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第38話 加入の申し出

また賑やかになります!


アライアンスを結んだ『シーフ』であるクルス君と共にDランク向けのコロニー殲滅クエストを苦戦しながらもやり抜いた俺達。

その翌日、クルス君が俺達と話がしたいと言ってきた。


「僕を、【トラストフォース】に入れていただきたいです!」

「「「え……?」」」


そのクルス君が俺達のパーティーに入りたいと思いっきり頭を下げていた。


「と、とりあえず、頭を上げて、話に入らせてもいいかな?」

「は、はい……」


俺は上手く宥めて話を聞く事にした。


「昨日、アライアンスをしてコロニー殲滅へ出向いて、皆様の実力や人となりを見て感動を覚えました」

「か、感動?」

「【パワートーチャー】の時では都合のいい道具のように扱われていた僕の事を心から信頼していただけて、優しさに満ち溢れた心遣いに触れて、僕の意見や気持ちも尊重していただけて、こんなに素敵なパーティーと冒険できたのは初めてでした!」

「トーマさんだけじゃありません!セリカさんは慈悲深くて、僕と共にリスクのかかった作戦に迷わず乗って実行してくれました!ミレイユさんは魔法が素晴らしいうえに追放された僕のために本気で怒ってくれました!」

「わ、私も同じ思いしたから本当に気持ちは分かっているつもりですし……」

(私の魔法が素晴らしい?嬉しい!)

「あれはリスクを取るつもりでやらなければジリ貧になっていましたので……」

(慈悲深いって……)

「そ、そこまで思ってくれるのは嬉しいけど、俺らのパーティーでいいのかな?」


クルス君は採用試験の面接における志望理由を説明するかのように、具体的かつ情熱的に俺達を褒めてくれた。

だが、本来は律儀で素直な人柄をしている彼から発せられ続ける言葉には噓や偽りの念は一切感じられなかった。

先のコロニー殲滅でも見ていたが、スキルの扱い方が上手で接近戦もこなせる実力を見れば、いかに有能なのかは既に理解済みで、セリカとミレイユも同じ気持ちだ。

そんなクルス君なら、見出してくれる冒険者パーティーもきっと出てくるはず。


「僕は【トラストフォース】の皆さんと、もっともっと冒険がしたいんです!」

「貢献できる事は何でも頑張ります!だから……」



「僕を【トラストフォース】に入れて欲しいのです!お願いします!僕も、強く優しい冒険者を皆さんと目指したいのです‼」

「「「……」」」


クルス君は再び深く頭を下げて懇願してきた。

一度冒険してみて、彼の実直な人柄とセンス、冒険者としての心構えや備えの良さは既に理解している。

一人になってしまった経緯を知って、こんなに真っ直ぐな気持ちを伝えられてしまったら、俺のやる事は一つだ。


「セリカ、ミレイユ……」

「「……ッ」」


セリカとミレイユに視線を向け、二人共首を縦に振っていた。


「クルス君、この後何かする事はあるかい?」

「え?一人でも行きやすい採取系のクエストを受けようかと思いまして……」

「一緒に行かない?」

「また、アライアンスを……」

「違うよ。アライアンスなんかじゃない……」


俺はクルス君に向かい、立ち上がって手を差し出す。




「俺達【トラストフォース】は、クルス・ロッケルを迎え入れる!一緒に頑張っていこう!」


俺は、いや、俺達はクルス君を仲間に迎え入れる事を決断した。


「ありがとうございます!皆さんのお役に立てるよう、精一杯努めていきます!」

「歓迎しますよ!クルスさん!」

「今日は加入祝いですね!トーマさん!」

「そうだな!」


クルス君は俺の手を取り、心から嬉しい表情と頑張っていく決意表明をしていた。

セリカもミレイユも加入を喜んでいる。


「じゃあさ、私もクルスって呼んでもいい?私の事もミレイユって呼んでもいいからさ!同年代だし、同じメンバーなんだから!」

「私もセリカって呼んでね!クルス!」

「分かったよ!セリカ!ミレイユ!」


セリカやミレイユも同年代の冒険者がメンバーになった事を嬉しく思っているのか、もう打ち解けている。

また賑やかになりそうだ。

それからすぐにナミネさんにクルスのパーティー加入申請の手続きを正式に完了させた。

こうして、Dランク『シーフ』のクルス・ロッケルが新たな仲間となった。


「じゃあ、クエストに行こうか!」

「でしたらトーマさん、これなんかどうでしょうか?ここでしたら、僕は前に行った事がありますし、出てくるモンスターもそんなに強くないのでやりやすいと思いますよ」

「本当?ならば今日はこのクエストを受ける事にしよう!」

「「分かりました!」」

「あ、その前にですね、アイテムショップに寄って行きませんか?補充しておきたい物があるんですよ」

「分かった!」


手短に準備を済ませて、クルスが加入後における【トラストフォース】のクエストに出るのだった。




とあるほら穴付近———————


「セイ!」

「ハァ!」

「【水魔法LV.1】『アクアスライサー』!」


「「「「「「「「「「「「ガアァァ!」」」」」」」」」」」


俺達はDランク向けのクエストである「“ブラウンハイエナ”が繁殖しそうなので駆除して欲しい」を遂行中だ。

“ブラウンハイエナ”は一体一体の強さはレア度Eと強くはないのだが、厄介なのは短期間で急速に数を増やしてしまう繁殖力であり、放置してしまうと、野菜を植えた畑や家畜系モンスターをボロボロにしてしまう農家泣かせだとも言われている。

