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第37話 奇策の結果

知恵と根性と底力で窮地を超えていきます!

アライアンスを結んだ『シーフ』であるクルス君と共にDランク向けのコロニー殲滅クエストを遂行している。

しかし、コロニーのボスである“フィッシャーナイト”の想像以上の強さと立ち回りに苦戦を強いられていた。


「「ガアァァ!」」

(来た!)


2体の“フィッシャーナイト”は飛び上がり、槍を構えて突っ込んで来る。

俺とセリカ、クルス君はまだ戦えるものの、ミレイユは魔法攻撃こそできても左ふくらはぎを斬られているせいで速く走れない。


「今だ!」

「「グバッ?」」


俺が合図すると共に、俺とクルス君はミレイユを担いで走り、セリカは単身で別の方角へ走って行った。

“フィッシャーナイト”の2体は不意に起こした行動に一瞬戸惑った瞬間……


ジジジジジジジッ

「「ゴォ?」」


足元へ落ちている短い導火線に火花が付いた数個の小型炸裂弾がバラ撒かれていた。


ドオォォーン!

「ギャアァ!」


2体の“フィッシャーナイト”は至近距離の爆発に巻き込まれてダメージを受け、その周りに煙が巻き上がる。

視界が完全に悪くなった状況に戸惑う2体の“フィッシャーナイト”は動揺しながらも、互いに目が届く距離まで近づいていくが……。


ザシュッ!ザシュッ!

