第319話 【ターニャ視点】共に歩み続けたいから(前編)
ミリアの仲間であるターニャ視点のお話です!
「皆をやらしゃしないよ!」
【絶黒教団】の幹部の一角を担うミザリーと交戦している中、危機的状況に晒されているミリア達を守らんばかりにアタシが勢いよく最前線に立った。
「ターニャ!」
そこへ……。
「【氷魔法LV.4】&【岩石魔法LV.4】『ギガンティックランパード』!」
「【付与魔法LV.3】『エンチャント・ハーディス』!」
「【回復魔法LV.4】&【支援魔法LV.3】『メガアクティベーション』!」
「【武術LV.4】&【炎魔法LV.3】『紅蓮凱装・赫漣』!こんなもん止めてやるわよ!がぁあああ!」
ライラは表面を凍結させた分厚い岩石の壁を生成し、メロはそこに岩石の強度を底上げさせ、フォネはアタシの身体を回復させると同時に強化を施した。
アタシも一度は消された炎の鎧を再び纏い、両手を前にかざした。
禍々しくも濃密な黒い魔力を帯びた二つの漆黒の旋風を食い止めるため、それぞれが魔力と死力を尽くしている。
だったらアタシも気合いを入れて止めてみせる。
数刻の時間を経た時だった。
「「「「「くっ!」」」」」
魔力と魔力のぶつかり合いによって、そこを中心に暴風と砂塵が巻き上がった。
(全員、まだ倒れてはいなさそうね。その内、魔法がメインの三名は魔力の使用量からして、かなり疲労が溜まっているはず。とすれば、ここで仕留める)
ミザリーはこれまでの戦いの状況と照らし合わせながら分析し、突っ込んでいった。
だが、もう一つの影が飛び込んで来る。
「うおらぁああああ!」
「ぐっ!」
他でもない。このあたしだ。
アタシは炎を纏った拳でミザリーにストレートを浴びせるも、レイピアでガードされてしまった。
だが……。
「【武術LV.2】『バルカンラッシュ』!」
「むっ?」
(何だ?さっきよりも手数や力強さが上がっている?)
炎を纏った状態でパンチのラッシュをかましているのもあるけど、今は心持ちが違う。
私利私欲のために蝕まれようとする何の罪も無い人達を……アタシにとって大切な仲間達である【ヴァルキリアス】を始めとする守りたい者を守り抜きたいから立ち向かう。
「お前らの好きにはさせない!ここで屠ってやるわよ!アタシの命を懸けてでもね!」
アタシは一つの決心と信念を胸に抵抗をしていった。
その時に過ったのは……。
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回想・幼少期~現在まで———————
「酒が切れたぞ!さっさと買ってこいよ!」
「うぅうう!」
アタシが物心着いた頃から生きてきた環境は最悪だった。
父は日中から酒を飲んだくれては思い通りにならなかったら平気で周囲に迷惑をかけてしまうような振る舞いも全く厭わないロクデナシだった。
母は身体が弱いながらも食い扶持を守るためにこれと言ったスキルや術も無いながら生活を守ろうと必死に頑張ってくれた。
そんな中でも母は仕事の傍らにアタシへの愛情を忘れずに注いでくれた。
父のせいで金銭的にほとんど余裕が無かったのは本当だったけど、母と過ごした日々は細やかな幸せをもたらしてくれた。
母を楽させるためにも、大きくなったら今度はアタシがって思った。
だけど……。
「お母さん!お母さん!嫌だぁあああああああ!」
アタシが14歳の頃に母は病で倒れ伏し、闘病も空しく、最後は命を落としてしまった。
そんな時でも父は自分優先で道楽に走り続け、一度も母のお見舞いに来る事も無く、挙句の果てに薬物や酒に溺れ果てた末、死んでしまった。
それはアタシが天涯孤独を決定付けた瞬間にもなった。
大好きだった母を喪った虚しさや悲しさ、大嫌いだった父がいなくなった安堵と未練、複雑な感情が襲っていた。
アタシは『武闘家』のギフトを授かった事ですぐに冒険者稼業を始め、それから独り立ちできるようになり、パーティーを組んではお金を稼ぎつつもそれなりに上手く過ごしていた。
だけど……。
「何でこうなっちゃったのよ……?」
Dランクになってしばらくした頃、アタシが初めて入った冒険者パーティーはメンバーとの考え方や価値観の違い、待遇や報酬の分け前を始めとする金銭トラブル、人間関係のトラブルなどでこじれにこじれた挙句、空中分解になった末に解散した。
