルほどじゃなければで、よろしければ……」

「そこまで言うなら、私見てみたいかも……」

「私も!」

「お願いしていいかな?」


そうしてクルスはセリカの家の冷蔵庫からある食材で手際よく調理をしていった。


「お待たせしました!」

「「「オオォォォ!美味しそう!」」」


クルスによって出てきたのは、彩られたサラダにお馴染みの“ブラウンモウム”のソテー、加えて肉団子のような揚げ物に果物の飾り斬切りだった。

身体を動かした後なのもあって、思わずよだれがでかけていた。


「「「美味しい!!!」」」

「お口に合って喜んでもらえて何よりです!」

「このソテー、焼き加減も塩加減も絶妙だ!」

「エールとの相性もバッチリ!」

「このお団子みたいな揚げ物もスッゴく美味しい!」


クルスの振舞われた料理に舌鼓を打っていた。

本人曰く、「自炊をする機会が多くあった」との事だが、どれも美味しかった。

クルスは【パワートーチャー】から追放されてからはティリルでも格安な宿で生計を立てていたものの、今は俺がセリカの家でお世話になっている部屋に布団を敷いて寝床を確保した状況になっている。

俺が使わせてもらっている一室にクルスがいる以外に大きな差はなかった。

しかし、同じ部屋に同じ男と一つの部屋を共に過ごせども、クルスの人柄を知っている俺から見れば、何も後ろめたい気持ちはなかった。

それだけに男同士で話す機会も必然的に増えたが、それも心地よい時間だった。

既に俺が異世界から来た人間である事は、クルスも知っており、最初は凄く驚かれたが、今では「異世界の人と仲良くなれるなんて、ロマンだ」と受け入れられている。




翌日—————


「皆さん、既に朝ごはんの準備はできていますよ!」

「ありがとう、クルス!いただきます!」

「「う~ん!美味しい!」」


その日の朝食はクルスが作ってくれて、これもまた美味しかった。

俺の周りの仲間達、料理上手な人が多くないか?

そして朝食を済ませた後、俺達は冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に赴いた。


「あの~【トラストフォース】の皆様、お時間よろしいでしょうか?」

「はい?何か……?」


クエストが張り出されている掲示板を見に行こうとした時、馴染みの受付嬢であるナミネさんに声をかけられた。

その面持ちは神妙さと真剣さが入り混じっているようだった。


「Cランクの昇格を賭けたクエストを引き受けてみませんか?」

「「「「え……?」」」」


Cランク昇格を懸けたクエスト?それを聞いた俺達はギョッとした。


「それってどう言う意味かな……?」

「Dランクの冒険者やそのパーティーがCランクへ上がるためにはギルド側が募集している昇格を懸けたクエストを推薦って形で受けるんですよ。それをクリアすれば、冒険者ランクがCに上がるんですよ」

「僕は『シーフ』でどちらかと言えば後方支援のような役割なため、貢献度次第にはなりますけどね……」


俺がどんな内容かを質問すると、クルスが丁寧に説明してくれた。


「クエストの内容は普段受けているモノと大差はないですが、Dランク冒険者やパーティーから見れば難しく厳しい内容なのは確かですね……」

「なぜなら、発注元の半分以上は貴族階級において爵位を持っているお方ですから……」

「貴族階級?」


この世界には爵位という貴族制度がある。

ビュレガンセ国王とその血縁関係者は王族と言われてそのトップに君臨し、それに続くのが公爵、侯爵、辺境伯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、法衣貴族、騎士爵と続いている。

Cランクになってから貴族階級に関係するクエストを受ける事が可能となっていく。

Cランクから実力者と呼ばれるようになるのは聞いているが、当然受ける内容もモンスター討伐系や採取系、調査系などの今まで受けたクエストより高難度になる。

階級は何であれ、貴族から受注されるクエストは「ランクは〇以上でかつ△△△系のジョブを持っている人が望ましい」など、冒険者パーティーから見れば中々細かいもしくは厳しい絶対条件がある時も珍しくないと聞かされた。

