第30話 Dランク冒険者へ
主人公がまた成長しました!
装備を新調して、この数カ月間Dランククエストにも積極的に挑み続けていたある日……。
とある山岳————
「【氷魔法LV.1】『フリーズショット』!」
「【風魔法LV.1】『ウインドスライサー』!」
「「ギョーーーー!」」
「トーマさん、落ちてきますよ!」
「お願いします!」
「あぁ!」
俺達はDランククエストで『ダカル山』と言う山岳地帯でコロニーができそうになっているレア度Dモンスター『“アンガーイーグル”』の群れの討伐に赴いていた。
『“アンガーイーグル”』は体長3メートル近くのイヌワシのようなモンスターであり、鋭い鉤爪とクチバシが自慢の鳥獣型のモンスターだ。
近づく相手が人間だろうがモンスターだろうが、自分の仲間以外の存在が近付くと容赦なく襲ってくる、正に名前の通り怒りやすくて縄張り意識の強いモンスターだ。
思えば、俺って飛行してくるモンスターと戦闘するのは初めてだな。
セリカとミレイユは飛行系モンスターの討伐した経験は何回かあるらしいが、それも中遠距離から攻撃できる手段あってのものだろう。
空高く飛ぶモンスターが相手だと、離れた相手に攻撃もしくは自分達を防御する手段を持たない冒険者から見れば厳しいのは想像が付いた。
少なくとも異世界から来たばかりの俺では打つ手なしだったろう……。
でも、今は違う……。
「ハァッ!」
「「ガァァーーーー!」」
セリカとミレイユの魔法攻撃で2羽の“アンガーイーグル”の翼を、1羽は翼を凍り付かせ、もう1羽は風の刃で切り裂いてそれぞれの翼を動かせない状態に追いやり、俺のいるところまで落ちてくる。
そこを俺の【ソードオブハート】によるスキル強化で一気に剣を振り抜き、2羽の“アンガーイーグル”の急所である首や鳩尾を切り裂いて倒した。
力なく地面に叩き付けられたその2羽は光の粒子となって消えていった。
「トーマさん、やりましたね!」
「どんどん剣の筋が良くなってきたのが見て分かりました!」
「本当かい、ありがとう!」
“アンガーイーグル”や亜種の下位モンスターを殲滅する事に成功し、喜びを分かち合った。
まずは俺が囮を買って出て“アンガーイーグル”達を誘き寄せ、一か所に固まったところでセリカとミレイユが威力や範囲がより強い【風魔法LV.2】や【炎魔法LV.2】による魔法攻撃で半分以上を殲滅し、残った分は俺達が上手く立ち回りながら倒していき、時には危ないと思った場面にもそれぞれがフォローし合った。
きっちり補足するが、囮役は俺が自らやると言い切り同意を得たうえで行った。
当然、ミレイユが前いたパーティー連中が彼女を無理矢理押し付けて自分らだけ逃げるような事は絶対にない。
作戦が上手くはまって全滅するに至り、クエスト達成ってわけだ。
それから倒したモンスター達の魔石を拾い集めていき、結構な重量にはなった。
「あ、トーマさん、頬に傷が……」
「左腕にも打ちつけたような跡が……」
「あぁ、これか……」
“アンガーイーグル”の殲滅は終わったものの、俺は数か所の傷や痣を受けていた。それを見付けたセリカとミレイユが少し心配したような表情を見せて、傷を癒すポーションを取り出そうとしていた。
「それなら、大丈夫だよ、見ていて……」
俺は二人を止めさせ、自分の胸に手を添える。
「【回復魔法LV.1】『ショートヒール』」
パァァァ。
ほのかな光が俺の手に灯った瞬間、頬の傷や身体に付いた痣がみるみる消えていった。
「「スゴーーーイ!」」
「朝ステータスを見たら【回復魔法LV.1】を習得していたんだ」
「トーマさん、【回復魔法LV.1】まで会得しちゃってたんですか!?」
「『何でも屋』ってギフトは伊達じゃないですね」
「まだ習得したばっかりだからね。それほど誉める事では……」
「いやいやいやいや謙遜し過ぎですって!」
「適正は人それぞれとは言え、凄すぎ……」
実を言うと、朝起きてふと自分のステータスを確認して見ると<ジョブスキル>である【回復魔法LV.1】を習得していた。
剣術についてはセリカと空いた時間に特訓しており少しずつ剣を扱えるようになっていったが、恐らく鍛錬やモンスター討伐による経験値を重ねたから習得していたのだろう。
【回復魔法LV.1】については自分でもビックリだったが、傷を治す手段はあるに越したことはないからよしとしている。
それを聞いたセリカとミレイユは驚きと称賛の表情を見せており、俺の事をべた褒めだ。
そうして『ダカル山』を降りていき、街へと帰ってギルドにクエスト達成の報告をした。
報酬をもらい、魔石の換金も済ませた結果は金貨30枚、占めて30万エドルだ。
「トーマさん、おめでとうございます!条件達成により、トーマさんの冒険者ランクはDランクに昇進となりました」
「ほ、本当ですか?」
「はい、おめでとうございます!更新の手続きもさせていただきます」
「ありがとうございます!」
「やりましたね!トーマさん!」
「これで私達と同じランクになれましたね!」
「あぁ!」
俺の冒険者ランクがEからDに上がった事を通達された。
俺達は大喜びした後に、Dランクの冒険者である事を示す黒灰色のプレートを渡された。
これでセリカとミレイユと同じランクになれて、また一つ自分の成長を心から感じ取る事ができた。
周囲にいた冒険者達も俺のランクアップを喜ばれ、「期待してるから頑張ってくれよ!」などの激励の言葉をたくさんもらった。
そして————————
「「「カンパーイ!」」」
俺達は今日の喜びを噛み締めて、定番のギルド飯を3人で堪能した。
俺の冒険者ランクがアップしたお祝いを兼ねてだ。
他の冒険者も今日は良い日だと言わんばかりに大賑わいを見せており、活気が溢れていた。
「あー旨いな!」
「冒険の後のエールは大好きだけど、今日は何かいつもの数倍美味しい気がしますー!」
「そりゃ、トーマさんの冒険者ランクがDまで上がったんですから!」
「それもそっか!」
「「「アハハハハ!」」」
セリカとミレイユは凄く盛り上がっていた。
俺が二人と同じDランクに立ったのが相当嬉しいからか、喜びも絶賛爆発中だ。
何にしても、めでたい事に変わりない。
セリカから聞いていたが、「Dランク冒険者になってからが本当の勝負」と言われており、最近受けたDランククエストではレア度Dのモンスターを狩る機会は結構あったものの、やはりレア度Eに相当するモンスターよりもパワーやスピードに優れているもしくは特殊な能力を見せるモンスターを前にするようになった。
セリカやミレイユはDランクになって月日は経っているものの、俺は今日なったばかり。
見えてきてこそいるが、まだまだ背中を追う身ではある。それでも、成長を続けていきたいと気持ちを新たにする俺だった。
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