「「ギャアァァーーー!」」


2体の“フィッシャーナイト”は脚に強烈な激痛を覚えて叫び声を挙げた。

煙が大分晴れたところには……


「トーマさん直伝のモンスター狩りの戦法です」

「これは僕も考えた事はありませんでしたよ」




2体の“フィッシャーナイト”それぞれの片脚を、セリカとクルス君が切断したのだった。

セリカは【脚力強化】によるスピード特化で突っ込み、クルス君はそれに加えて【気配遮断LV.2】によるほぼ完璧な不意打ちだった。


「「ガババババッ!」」


片脚を失うと言う考えられない状況に、2体の“フィッシャーナイト”は斬られた脚を抑えながらのたうち回った。


「【氷魔法LV.1】『フリーズショット』!」

「ゴアァァ!」

「ザバアァァ!」

「大人しくしときなさいよ」


ミレイユが【氷魔法LV.1】の『フリーズショット』をそれぞれ2発ずつ浴びせる事で、下半身と両腕を凍らせる形で動きを封じた。

ミレイユも片脚は満足に動かす事こそできないが、魔力そのものは残っているからな。


「「ギイィ……」」

「ミレイユ、ありがとう」

「礼には及びませんよ。代わりに、派手にトドメを刺してあげて欲しいです」

「あぁ、分かってる」


万が一に備えてミレイユの近くで構えていた俺は2体の“フィッシャーナイト”の下へと近付き、セリカとクルス君も不審な動きを見せないように見張っていた。


「モンスターだけど、魔法を使える戦士とやり合った気分だったよ」

「同感ですね」

「でも、こうなってしまえばもう詰みです」

「「ガァ……カァ…」」


万策尽きたと悟ったように、うつ伏せに倒れている2体の“フィッシャーナイト”の呻き声が小さくなっていた。


「この勝負……」

「私達の勝ちよ!」

「終わりだ!」

「「ギャアァァァァ!」」


2体の“フィッシャーナイト”に向けて、クルス君は二振りのロングナイフで延髄を、俺とセリカはそれぞれ背中の中央を握る剣で力強く貫いた。

そしてモンスターの絶命を告げる光の粒子となって消滅した。

モンスター一匹いないことを確認して、コロニーの発生源のシンボルを破壊した。

お膳立ての意味を込めて、ミレイユによる【炎魔法LV.2】による『フレイムジャベリン』で破壊させる形で、コロニー殲滅を完了するに至った。

俺とクルス君でコロニーにいたモンスターの魔石や素材を集め、セリカには片脚を怪我しているミレイユの介抱をお願いした。

ミレイユには俺の【回復魔法LV.1】の『ショートヒール』で応急処置しておいたが、大事に至らないよう、なるべく動かさないように伝えた。

帰り道もクルス君の感知スキルで確認しながらゆっくり確実に進んでいき……


「「「「やったぞーーー!」」」」


こうして俺達は出口まで辿り着き、ギルドへと帰路に着いたのだった。

ミレイユも杖を突きながらセリカの肩を借りて歩き、時には俺やクルス君がおんぶする形で運びながら進み、ティリルに戻る頃には夕方になった。


「はい、コロニー殲滅の証拠はこれで確認が取れましたので、クエスト達成とします!本当にお疲れ様でした」

「ありがとうございます」


顔馴染みであるギルド職員のナミネさんから完了の報告をもらい、ホッとした。

Dランク向けのコロニー殲滅を達成できただけに、報酬は40万エドルと俺達から見れば中々の大金をもらう事になった。

大量の魔石や素材の換金を加えたら、ちょっとした小金持ちになれそうだ。


「お待たせ」

「やっぱりコロニー殲滅は結構お金もらえますね!」

「頑張って良かったって思えますよ!」

「……」

「それでクルス君」

「は、はい!」


報酬の入った革袋を持って、飲食スペースにいたセリカとミレイユ、クルス君と合流した。

ミレイユの左脚も大分治ったようで、一晩と少し休めば完治するだろう。

長テーブル越しに俺・セリカ・ミレイユの前にはクルス君がいるポジションとなった。


「これが君の受け取る報酬だ」

「え?金貨が10枚もって、こんなによろしいのでしょうか?」

「当然さ!君がいなかったら、クエスト達成どころか、こうして帰って来れた保証も無かったんだから!」

「これは私達からのお礼の意味を込めてです!」

「し、しかし……」

「クルスさんがいなかったら、色々不味い事になっていたんですよ!堂々と受け取ってもらわないと寝覚めが悪いです!」


クルス君は受け取るのを躊躇していたものの、俺達はどうかもらって欲しいと押した。


「では、ありがとうございます」

「それでクルス君、この後予定はない感じかな?」

「特にこれと言った事は……」

「このままギルド飯と洒落こまないか!?」

「え?」


今回は結構大変だったから、クエスト終わりの一杯が無性に飲みたかった。

そしてその功労者であるクルス君を是非とも誘いたかったのもある。


「大丈夫!俺達が奢るよ!」

「君とも色々話してみたい事があるのよ!同じような思いをした身としてはね!」

「ミレイユもこう言っているので、どうでしょうか?」

「……」


俺達の様子を見ていたクルス君は少し考えていた。


「では、お付き合いします!」

「そうか!ありがとう!」


その流れでクルス君を交えた飲み会が始まった。

いつも頼むメニューに揚げ物盛り合わせや普段食べない焼き物も注文してお酒を楽しんだ。


「トーマさん、今回はお誘いいただけて本当に感謝しております!」

「いいよいいよ……」

(飲み会が始まってこれで4回目だぞ!)

「僕は今までトラップ感知や斥候的な事ばっかりやらされてきたのに、トーマさんは僕の周りが見ようとしなかった剣技にも余り目を向けてくれたのは本当に嬉しかったです!」

「そ、そうか……」


お酒が進むにつれて、クルス君も口数が増えてきて、随所で「本当に感謝しています」と言ってきたから少し苦笑いし始めてきた。

【パワートーチャー】に籍を置いていた頃では考えられないくらいに活き活きできる瞬間ができたのか、ベロンベロンではないが、随分と饒舌になってきた。


「思ったんですけど、トーマさんって、人のやる気を引き出すのが上手ですよね!」

「え?」


クルス君が不意に言ったセリフに俺だけでなく、セリカやミレイユも一瞬固まった。


「やる気を引き出すって言いますか、その人が持っている長所に目を向けて何ができるかを見出して成長を促す才能があるって言いますか、そのお陰で僕もまた自信が持てるようになった気持ちも持っているんですよ」

「そ、そうかな……?」


クルス君は俺を心から褒め称えるような言葉に少しの動揺を覚えた。


「改めて思うとそうですよ!一時はフリーの身になりかけた私の事を暖かく迎え入れてくれたじゃないですか~?」

「トーマさんって、人を自然とやる気にさせるような、スキルとは全く違う何かを時折感じさせてくれるんですよね~!」

「ミレイユ、セリカもいつになく酔ってないか?」

「酔ってません!トーマさんは凄くて素晴らしくて素敵な人って言いたいだけです!」

「ちょっとセリカ!いつになくトーマさんに馴れ馴れしいじゃない!」

「それを言うならミレイユだってガッツリ密着してるじゃない!」

「深い意味も悪い意味もないわよ!トーマさんは本当に優しくて良い人だから……」

「何ですって~~!」

「何よ~~~~!」

「トーマさん、色々大変な思いをしている感じでしょうか?」

「まあ、気にしなくていいから……」

「僕、お水を持ってきます!」


お酒がドンドン回って行くにつれて、セリカとミレイユもちょっとしたヒートアップになっている事にあわあわし始めた。

それからは全員で水を飲んで酔い覚ましを行い、その場はお開きとなった。

クルス君は予約している格安の宿に戻り、俺はいつも以上に酔ったセリカとミレイユの介抱をしながら帰路に着いた。




翌日———————


「まずは、街へ行こうか?」

「「はい……」」


俺達はティリルに向かうが、二日酔いもあるのか、セリカとミレイユの足取りはいつになく重いと感じられた。

これは負担が比較的かからないようなクエストを探さないとと思いながら、【アテナズスピリッツ】に赴く。


「トーマさん!」

「「「ッ!?」」」


声を発したところへ目を向けると、クルス君がいた。


「お、クルス君、来ていたんだね」

「彼、朝一番から来ていたんですよ」

「……」


ナミネさんによると、ギルドの開館時刻直後に来ており、ずっと待っていたと説明した。

そのクルス君の表情は、緊張しながらも何かを決意しているような表情だった。


「僕から少しお話、いえ、お願いがあるんです。よろしいでしょうか?」

「「「……?」」」


クルス君に促される形で、俺達はギルド内の飲食スペースに座り、昨日飲んでいた時と同じ配置で彼一人が目の前に座っている。


「それでクルス君、お願いとは何かな?」

「またアライアンスを結んで冒険に出たいのでしたら構いませんよ」

「……」

「あの~どうしたんですか?お腹痛くなっちゃったとか……?」


俺達はクルス君を見つめ、彼が喋るのを待っている。


「皆さん、お願いがあります」

「「「……?」」」


そして拳を握りながら、口を開いた。




「僕を、【トラストフォース】に入れていただきたいです!」

「「「……え?」」」


クルス君は深く頭を下げて、懇願してきた。



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