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第35話 クルスって実は有能!?

縁の下の力持ちの重要さを教えていきます!


俺達はCランクパーティーだった【パワートーチャー】のリーダーであったドキュノから追放されたクルス・ロッケルと出会い、その経緯を聞いて憤りを感じていた。

俺は気の毒に思いながら、易々と放置できない気持ちも持っていた。


「一時的な期間でいいから、君と俺らでアライアンスを結んでみないか?」

「「トーマさん!?」」

「…ッ!?」


そう言ってクルス君は眼を見開いた。


「アライアンス?確かに受けられるクエストを探しているのは本当ですけど……」

「だからこそ、まずはこの掲示板を見て、君の実力や戦闘経験を積んでいる俺ら3名を鑑みてできると思うクエストを君が見繕って欲しい!!」

「ト、トーマさん……」


クルス君は驚いているが、これはパフォーマンスでも何でもない、互いの今後を見直し考えながらの気持ちで動いている。。


「【トラストフォース】の皆様と行動できるのでしたら、これはいかがでしょうか?」

「「「ん?」」」


クルス君が掲示板をじっと見て、一枚の依頼書を見せてきた。


「その内容通りなら、クルス君が言っていたスキルについても……」

「はい、お見せします。僕も出来る限りの事をするのはお約束します」

「お願いします……」


俺は依頼書一枚を見て、クルス君の決意が籠った表情やセリカとミレイユの受けてやらんばかりの表情を見て、腹を括る。


「よし!このコロニー殲滅のクエストを受けるぞ!」

「「ハイ!」」

「不肖、クルス・ロッケル!必ず貢献して見せます!」


そうして俺達は一つのコロニー殲滅のクエストを受ける事になった。




俺達はティリルから歩いて一時間ほどの大湿原に辿り着いた。

通り道の周りには、ぼうぼうに生えた濃い緑色の草木が一面に生えており、心なしか湿度も感じる。


「ここが目的地か……」

「ジメジメとしますね」

「水棲系のモンスターが出てきそう……」

「今日は晴れていますから、余計に湿度が高く感じますね」

「ではクルス君!」

「はい、まずは僕が……」


クルス君は前衛に立ち、【トラップ感知LV.2】と【気配探知LV.2】を発動させた。

ちなみにクルス君のステータスは目的地に赴く前に俺達に共有してもらえた。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

名前:クルス・ロッケル

性別:男

種族:ヒューマン

属性:無

年齢:20

職業:シーフ

冒険者ランク:D


スキル:

〈ベーススキル〉

【腕力強化】

腕力を上げる。

【脚力強化】

脚力を上げてスピードとキック力を上げる。

【気配探知LV.1】

モンスターや人の気配を半径100M以内の範囲で察知できる。

【気配探知LV.2】

モンスターや人の気配を半径500M以内の範囲で察知できる。

【魔力探知LV.1】

モンスターや人の魔力を半径100M以内の範囲で察知できる。


〈ジョブスキル〉

【剣戟LV.1】

強力な剣技を放てる。

【トラップ感知LV.1】

トラップの位置を半径100M以内の範囲で察知できる。

【トラップ感知LV.2】

トラップの位置を半径300M以内の範囲で察知できる。トラップの種類も認識が可能。

【気配遮断LV.1】

自分の気配を消す事ができる。

【気配遮断LV.2】

LV.1より上手く自分の気配を消す事ができる。自身に触れている人間がスキルを使うまで、その人物の気配も消す事ができる。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


こうして見ると、気配やトラップの感知に優れたスキル構成だと感じ、【剣戟LV.1】も習得している辺り、戦闘に向いていないと考えにくい。

クルス君のいた【パワートーチャー】のメンバーはそれぞれ攻撃的なスキルを持っていると聞いており、本当に彼は偵察や斥候などの役割を担ってきたんだなと直感した。

クルス君は腰回りに刃渡りが30~40センチのロングナイフを二振り構えており、投擲用のナイフや戦闘を補助する小振りなアイテム数点をジャケットの表面や裏に忍ばせている。


「確認したところ、半径300メートル以内にトラップやモンスターの気配はないですね」

「よし、行こうか!」

「トーマさん、前衛は僕が……」

「大丈夫!君一人に危ない目に遭わせるわけにはいかないから。それに、援護に入る準備も既に整えている!」

「「……」」

「分かりました」


俺はクルス君の横に立った。

前衛は自分が張ると言っていたが、任せっきりにしたままにはできなかった。

俺はクルス君を説得し、すぐ後ろにいるセリカとミレイユも「何かあった時には必ずフォローします」と伝えるように優しく微笑んでいた。

そして俺達は進み出す。




「今のところ、モンスターとは遭遇していないし、トラップも引っかからないね」

「トラップと言うのは基本、前もって仕掛ける事が前提ですからね。モンスターのコロニー討伐で奥まで赴く際にトラップが時たまありますけど、調査系クエストで遺跡や洞窟などの場所では、結構多いんですよ」

