第303話【ウルミナ視点】幹部との邂逅
「グガァアアアア!」
「フッ!」
私達は【絶黒教団】による黒い魔力と“ゴーレム”の改造手術を施された“オーガジェネラル”と交戦している。
優れたパワーとタフネスを売りとしているモンスターだが、当然ながら従来の個体よりも格段に強い。
“ゴーレム”が使う装甲による魔法に対する防御性能だけでなく、大剣や魔力を込めて発射する大砲まで使用してくるからそれも厄介さに拍車を掛ける。
少なくともCランク以下のパーティーでは手に余る相手だけど……。
「確かに強力だけど、それだけじゃ私達には勝てないわよ」
「ゴォオオオオオ!」
「【土魔法LV.3】『グランドバインド!』」
「ガァア!?」
私は大量の砂を生み出し、太い鎖を形成して“オーガジェネラル”が備える砲台を縛り付けて引っ張り、明後日の方向に反らす事で攻撃を回避した。
「ハァア!」
「ギギャァアアア!」
ラルフは一瞬の隙を突くように投げナイフを“オーガジェネラル”の左眼を潰した。
痛みで動きも少しだけ止まった。
「【剣戟LV.3】『天音断ち』!」
「グガァアアアア!」
ジーナの斧による強烈な斬撃で“オーガジェネラル”の装甲で覆われていない部位を正確に狙い、左腕を両断した。
豪奢な見た目に違わず、ジーナはパワーも当然だが技術も優れている。
「ランディー!」
「待ってました!行きます!」
ルエミによる武器の貫通力を底上げさせる【付与魔法LV.3】『ウエポンズペネトレイション』を受けたランディーが爆ぜるような踏み込みを見せて“オーガジェネラル”の懐へ飛び込んでいった。
「【棒術LV.3】『螺旋豪突』!」
「ガァアアアアア!」
強烈な螺旋回転を帯びたランディーの突きは“オーガジェネラル”の首にクリーンヒットした事により、その頭が宙を舞い、その身体は地面に倒れ伏した。
勝負ありだ。
「ふう……」
「流石ね」
「ルエミさんのサポートを含めて皆のお陰ですよ」
まずは目の前の敵を倒せた事に少しの安堵が訪れた。
初見だったら分からなかったけど、“ゴーレム”の改造手術を施されたモンスターについては前々から教えられていたのもあり、後に引かない程度のダメージで倒す事ができた。
「皆……気付いているかもしれないけど……」
「ええ」
「考えられるのは一つしかないねえ」
私の問いに対し、ルエミとジーナは既に何かを知ったような素振りを見せた。
ランディーとラルフも同様だ。
「黒い魔力と“ゴーレム”のスペックを備えた“オーガジェネラル”を相手に一方的だなんて……。流石は国内外に名を轟かすAランクパーティーだね~」
「「「「「ッ!?」」」」」
部屋に怠惰と感心が入り混じったような口調が響き渡った。
甲高い靴の音と共に奥から一人の女性が姿を現した。
従来のタイプよりも動きやすさを取り入れたような黒いローブに身を包み、黒ずんだピンク色の長髪をハーフアップに纏めた退廃な空気を纏う見目麗しい女性であるが、同時に異質な気配も放っている。
「何か厄介そうだな~」
「あなた、何者なの?」
私は只ものではない事を察しながら、相手の素性を問うてみた。
「私……?私は【絶黒教団】のアルーナって言うの。一応、幹部の座にも就いてるんだよ~」
「「「「「何?」」」」」
気怠そうにしつつ、臆面もなく自ら名乗った女性はアルーナと言う【絶黒教団】の幹部の一角である事を明かした。
余裕か、策略か……。
「アルーナ!あなた達【絶黒教団】の目的は一体何なの?」
「こんな島の中でさ、私ともう一人の仲間がメインでいろんな実験や仕事をしていたんだよね。けど、最近になってその役割は終わりだとか言ってここもお役御免の廃墟になっちゃったのよ。でも、それは組織の方針で決まったから使い道が変わっちゃったんだ」
「どういう意味?」
どこか割り切ったような表情をしているアルーナは更に口を開いた。
「ここはね……。あんた達のような連中を誘い出して釘付けにするための場所なんだ」
「何?」
「もしかして、この島に【絶黒教団】の拠点があると言う情報を意図的に流したの?」
「うん。ここが重要な拠点だったのは本当だよ。実際、野望を実現させるためにいろんな事をしていたからね。強力な魔道具の開発や魔改造、さっきの“ゴーレム”の改造手術を施したモンスターもその実験で生まれた一体だからね」
「だとしたら、他の幹部……。いや、あなた達のボスも……」
「もういないよ。いるのは私ともう一人の幹部だけ。他の幹部達も別の仕事でここを既に離れているし、帰って来ないよ」
私とルエミの質問に対し、アルーナは淡々と答えていく。
緩さを感じさせる振る舞いをしているが、嘘を言っているようにも見えなかった。
私はアルーナの話を聞いて何が目的なのか。いや、正確には私達をどうするつもりなのかを悟った。
「読めたわ。【絶黒教団】の重要拠点としていたこの島に私達を誘導させたのは、あなたの仲間がこれから始める大規模なアクションを引き起こすための囮なのね」
「その通り。流石は【ノーブルウィング】のウルミナ。頭の回転が早いこと……」
私が狙いを確認すると、アルーナは正解を言い当てたリアクションを取った。
するとアルーナは手に持っている黒い魔石が埋め込まれた箱の形をした魔道具を斜め上に掲げた。
「でも、言ったはずよ。あんた達を釘付けにするってね」
魔道具から発せられた黒く不気味な光と共に私達を包み込んでいった。
「これは?」
「これであんた達は私を倒すまでここから出る事もできない」
「何ですって?」
アルーナが使った魔道具によってドームのように展開された空間の中に私達は閉じ込められた。
この窮地を乗り切るには発生源である魔道具を破壊するのがセオリーだ。
私達は即座に臨戦態勢を取った。
「釘付けにしておけって言われたんだけど……。やっぱり……」
「「「「「ッ!?」」」」」
(黒い魔力が急激に膨れ上がっている?)
アルーナの中にあるどす黒く禍々しい魔力が吹き上がり、その身体を包みながら、太い枝のような物体を身体中から生やしていき、その様相を見たラルフは一層険しい表情となった。
「ここで潰しておくのがベストよね」
もう……待ったなしだ。
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