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第286話 狂気と道連れ

決着は着いたけど……。

「はあ……はあ……」

「ガ……ハ……」

「「「「……」」」」


俺は【絶黒教団】の幹部の一人にして、セリカ達を操ったギーバとの戦いに勝利した。

俺が持つユニークスキル【ソードオブハート】を解除し、倒れて意識を手放しかけているギーバに目をやる。

俺はこのギーバを怒りのままにボロボロにし、倒れたまま動けないくらいに追い込んだ。

俺達【トラストフォース】のサブリーダーであり、掛け替えのない仲間であるセリカを魔法で操って戦わせ、残酷に利用したのだから。


「トーマさん。あの……」

「心配するな。もう、落ち着いたよ……」


虫の息同然のギーバが立ち上がれない様子を見て、俺の首元にぶら下がっているセリカからくれた首飾りを握りしめながら気持ちを静めさせていった。

クルスから気遣われたが、冷静になれた俺は気丈に振る舞う。


「とりあえず、勝ったみたいだね」

「ええ、もう大丈夫そうですね」

(長い付き合いと言い切れはしませんが、あれほどまでに怒りの感情を抱きながら誰かを殴るトーマさんの姿を見たのは初めてだ。トーマさん。やはり、それほどまでにセリカさんの事を……)


エレーナは俺がギーバをこれでもかと言わんばかりに殴打しまくる姿を見て、俺とセリカへの想いの強さを改めて感じているようだ。


「ナターシャさん。すいません。騎士団としては拘束した上で色々と聞き出したいところの筈なのに、ここまでやってしまって……」

「それは……。もう気にしなくていい。だが、この廃屋敷が【絶黒教団】の活動拠点の一つであるならば、奴らの野望や悪事の証拠も掴めるだろう。それに、トーマ殿をあそこまで怒り狂わせるほどの所業を行ったんだ。誰も責められないさ」


そう言うナターシャさんの顔は凛としつつもどこか憂いを帯びているようだった。

ナターシャさんも部下の騎士達を操られて戦わされたんだ。

やり合っている時も葛藤を抱いていたと考えるのが当たり前だ。

俺は倒れて動けなくなっているギーバに目を配らせた。

死期が迫っているかのように、ギーバの身体から黒い魔力が霧散しており、放置していても命を落とすのは誰の目から見ても明らかだろう。


「は……。はははは……」

「「ッ!?」」

(コイツ、まだ?)


仰向けとなって倒れ伏しているギーバは掠れたような笑い声を出していた。

その表情には割り切っているようにも、既に死を受け入れ切っているようにも見える。


「まさか。【絶黒教団】の幹部であるこの私が……人間に敗れるとは……ゴフッ!世の中とは分からない……な……」

「クッ!」

「そう身構えなくてもいいですよ。私はもう助かりません。それに、私を潰したくらいで我が組織は止まりません。教団トップを筆頭に私を除いた7人の幹部と黒い魔力を纏って強化された兵隊。強力な魔道具や改造ゴーレム等々。我々を止められる存在などありませんよ。本格始動した時、あなた達が見るのは真の地獄であり、教団がビュレガンセを……。そして世界を支配するのです」


ギーバが語るその言葉を狂言と捉えるには十分過ぎた。


「私はもう死にます……。ですが、教団が世界を蹂躙する様相を……。世界を我々の手に落ちる瞬間が来る日を地獄の底から見守り続けますよ……」

「ムッ!」


ナターシャさんはギーバの左手の指を密かに動かしているのに気付いた。


「但し……。皆さんをただでは返しません!」

「ハッ!」


目にも止まらぬ剣閃を走らせるナターシャさんはギーバの左腕を斬り飛ばした。

しかし……。


「流石と言うべきですが、タッチの差で間に合いませんでしたね」

「何だ?」

「地鳴り?いや、これは?」


ギーバが一笑に付すように笑った瞬間、地震のように部屋が揺れ始めていった。


「動けないからと言ってすぐにトドメを刺さなかったのが仇になりましたね。お喋りに長々と付き合ってもらっている間にこの部屋を建物と一緒に崩壊するよう仕掛けを起動させておいたんですよ」

「何?」

「最早この場所は無用の長物であり、私はこの有様です。ですが言いましたよ。ただでは返しませんって……」

「コイツ。そこまで」


何とギーバは左手を微かに動かし続ける事によって、廃屋敷を崩落させる仕掛けを起動させていた。

自分の命が助からないのを悟り、俺達を道連れにする算段だったのだ。


「私と一緒に地獄で【絶黒教団】が世界を支配する瞬間を共に見守りましょう!フフフフ……ハハハハハハハハ!」


もう喋る事もままならないと思われたギーバは血を吐きながら、狂ったように笑っていた。

俺とナターシャさんはギーバから離れたところにいる皆の下へ集まる。


「トーマさん!」

「隊長!」

「全員!ここから脱出するぞ!」


ナターシャさんは俺達に脱出を指示し、それに従う。

しかし……。


「もう遅い!」


しかし、崩壊が急速に早まり、瞬く間に部屋の中にガレキが次々と振ってくる。

セリカだけでなく、ギーバに操られた騎士数名も同じく気を失っている。

このままではまずい。


「ああ……。【絶黒教団】!万歳!!【絶黒教団】に栄光あれ!!!」


ギーバは高らかに叫ぶと、天井から落ちてくるガレキの数々に圧し潰されていった。


「くっ!」

(このままでは……)


そして、崩壊していく天井から数多の落石が俺達を襲うのだった。


◇—————————


「それにしても、東方支部の隊長から直々に応援要請が来るなんてね」

「ええ。嫌な予感がしてきたわ」


馬車の中で神妙な面持ちで話しているのは、同じギルドに所属しているBランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさんと同メンバーであるリエナさんだ。

ナターシャさんによる緊急の要請を受け、ウィーネスさん達を含めた冒険者パーティー数組が東方支部の騎士達の操縦する馬車に乗って廃屋敷へと向かっている。

大急ぎで飛ばしているため、目的地が近付くにつれて皆の表情は深刻になっていった。


(今回の東方支部の騎士達との合同調査に行っているのがトーマやセリカ達のパーティーなんてね……。せめて何事も無ければいいんだけど……)


ウィーネスさんが現地に赴いている俺達を案じている時だった。


「ん?」

「何?地震?」


ゴゴゴゴと言う地鳴りが響き始め、周囲の面々が驚きの表情を見せていく。

次第に揺れが大きくなり、思わずウィーネスさんが馬車から顔を出した。

その数秒後……。


「ッ!?」

(あれは……?)


ウィーネスさん達の目に映ったのは、俺達がいる廃屋敷の真下から轟轟とした音と共に放たれた、どこか神秘さを感じさせる野太い光球だった。

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