そして所属ギルドが提示する条件を達成できれば、個人及びパーティーのランクも一つ上がれるシステムであり、CからB、BからAランクに上がる時も同じとの事だ。

但し、個人的な実力やパーティーの連携を見るためと言う理由で、アライアンスはできない。


「貴族って、何か話のスケールが急にデカくなってる気がするんだが……」

「貴族と言ってもピンキリですよ!王侯貴族のようにこの国トップレベルの地位を持つところもあれば、一般国民より少し偉い程度のところもありますよ!」

「Cランクもしくはその昇格を懸けたクエストを発注するのは高いところでも子爵辺りにはなりますね」

「じゃあ、伯爵や公爵、それこそ王族だったら……」

「それこそA~Bランクにかかってくる事が多くなるだけでなく、評判を聞いた他国からの応援と言う形で飛んで来るクエストもあります」


クルス曰く、Cランク以上になれば、他国からの応援クエストも引き受ける事が可能になると言われており、交通費も宿泊費も全て依頼主が負担してくれるとの事であり、報酬でもらえるお金も正に桁違いである。

冒険者から見れば、ロマン溢れる話である。


「ちなみに、そのCランク昇格を懸けたクエストの内容は……」

「子爵の爵位を持つヒライト家当代当主アスバン・ヒライトと言う方の依頼で、『“ログム山”で発見された薬の原材料を採掘して欲しい』との事です。」


ヒライト家とは、ビュレガンセでは子爵の爵位を持っている貴族であり、階級は下の方であっても、少なくとも普通の人よりもお金や権力は持っているだろう。


「薬の原材料の採取か……」

「採取系のクエストだけど、問題は赴く場所なのよね~」

「問題って、“ログム山”ってところに何かあるの?」

「高さは数十メートルくらいですけど、“ログム山”にはDランク冒険者4人以上のパーティーで行かないと対処が難しい場所やモンスターが多くあるんです」

「そういうことか……」


やはりCランクには簡単になれない、と言うよりもさせないって事だ。

俺は少し考えて……。


「俺は……やってみたい!」

「私も、せっかくの機会を活かさないなんてもったいないし、私らもそろそろCランクに上がってもいい頃合いだと思ってます!」

「確かに良い機会ですね!」


俺はやってみたいと思い、セリカとミレイユも同じ気持ちだ。


「クルス、お前はどうしたい?」

「……」


俺はクルスに問いかける。


「僕も、やりたく思います!Cランクパーティーに上がる流れは一度経験しているので、必ず役に立って見せます!」

「よし!分かった!セリカ、ミレイユ、クルス、やってやろうぜ!」

「「「「オーーー!」」」」


皆の気持ちが同じである事を確認し、俺達は手続きを済ませて受ける事にした。

今日はDランクパーティー向けの中でも比較的簡単なクエストを受ける事にした。


「回復アイテムとかは買い込んでおこう!」

「リペアフルードを買いますので、メンテナンスもしておきましょう!」

「僕は炸裂弾や煙幕とかを充実させておきたいです!」

「あ、クルス!それならこの投擲アイテムとかなんかどう?」

「買っておく!」


クエストを終えた俺達は、買っておきたい補助アイテムやポーションを買い込み、準備に取り掛かった。


ワクワクが止まらなくなってきたぞ~。





同時刻———————


賑やかな街の少し離れた場所に大きな屋敷がある。

ティリルの街にある家の数倍はあろう大きく頑丈そうだが、貴族らしい荘厳さを感じさせるような壁で囲まれたような外観だ。


「失礼します」

「どうぞ」

「先ほど、ティリルの冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】の冒険者パーティーが当主様の依頼したクエストを請け負い、こちらにお伺いされる旨を報告に参りました」

「そうですか」

「依頼した品は中々出回らない珍しい植物でございます。これで奥様の病状も快方の方へ向かわれるかと……」


その一つの部屋に執事服に身を包んだ初老の男性が入ってきて、俺達が向かっている事を伝えに来ているようだ。


「他の素材は、もう集まっていますでしょうか?」

「はい、種類と量はもちろん、実力と豊富な経験を持つ薬師の手配も済んでおります」

「そうですか、ありがとうございます」


一人の女性は大きな窓に映る景色を少なからぬ希望を抱いた表情をしながら眺めている。

綺麗に広がる草原のごとき若葉色のミディアムヘアーにウェーブがかかっており、瞳の色も清らかな川のように透き通った水色の端正な顔立ちをしている。

一目で一流の職人が高級な素材で作ったと直感させる明るめの紺色を基調にした仕立ての良いワンピースに身を包む姿は、貴族令嬢特有の気品を感じさせる。


「後は、依頼を引き受けて下さった冒険者様達の成功を信じるだけですわ」


そして、俺達は初めて、貴族と言う存在の人物と立ち会おうとするのだった。




「面白かった!」

「続きが気になる、もっと読みたい!」

「目が離せない!」


と思ったら、


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