「遺跡と言えば、最初にトーマさんと調査系クエストで『イバヤ遺跡』に行った事を思い出しますね」

「そうそう、私が二人と出会ったのはその道中なのよね~」

「え、そうなんですか?そう言えばミレイユさん、ギルドの食事スペースで仲間をお払い箱とか何とか言ってた気が……」

「あぁ、ちゃんと話していませんでしたね……」


進んでいる道中でクルス君が遺跡や洞窟のワードが出た時、セリカが俺と二人で調査系クエストに初めて挑んだ話を思い出し、ミレイユも乗っかると、クルス君も会話に入ってくる。


「え!?ミレイユさんもパーティーから追放された経験があるんですか?」

「そうですよ!私の場合はレア度Dの“オーガナイト”に遭遇しちゃって、元パーティーの連中に囮役を押し付けられて逃げられないような状況にされて、満身創痍になったところでトーマさんやセリカと出会ったんです!」

「それをきっかけにトーマさんがミレイユを私達のパーティーに引き入れたって事です!」

「そうだったんですね。だからミレイユさん、僕が【パワートーチャー】をクビにされた経緯を聞いた時にはあんなにも……」

「そう、クルス君とはきっかけや経緯自体は異なるけど、見捨てられた君のために怒ってくれたって訳なんだ……」

「話を聞いてたら、僕の時よりも相当悪質ですね……」

「本当に酷い連中でした!今は奴隷としてどっかの山で馬車馬みたいに働いてるだろうって考えたら清々しちゃいますよ!」


ミレイユも元パーティーメンバーに雑で手酷い仕打ちを受けた挙句に見捨てられた経験があるから、クルス君の気持ちが良く分かるのだろう。

でも、そんな優しくて思いやり深いところが良いんだよね~。

ミレイユの時は遺跡の中で見捨てられる形で追い出されたのに対し、クルス君の場合は半ば脅しながらドキュノ達にいらない理由を伝えられた上で、自ら抜ける選択をした。

ミレイユの例において、加害者は重大な処罰を受けるが、クルス君の場合は自分の口から抜ける宣言をしたため、経緯や言い方に問題はあれど、何かしらのペナルティが課せられる確率は低い。

