第33話 ミスリルは凄い‼
異世界系やファンタジー系で有名なあの石が中心のお話です!
ビュレガンセで屈指の港街であるシーゾスで漁業のお手伝いを終えた俺達。
3日後———————
「【氷魔法LV.1】フリーズショット!」
「今ッ!」
「「ハアァァァ!」」
「プギャー!」
俺達はティリルから歩いて一時間くらいの町にて、「レア度Dの”マッドボア”が増えてきて森をめちゃくちゃにしているから討伐して欲しい」とクエストが張り出されたので、それを引き受けていた。
「後2体か……」
「セリカ、もう一度私の……」
「二人共、一体は俺一人に任せて欲しい」
「「え?」」
“マッドボア”は高さ2メートルほどある大きな猪みたいなモンスターであり、巨体に似合わぬ速さで強烈な突進を浴びせるモンスターだ。
そのモンスターも最初は10体ほどいて、3人で連携を取って倒していった。
最早定番になりつつある突進力やパワーのあるモンスターは「ミレイユの【氷魔法】によって突っ込んで来るところに脚を凍らせて怪我を誘い、そこを俺やセリカがトドメを刺す」戦法をしっかり活かす事を中心に確実に数を減らして残り2体となった。
だが、俺は前に出て一体と相対し、もう一体はセリカとミレイユに任せる形を取った。
「大丈夫。必ず何とかする!いや、無事にやり切る!」
「「……」」
俺がそう言い切ると、セリカとミレイユは無言で頷き、もう一体と向き合った。
“マッドボア”の前に立つと、地面を踏み鳴らしながらまた突進してくる。
「ブルルルッ!」
(まだだ、まだ……)
俺は勢いよく突っ込む様相を冷静に見ていた。
「ブルアァァ!」
シュッ
「ここだー!」
「ブアァァーーー!」
俺は“”マッドボア“”を切り裂いた。
その……左後脚を……。
四足歩行のモンスターが一本でも脚を切断されてしまえば、歩行能力は完全に失ったに等しく、俺は倒れているところへ力強く中心から急所を抉るように切り裂き、”マッドボア”は光の粒子となって消えた。
足元には”マッドボア”の魔石と毛皮を含めた表皮のような素材が落ちていたので、換金するためにこれらも取っておいた。
「トーマさん、大丈夫でしたか?」
「うん、ほぼ無傷で倒したよ!」
「こっちは二人で問題なく倒せました……って」
「一人で問題なく倒せたんですか!?」
「うん、上手くやれたよ」
「「良かった~」」
「心配かけてごめんね。さぁ、【アテナズスピリッツ】に戻ろう!」
セリカとミレイユには心配されたものの、その時の状況を話してみると納得してもらえた。
セリカは接近戦になる事も多いから参考になったと受け入れられ、ミレイユも立ち回りにおけるいい戦術における引き出しが増えたとこちらも受け入れられた。
そうして町長さんに完了報告をしてギルドに戻り、完了と認定された。
報酬を受け取った後に“マッドボア”から出た魔石や表皮を提出して、少なからずお金をもらう事もできて、懐も暖まった。
「ゴブリンの時は魔石しか出なかったけど、今回はそれ以外も手に入って良かったね」
「ゴブリンやオーガ、オーク系は無いですけど、動物系のモンスターは魔石以外の素材を落とす事がありますからね。」
「特に毛皮のような類は、レア度次第では貴族にも気に入られるって話ですよ!」
「なるほど。モンスターを倒すと出てくる魔石を始めとした素材があるから冒険者がクエストに出てゲットして、鍛冶屋や錬金術師のような生産職が武器やアイテムを作って、商売人が武器を手に入れて冒険者に売り捌いてって言う感じで回ってる気がするな」
「その通りです!トーマさん、分かってきましたね!」
「まぁね……」
冒険者としてのキャリアや知見があるセリカ、行商人の娘として育ったミレイユの言葉を聞いて、改めてこの世界は様々な人間や職業があって回ってるんだと思うのだった。
RPGや漫画やアニメで見聞きした知識が役に立つなんて、良い事以外何もないくらいだ。
いや、RPGのような世界に飛び込んでいるんだったな、現在進行形で……。
「いらっしゃい!しばらくぶりだな、トーマ達!」
「どうも、店主さん」
日が落ちるまで時間はあるので、俺達は以前に武具や装備を新調するために立ち寄った武器屋である『ロマンガドーン』に顔を出した。
戦闘や冒険をサポートするアイテムなどの補充もあるが、新しい武器についてもチェックしておきたかったのも目的の一つである。
「お前さんら、随分と活躍しているそうじゃないか?」
「はい、お陰様で……」
「見たところ使い込んでいる形跡はあれども、修繕や保守は怠っておらんようじゃな……」
「パーティーを組んだ記念で買った思い入れのあるモノですから!」
「そうかい!それを言ってくれりゃ武器屋冥利に尽きるよ!」
店主さんにも俺達の活動は少なからず耳に入っているようで、俺達が身に付けている武具を見ただけでどれだけ使っているか、きっちりとメンテナンスできるかが判断できる辺り、流石の目利きだと思った。
「そうそう、最近良い武器が入ってな。向こうのショーケースだが、見てみるかい?」
「はい!」
店主さんに促されて、俺達はそのケースの下へと歩いた。
「うぉぉ……」
「宝石のような銀色が素敵~!」
そのケースの中には、刃渡り1メートル近くありながら、普通に磨いた鋼や鉄がボケて見えそうなくらいに神秘さも感じ得るような銀色に輝く片手剣だ。