俺達は依頼のあった村の村長から、生息地であるほら穴の場所まで赴き、実行している。

俺とセリカは剣術で、ミレイユは魔法で次々倒していく。


「「「ギュルル」」」

「遅いぞ」

「「「ギャアア!」」」


怯え始める3匹をクルスが二振りのロングナイフによる剣捌きで倒す。


「一回り以上大きいのが親玉みたいだな」

「そのようですね」

「アイツ倒さないと、またどっかで繁殖しかねないから……」


順調に数を減らし、十メートルほど離れた場所にいる集団のボスらしき個体を目にやった。

ここで始末しないと、隠れてまた繁殖してしまう可能性が高いから取り逃がせない。


「まずはこれを。ハァ!」


ボオォォン!

「グォ?」


するとクルスはジャケットの裏ポケットから煙玉を投げ付け、白煙が巻き起こす。


「グ?ゴォ?」

「【剣戟LV.1】『隠座十字(おんざじゅうじ)』!」

「ギャアア!」


やられた悲鳴と共に煙が晴れると、クルスによる【剣戟LV.1】『隠座十字(おんざじゅうじ)』による十字斬りによって、“ブラウンハイエナ”の集団のボスは倒れ伏し、光の粒子となって消えた。

【気配遮断LV.2】も使っているから、見事なまでの不意討ちだ。


「やっぱり戦闘も強いなぁ、クルス」

「それほどでも……」

「これで全部倒せましたね!」

「後は魔石や素材を回収して、村に戻って報告しに行きましょう!」


それから依頼主の村長さん達に不安要素を消せた旨の報告を行った後に帰路へ着いた。

拠点ギルドの【アテナズスピリッツ】に戻ってクエストの完了報告を行って報酬をいただき、“ブラウンハイエナ”から出た魔石と表皮の素材を換金してもらった。

その頃には夕方になっていた。




「では、クルスの加入を祝いまして……」


「「「「カンパーイ!」」」」


クエスト終わりに俺達は、新たに加入したクルスが仲間入りしたお祝いをしていた。

「僕、美味しくてカジュアルで意外とオシャレなお店を知っています」と言っていたクルスが勧めてくれた穴場的な酒場を紹介してもらい、そこで行う事になった。


「ん~~!このジャーキー美味しい!」

「5種類の野菜のテリーヌも絶妙な味わいがする~!」

「クルスが言うだけあって、美味いな!」

「気に入ってもらえてよかったです!」


クルスがリクエストしたお店なだけあって、内装はオーソドックスな酒場って感じだが、提供しているお酒や料理は良心的な価格でありながら、どれも美味しかった。


「こんな良いお店があったなんて知らなかったけど、本当にここでよかったのかな?」

「僕もこのお店は好きですので、むしろ嬉しいくらいなんです!」


そう言ったクルスの表情は、活力が少なからず滲んでいた。

それから一時間弱ほど料理と酒を味わい、感想を述べ合った。


「皆さん、今回はパーティーに誘っていただきまして、本当にありがとうございます!誠の意味で生きる希望と意志を与えてくれたこの御恩は忘れません!」

「「「……!」」」


お酒の勢いもあるからか、クルスはパーティーに入れてくれた感謝の気持ちを現していた。


「ちょ、クルス……」

「それはもういいって……」


クルスの隣にいたミレイユと俺の隣にいたセリカは宥めていた。

ミレイユが元パーティーから切り捨てられすぐの頃は似たような事を言っていたけど、やはり慣れないな。


「こんな風に能力やアイテムとかに頼る人ではなく、一心にその人を見てくれる人達に出会えたのは本当に初めての事なんです!」

「「「……」!」」」

「トーマさん達の仲間に迎え入れていただけて、ただただ嬉しいです!」

「そ、そうか……」

「まあまあ、お水をどうぞ」

「よしよし」


俺達は何度も頭を下げるクルスを慰め、励ましていた。

今思い返すと、クルスって初めに会った頃から少し控えめで謙虚、と言うより自信に欠けているような印象をしていた。

それから数日したら【トラップ感知】スキルを備えたレアアイテムを拾った事がきっかけでお払い箱になってしまったんだっけな。

よく考えれば、クルス君にそのアイテムを使わせれば鬼に金棒な気がするんだが、何でそれに思い至らなかったんだろう?

ミレイユの時と違って無理矢理見捨てられたのではなく、抜けるように突き放されてそれをのんだクルスが自主的に脱退した形だから、それ以上はギルドも追及できない。


「でも、色々大変な思いをしたクルスだけど、俺は出会えて、パーティーに入れて本当に良かったと思ってるよ。来てくれて本当にありがとう!」

「これからもよろしくね!クルス!」

「いっぱい冒険しようね!」

「皆さん……」


俺達は改めて、クルスの加入を喜び、共に頑張っていくための言葉をかけた!


「こちらこそありがとうございます!このクルス・ロッケル!【トラストフォース】で僕が持てる力の全てをかけて貢献していく事をお約束します!」

「「「オオォォォ!」」」


クルスは立ち上がり、エールをグイ―ッと飲み干した。


俺達は、新たな仲間の加入を心から喜び、皆でその楽しい時間と瞬間を分かち合いながら夜を過ごすのだった……。



面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます


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