もしもどっかで【パワートーチャー】の誰かに会ったらカバーしてやらなきゃだな。


「ん?クルス君、疲れてないか?」

「え……?」

「感知系のスキルを乱発するのは、本人の自覚以上に精神力を削ってしまうんですよ」

「仮にコロニーへ辿り着いたとしても、疲れて動きのキレが悪くなりますよ」

「僕、疲れているように見えますか?まだ全然動け……」

「クルス君、向こうに大きな茂みがある。少し休憩しよう」

「しかし……」


クルス君は入ってからほぼ永続的に感知スキルを使って周囲にアンテナを張っていた。

セリカの言う通り、感知系のスキルは最初に少ない回数で使う分ならほとんど問題はないが、頻繁に使うと精神力が削れて見えない疲労が貯まりやすくなってしまう。

クルス君は広範囲でトラップやモンスターの襲撃に備えるために警戒しているので、少しだけ疲れの色が見え始めていた。

休憩を提案したが、クルス君は引き下がろうとしない素振りを見せた。


「肝心な時はもうすぐ来る。だから今は休んで体調を万全にしよう」

「【気配探知】なら私やトーマさんも持っていますから!」

「私は【魔力探知】を持ってるから大丈夫です!」

「皆さん、ありがとうございます。本当は凄く助かっています」

「よし、決まりだな」


そうしてクルス君を含めて休憩を取る流れになった。

クルス君には非常食と水分の補給をさせて、俺とセリカとミレイユの3人で交代しながら周囲を見張っていた。

その間にクルス君は充分な休息を取る事ができて、若干リラックスできている様子だ。

【パワートーチャー】にいた頃は、ここまで気遣われた事があまり無かったんだな。


「あの~皆さん、僕はもう大丈夫です!充分に休めました!」

「本当に大丈夫なのかい?」

「はい!お陰様で!皆さん、本当にありがとうございます!」

「困った時はお互い様ですよ!」

「私達も体力は回復できたから、むしろ助かったくらいですよ!」

「お礼は、コロニー殲滅のクエストを終わらせ、ギルドへ帰ってからにしよう!」

「ハイ!」


しばらくの休息を経て、再度スタートを切った。

それから奥に向かって歩いていると……。


「皆さん、止まって下さい!」

「「「んっ?!」」」

「トラップか?」

「はい、少々待ってて下さい」


クルス君は不意に声を挙げて、俺達の脚を止めさせた。

すると何を思ったのか、側に落ちていた野球ボールくらいのサイズをしたゴツゴツの石を拾い上げた。


「フッ!」


すると数メートル先にある雑草の生えた道に石を投げつけた。

その刹那——————


「シャアァァーー!」


石を投げた場所に向かって、体長10メートルと高さは2メートルくらいあろう黄褐色のヘビが俺達の目の前を通り去った。


「うわ、何だ?」

「やっぱりですね」

「もしかしてあれがトラップなんですか?」

「はい、あれは自然型のモンスター射出系トラップの一種ですね。踏むとモンスターがそれに反応して飛んで来る中々に面倒なトラップです」

「あのまま行っていれば、不意打ちを受けてダメージを受けていたって事か……」


俺達が驚いているのを他所にクルス君は解説していた。

それと同時に、腰に携えている二振りのロングナイフを抜いて、ヘビに向かって突っ込む。


「おい、クルス君!」

「大丈夫です!あれだったら倒せます!」

「「えぇ!?」」

「シャアァァーー!」


俺達は一気に不安な気持ちになったものの、クルス君は構わずヘビ型モンスターに突っ込み、そのヘビも飛び掛かろうとした。


「【腕力強化】・【脚力強化】!」

「【剣戟LV.1】!『隠座十字』!」

「ジャババアァァーー!」


クルス君はスキルで腕力と脚力を向上させてヘビの背後に回り、【剣戟LV.1】から放たれる『隠座十字』で首の後ろを深々と切り裂いた。

するとヘビ型モンスターは奇声を挙げながら倒れて光の粒子となって消えた。


「「「……」」」

「皆さん、お待たせし……」


開いた口が塞がらない俺達をよそに、クルス君は身を翻してきた。


「「「凄――――い!」」」

「え、何がでしょうか?」

「ヘビみたいなモンスターを一瞬で倒すなんて、強いじゃないか‼」

「今の素早くスムーズに滑るような動き、素晴らしい脚捌きです!」

「あんなに戦えるのに雑魚扱いされてたのが不思議なんですけど‼」

「さっき倒したのはレア度Dの中でも弱い部類の“マスタードスネーク”ですからそれほどではないと思いますけど……」

「いやいや実力あるよ!」


クルス君の想像以上の剣捌きやスピードに俺達は絶賛した。

クルス君によると“マスタードスネーク”はレア度Dのモンスターであるが、直線ダッシュで飛び込もうとする以外に目立った長所はなく、弱い部類と言っていた。

それでも、セリカにも引けを取らない機動力とぬるりと滑るように相手の背後に回れる脚捌きから放たれた剣技は間違いなく鍛えられたモノだった。


「あ、“マスタードスネーク”の表皮と魔石がドロップされていますね。」

「うん、回収できる素材やアイテムは回収していこう」


クルス君の実力の一端を垣間見た俺達は奥へ奥へと進んでいく。

クルス君の【トラップ感知LV.2】のお陰でトラップを適切に対処していき、無駄な体力を減らす事なく行けた。


「もうすぐ着きますよ」

「うん、分かった」

「トーマさん、どうします?まずは私とセリカの一撃で……」

「ミレイユ、よく分からない状況で魔力の消耗が大きい魔法を撃つのは得策じゃないわ!」

「あの~皆さん。一つよろしいでしょうか?」

「「「ッ!?」」」


コロニーの奥地まであと少しのところで作戦を立てようとする俺達に、クルス君が控えめそうな態度で手を挙げる。


「今回のコロニー殲滅は恐らくさっきの“マスタードスネーク”のような爬虫類系のモンスターが沢山出てくると踏んでいます。そこで、一つアイデアがあるんですよ……」

「アイデア……?」

「はい、よろしいでしょうか?」


クルス君は俺達に作戦を共有し合った。


「え?それって……?」

「大丈夫です!【パワートーチャー】にいた時からコロニー殲滅を経験した事は何度かありますけど、この作戦、意外と効果的なんですよ!」


クルス君は自信あり気に語った。


そして、俺達は『シーフ』であるクルス君の作戦を遂行していく事に……




面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます


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