「これって、ミスリルでできた剣ですよね?」
「その通りじゃ」
「「ミスリル!」」
セリカの言葉に店主が頷き、俺とミレイユは驚く。
おいおいおいおいおい、ミスリルと言えば、俺はその名前を死ぬほど聞いた事あるぞ~。
ミスリルとはこの世界における金属の一種であり、鋼の数倍の硬さを持ちながら、それよりも軽いとされていて錆びにくいとの話だ。
今までの鋼や鉄と言った武器や防具と違い、魔力伝達率が非常に高く、持ち主の技量に加え魔力次第で【剣戟】を始めとする武具を扱うスキルの威力を相対的に高められるほどの優れた金属と聞かされた。
中にはミスリルの粉末が表面上に散りばめられたローブやジャケット等もある。
ファンタジーの世界ではド定番の金属であるからね。
また、Cランク以上の冒険者の多くは何かしらであるが、ミスリルでできた武具を一つ以上持っているって話だ。
A・Bランクともなれば、ミスリルでできた武具を一人2つ以上持っているパターンも多いと聞かされ、ファンタジーでは王道と言われるのも納得だと感じた。
「値段はって……」
「え,180万エドル!!??」
「こっちのナイフのようなサイズの短剣は90万エドルですよ!」
「この重戦士が纏いそうな鎧に至っては450万エドルですよ!私は魔術師だから関係ないけど!」
鋼よりも硬く、おまけに軽くて魔力を流せば強い威力を発揮できる特殊な金属だから当然と言えば当然だが、ミレイユが眺めている鎧だけでも、今あるパーティーの蓄え分から完全にオーバーしているのに加え、俺の前にある片手剣を買ったら一気に懐が寒くなる、と言うより最早極寒になる値段にビックリした。
一流の冒険者はやはり装備も一流なんだなと感じたが、お金もかかるんだなと思った。
「せっかくじゃ、少し手に持ってみんか?」
「え?よろしいのでしょうか?」
「あぁ、いいぞ。セリカちゃんもどうじゃ?」
「え?私もですか?では、お言葉に甘えて少しだけ……」
店主さんのご厚意で剣を振るう俺とセリカはそれぞれミスリルでできた片手剣と脇差のようなサイズの武器を握ってみた。
「おぉぉぉーーーー!」
「本当だ!普段持っている剣の方が重く感じるくらいに軽い!」
「凄く綺麗に輝いてる……」
「そうじゃろう?」
俺とセリカが試しに握ってみると、今まで使っていた武器とは違う何かが漲るような感覚を身体の中に駆け巡った。
握った瞬間に、間違いなく一級品と思わせる逸品だ。
普段は剣と言った類の武器を使わないミレイユが刃渡り50センチいかない程度のナイフを握ってみたところ、俺やセリカに比べて非力な彼女でも活き活きと振り回せそうなくらいの軽さにビックリしていた。
これなら緊急のサブウェポンの一つとして持たせるのもいいな。
まずはそれだけのお金を稼いでからの話だけど。
「本当にありがとうございます。お金貯めていつか買いに行きます!」
「そうかいそうかい、その日が来るのを楽しみにしているよ」
俺達は体力や魔力を回復させるポーションをそれぞれ数本とモンスターを攪乱させる戦闘補助のアイテムやリペアフルードを必要分購入して店を後にした。
「しかし、ミスリルの剣があれほど高価なんて思わなかった……」
「ミスリルでできた武器や防具は基本値段が高いのは前から知ってはいたんですけど、刃渡りの短いナイフで100万エドル弱なのは驚きでした……」
「防具はともかく、ミスリルの粉末が表面に拵えた服まであんな値段になってるとは……」
「「「はあ……」」」
(((これはお金の管理にも気を配っていかないとだな~!)))
ミスリル製の武具を買うにはクエスト達成でお金を稼ぐだけでなく、パーティーの財政管理にも気を配らなければと改めて思いながら帰路に着く俺達でした。
翌日——————
昨日のミスリル製の武具の高さに驚愕した事は置いといて、今日もクエストを受けるために【アテナズスピリッツ】に赴いた。
「今日はどんなクエスト受ける?」
「昨日は回復用のポーションも買い込んだので、モンスター討伐系のクエストがいいと思うんですけど、トーマさんはどうしたいですか?」
「そうだね、まずは掲示板を見てから……ん?」
「どうしましたか?」
「あそこにいる彼って……」
どんなクエストを受けるか考えるため、掲示板の方向に向かうと、見覚えがある一人の男性を発見した。
「あの~すいません?」
「ッ!?ってあなた方は【トラストフォース】の皆様……」
「君は確か【パワートーチャー】のクルス君だよね?見覚えあるから声をかけてみたんだけど……」
「……」
「どうしたのかな?」
それは数日前に俺達に声をかけてきたCランクパーティー【パワートーチャー】の一人にして冒険者ランクDの『シーフ』であるクルス君だが、周りにそのリーダー格のドキュノさんや他のメンバーがいない。
「クルス君……」
「実を言うと僕……」
「【パワートーチャー】を辞めさせられたんです……」
「「「え……?」」」
数秒の沈黙の後に開かれたクルス君の口から出てきた言葉。
それはパーティーを追放された事実であり、俺達は信じられない気持ちを抱えて絶句した。
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