困っている人の力になりたい側と利得を優先する側に分かれ、アタシはどちらかと言うと前者だった。
過去の経験から、アタシは人の役に立ちたい気持ちがメンバーの中でも強かった分、目先の利益しか見ない他の面々からも煙たがられていたんだと思う。
この時のアタシは人間不信気味になっていて、何を目的に生きているのか、他の道を模索すべきか、冒険者稼業をしている中で一番悩んでいた。
「これからどうしよう?」
一人でもできるクエストをこなしては酒で現実を忘れて、暇で仕方ない時はトレーニングの日々を過ごしていた時だった。
「ねえ。あなたが『武闘家』のターニャ?」
「あん?」
ギルドの依頼掲示板とにらめっこしている時、一人の女性があたしに声を掛けてきた。
振り返ってみると、四人組の女性がいた。
「アタシがターニャだけど?確か、えっと……。てか、誰?」
その面々、特に金髪のロングヘアをしている女性はギルドでも見覚えがあったけど、中々思い出せず、ぶっきらぼうに質問してみた。
「私はDランクパーティー【ヴァルキリアス】のリーダーをしているミリア・メーティスよ!同じランクで前衛を務められる冒険者を探しているところなの」
「ミリア?あっ!あのミリア?」
自己紹介されてようやく思い出し、当時はまだDランクだった頃のミリアだった。
そこにはライラやメロ、フォネもいた。
「アタシに何か用?」
「大量発生したモンスターの討伐クエストを引き受けようとしているんだけど、接近戦を得手とする冒険者がもう一人いればって思ってるんだ。それに、依頼主さんとはそれなりに縁がある人だからできればやりたいと思っているの。それで……あなたで良ければ同行してくれたらなって……」
「……」
何で自分なのかって疑問に思いつつ、日銭稼ぎに困ってしまいたくないアタシにとっては渡りに船のような誘いだったので、まずはお試しの意味で付き合った。
◇—————
「オラァア!」
「ハァア!」
「キャァア!」
「危ない!」
「ありがとうございます!」
ミリア達の連携もあって、大量のモンスター討伐のクエストの結果は成功に終わった。
「イッツ!」
「【回復魔法LV.2】『ハイヒール』!」
「あ、ありがとう」
「こちらこそ。不意討ちされかけたところを助けてくれたじゃないですか」
「それは……。まあ……えっと……」
「『僧侶』のフォネです」
「そうだそうだ。フォネだったね」
左腕を怪我していたので外傷用のポーションで治そうとしたところ、フォネの【回復魔法】で治してもらい、傷も綺麗サッパリ無くなった。
「やっぱり凄いわね。ターニャ」
「凄いって何が?」
「【武術】スキルだけじゃなくて【炎魔法】も使えるなんてね。接近戦はもちろん、その火力を中距離戦でも高いレベルでこなせるのは凄い事よ。あなたのお陰で私も思う存分に戦う事ができたわ」
「私は『魔術師』と言っても、【炎魔法】が使えないからターニャが羨ましいよ。戦術にも幅が広がりそう」
「ミリア。ライラ」
ミリアとライラのお世辞抜きで私の事を褒めてくれた。
「高い身体能力に戦闘センス。頼もしかったよ。お陰で後衛の私達も自分の役割に集中できるから、精神的にもゆとりが持てるようになるから、とてもありがたいよ」
「メロ……」
メロも褒めてくれて、フォネも笑顔を浮かべてくれた。
こんな風に働きぶりを称賛してくれたのはしばらくぶりだった。
「とりあえず、落ちた魔石や素材を回収しよう!」
「「「ええ!」」」
◇—————
「はい。これがターニャの分ね」
「いいのか?こんなに……」
「報酬も良かったし、あなたが弱いけど大量にいるモンスターを駆除してくれたのも大きかったからね」
「ありがとう……」
ギルドでミリアから報酬を受け取った後、アタシはその場を去ろうとした。
「ターニャ!」
「ん?」
「あのさ……」
ミリアが呼び止め、ある事を伝えられた。
「え?」
「もちろん、あなたさえ良ければの話だけどね。結論は明日聞くから」
「お、おぉ……」
宿へと戻っていったアタシはミリアからの話を頭の中で思考と反芻しながら一晩を過ごすのだった。
◇—————
「早かったわね」
「まあ、早く起きちゃったからさ」
アタシがギルドの入り口で待っていると、ミリア達がやって来た。
昨日の話の答えを出すため、皆と向き直る。
そして……。
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